『日々の映像』

2009年12月02日(水) どうなる為替:米国はドル安を容認



1、社説:円高ドル安―市場介入をためらうな
                        2009年11月29日 朝日
2、社説:ドル安・円高 協調で通貨危機回避を
                     2009年11月28日  毎日
3、社説:円急騰 ドル動揺は放置できない
                      2009年11月27日 新潟日報

ドル安円高が続いている。
米経済の不安定さもドル安の一つの要因である。7〜9月期のGDPは、5四半期ぶりにプラス成長に転じたが、雇用情勢をみると10月の失業率は10%台に達した。さらに金融機関の破綻(はたん)も増えている。今年に入って破綻した米銀は120社を超えた。米金融機関破綻のピークは来年であるという。 
http://ameblo.jp/syogai1/entry-10396865976.html
 
米政府は今まで強いドルが望ましいとしているが、ドル安を容認する姿勢も見せている。以前は過剰消費が当たり前で輸入増はあまり気にしていなかった。しかし、今は違う。「輸出を重視する」(オバマ大統領)としており、それにはドル安の方が都合いいのだ。

11月29日デフレ不況にあえぐ日本経済に円急騰の衝撃が走った。一時、1ドル=84円台まで円が買われ、95年7月以来、14年ぶりの水準となった。為替市場に米国が静観するようならドル売りにますます拍車がかかる気配である。ドル安は米個の輸出産業にプラスの面もあるが、輸入品が大幅な値上げになるので、米国市民の生活にとっては物価高という付けが回るのである。


