『日々の映像』

2009年12月12日(土) 突然出てきた漢方薬保険外しの動き



漢方薬保険外し 医療現場の声くみ上げよ
                    新潟日報 社説

 政府の行政刷新会議が事業仕分けで、漢方薬を公的医療保険の対象から外す方針を打ち出しだした。医療のことは、長い年月かけて出来上がったことで、
事業仕分けで論議する問題でないと思う。民主党の勇み足と言わねばならない。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――
漢方薬保険外し 医療現場の声くみ上げよ
                    新潟日報 社説
 医療現場での漢方薬の扱いに注目が集まっている。政府の行政刷新会議が事業仕分けで、漢方薬を公的医療保険の対象から外す方針を打ち出したためだ。
 漢方薬は体全体の調子を整えることで、病状を改善する点に特徴がある。医師の7割余が使用しているといわれ、とりわけ更年期障害など婦人科で多く処方されている。
 これまで1〜3割だった患者の負担は、漢方薬の保険適用が外れれば全額になる。経済的な理由から、漢方薬を使った治療を断念する患者が出てくるかもしれない。
 日本東洋医学会など関係学会は強く反発し、反対署名簿を提出した。本県でも署名活動が行われた。
 医師が処方する漢方薬は市販品と異なる。西洋薬と併用して、がんや認知症などにも使われている。西洋薬では代替の効かないものもあるという。
 日本東洋医学会の役員でもある須永隆夫・木戸クリニック所長(新潟市)は「漢方薬は医師が患者の状態に応じて処方し、効果を挙げている。医学部や医科大でも漢方を学ぶようになったのに、時代に逆行する」と語る。
 急速な高齢化の進行で、医療費は膨れ上がる一方だ。財源には限りがある。薬の保険適用にメリハリをつけることは確かに必要だろう。
 だが、問題は国民の健康に関することだ。医療現場で漢方薬が使いにくくなることで治療の質が下がり、結果的に患者が不利益を被ることになってはならない。
 財務省は仕分け作業で、保険適用から外す対象として漢方薬やうがい薬、湿布薬などを一緒に提示した。「薬局で市販していて、医師が処方する根拠に乏しい」がその理由だ。
 短い時間で一気に行う仕分け作業でこれらの薬は同列に扱われ、中身や適正な価格について満足な議論は行われないまま「見直し」の結論が出た。保険外しの「範囲は十分議論する」とされたが、性急過ぎた感がある。
 漢方薬といっても、効能は多様だ。軽い風邪に対応するものから、がん手術の予後をケアするものまである。
 長妻昭厚生労働相は「漢方薬は医師が処方しており、いきなり保険から外すのは疑問」「全く同じものを市販で入手するのは難しい」などと、仕分け結果の拒否を示唆した。
 医師が漢方薬の効果や量を判断して使うことは、医療現場で定着している。その実情を踏まえた発言だろう。
 中でも高齢者は、慢性的な症状や複数の病気に悩む傾向がある。漢方薬が頼りの人も多いだろう。患者の立場に立って現場の声を吸い上げ、予算折衝に反映させてほしい。そうでなければ医療への不安は深まるばかりだ。
新潟日報2009年12月13日

 < 過去  INDEX  未来 >


石田ふたみ