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1、社説:円高ドル安―市場介入をためらうな
                        2009年11月29日 朝日
 デフレ不況にあえぐ日本経済に円急騰の衝撃が走った。きのうの外国為替市場で一時、1ドル=84円台まで円が買われ、95年7月以来、14年4カ月ぶりの水準となった。
 国内の輸出企業が想定する水準や、経済の実態から見れば急激すぎる。放置すれば、景気が「二番底」に陥ったり、デフレが深刻化したりする恐れが強い。政府・日銀は米国などと連携し、断固たる態度で市場の投機的な動きを封じるべきだ。
 今回の円高は、世界的なドル急落の一面である。巨額の財政出動と超金融緩和で再生を目指す米経済だが、景気が再び悪化する懸念がある。超低金利が長引くと見込まれるため、対米投資の魅力は薄れ、世界のマネーのドル離れはやみそうにない。
 そんな中、連邦準備制度理事会(FRB)が公開した金融政策決定の会議の議事録に、当局がドル安を容認していると読めるくだりが見つかり、投機的な動きに火がついた。
 さらに、中東のドバイで不動産バブル崩壊の懸念が再燃し、関係の深い欧州の金融機関の信用に影が差した。マネーはユーロからも逃げ口を求め、円相場の急騰につながった。
 円買いの思惑と投機の連鎖が起きている理由は、日本側にもある。鳩山政権が「内需主導の景気回復」という路線にこだわるあまり、「輸出支援と受け取られかねない為替介入を忌避しているのではないか」といった見方が市場関係者の間に広くある。
 「日本政府は市場に介入しない」という推測が投機を勢いづけ、異常な円高を助長した面は否定できない。この空気を変えなければならない。
 G20で合意した世界経済の回復シナリオは、為替相場の安定を暗黙の前提としていた。今、それが大きく揺らいでいる。米国はガイトナー財務長官が「強いドルは重要」と繰り返すが、本音では米国からの輸出を増やすドル安を歓迎している、と見透かされている。人民元の対ドル相場を固定している中国も同様だ。
 一方、欧州連合(EU)はこの状況に不安をつのらせ、人民元切り上げへの圧力を強めつつある。
 80年前の世界大恐慌では、各国の通貨切り下げ競争が世界経済の不毛な疲弊を招いた。その教訓を生かし、各国は財政金融政策の協調で一定の成果をあげてきたが、ここは為替相場、とくにドルの安定が重要だという強いメッセージを共同で出すべきだ。
 米国はドル急落を放置してはならないし、日米とも為替市場への介入をためらうべきではない。
 円の短期市場金利がドルより高いことも、円買いを助長している。日銀はデフレ下の円急騰という事態を直視し、金融緩和を徹底する必要がある。
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2、社説:ドル安・円高 協調で通貨危機回避を
                    2009年11月28日  毎日
 外国為替市場で円高の勢いが強まっている。この3日間で、円は米ドルに対し一時、3円以上も値上がりした。急激な円高に見えるが、ドル売りが進行した結果で、日本国内というより、米国など海外に起因する不安が背景にある。日本単独で流れを変えることは現実には難しそうだ。ドルの暴落など新たな金融危機に火が付くようなことのないよう、日、米、欧州、そして中国を含む主要国の協調が求められる。
 このところのドル下落を招いた最大の要因は、米国の超低金利だ。連邦準備制度理事会(FRB)は、事実上のゼロ金利を長期間、続ける姿勢を明確にした。ドルを安いコストで借り、金利の高い国の通貨や資産に投資する取引が活発になった。これがドル安をもたらし、ドル安はさらにこうした取引を促進した。
 米政府やFRBがドル安を容認していると見られていることも、ドル売りへの安心感につながっている。
 円以外のアジア通貨や豪ドルなどの上昇が目立っていたのだが、ここへきて中東発金融不安が表面化した。アラブ首長国連邦のドバイ首長国が持つ政府系投資会社が巨額な借金の返済不能に陥る可能性が露呈したのである。市場では、リスクの高い資産を手放す動きが一気に強まり、金や相対的に安全と見なされた円が集中して買われた。
 円高は必ずしも悪いことばかりではない。輸入品の値下がりによる恩恵が受けられるし、海外旅行も割安になる。外国の企業も買収しやすくなる。しかし、急激な変動やそれによる市場の混乱は、世界経済を再び危機に突き落としかねない。
 そこで、当局による為替市場への介入が注目されているわけだが、日本の単独介入では、一時的な抑制効果しか期待できそうにない。米国が静観するようならドル売りにますます拍車がかかる恐れもある。
 米国はドル安を通じて輸出を増やし、雇用創出につなげたいのだろう。だが、大型景気対策で膨らんだ借金は中国や日本など外国勢が支えている。大幅なドル安により保有する米国債の値打ちが急減する恐れが出てくれば、貸手国と米国との間に政治的緊張が高まる。
 ドバイ問題は情報不足もあり先を見通しにくい。一方、米国では、ドルに対して人民元相場を事実上固定している中国への批判が高まる一方だ。市場が神経質になっているだけに、主要国の政府は発言や対策に細心の注意を払わねばならない。自国さえよければ、の発想で政策対応を進めると、市場を思わぬ大混乱に陥れかねない。
 そうなればどの国も打撃を受けよう。主要国の緊密な情報交換や連携が今まで以上に求められている。
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3、社説:円急騰 ドル動揺は放置できない
                     2009年11月27日 新潟日報
 東京外国為替市場で26日、円が急伸し、一時1ドル=86円台に突入した。
 ドル安円高の地合いが続く中、当面の壁と見られていた87円を一気に突破したのは、米国の超低金利政策が続くと市場が読み取ったからだ。
 85円まで上昇するとの観測が流れている。14年ぶりの水準と言われれば、1995年に付けた79円台の「悪夢」を思い起こす輸出関連企業も少なくないはずだ。回復軌道に乗りかけた日本経済への打撃は大きい。
 藤井裕久財務相は、ドル安が原因であり、円に問題はないとの見方を示して当面事態を注視するとした。
 ドルが各国通貨に対して売られたのが、今回の円急騰の原因には違いない。だが、想定外といえるような円高に対しても静観する姿勢が、為替介入に対する市場の警戒感を弱め、高騰に拍車を掛けた側面が否めない。
 日本はデフレ宣言をしたばかりだ。円高で輸入価格が下落すれば、デフレを加速させ、脱却を図る対策を困難にする。鳩山政権は内需主導型経済の転換を説く。その重要性は分かるが、輸出で稼ぐ日本経済の体質はすぐには変わらないと見定めるべきだ。
 現在の円高水準は輸出関連企業の収益を圧迫し、その基礎体力を奪いかねない深刻な状況だとの認識が要る。
 財政が悪化する日本は、円高よりも国債価格の下落による長期金利上昇を警戒している。そんな見方が市場に広がっているとき、為替安定に向けて力強いメッセージを発しない。「鳩山不況」が語られるゆえんだ。
 「円高デフレ」という最悪の事態は避けねばならない。世界経済全体の立ち直りを確実にするためにも、日米が連携して対処するときだ。
 問題なのは、肝心の米国がドル安を進める動きを見せていることだろう。超低金利政策で国内の景気を刺激する。貿易不均衡の是正は国際的合意であり、ドル安はその流れに沿う。
 そんな戦略からだろうが、ドル安にはもっと深刻な背景がある。米国は経常赤字に加えて経済危機対策などで財政赤字も膨れ上がる。借金漬けによるインフレ懸念と同時に基軸通貨ドルの信認が揺らいでいるのだ。
 金価格が最高値を更新している。綱渡りのような危ういドルから離れる動きだ。宝飾品加工などの実需を上回る投資資金が金市場に流れ込んでいる。
 どんどん冷めていくドルとは対照的に、どこまで上がり続けるのか見通せないほど過熱している。米国債を売って金に換える動きも出てきた。
 金や商品市場にマネーが逃げ込んでいる。健全な状態ではない。不安定さを増す国際通貨体制への警鐘ととらえ、各国が連携を密にするときだ。

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石田ふたみ