『日々の映像』

2009年10月13日(火) ノーベル平和賞―オバマ大統領に


1、ノーベル平和賞:オバマ氏「深く謙虚に受け止め」と声明
                    2009年10月10日ロイター
2、ノーベル平和賞受賞で「外交複雑に」 米紙が指摘
                 2009年10月11日  日経
3、社説:ノーベル平和賞―オバマ変革への深い共感
                    2009年10月10日 朝日
4、社説1 「核兵器なき世界」への行動促した平和賞(10/10)
                  2009年10月10日  日経

 ノーベル賞委員会は今年の平和賞に米国のバラク・オバマ大統領を選んだ。就任から1年もたたない政治指導者に贈られるのは極めて異例だと思う。授賞理由のなかで委員会は、オバマ氏が「大統領として国際政治において新たな機運を作り出した」と、核廃絶構想をとくに評価している。

  ノーベル平和賞受賞で米外交が複雑になると、この受賞を否定的に捉える見方もあるが、核の廃絶に一歩踏み出したことだけは確かである。オバマ大統領によって、国際政治が変革されることを期待したい。


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1、ノーベル平和賞:オバマ氏「深く謙虚に受け止め」と声明
                    2009年10月10日ロイター
 【ワシントン小松健一】オバマ米大統領は9日午前11時(日本時間10日午前0時)すぎ、ホワイトハウスで声明を発表し、ノーベル平和賞受賞が決まったことについて「驚きであり、深く謙虚に受け止めている」と語った。大統領はそのうえで「受賞は私の業績への評価とは受け止めていない」と述べ、「世界の人々の希望」が米国のリーダーシップに寄せる期待を確認したものだと語った。
 オバマ大統領は21世紀の諸課題に取り組むため、国際社会が責任を共有する「新たな関与の時代」の必要性を強調した。特に核兵器が拡散し、人々を核の大量殺りくの危険にさらすような世界を「もはや耐えられない」と指摘。
 そのために「核兵器のない世界」を目指し、「確かなステップ」へと歩み始めたと述べた。そして「すべての国は平和的な原子力を追求する権利はあるが、平和目的であることを明確に示す責任がある」と語り、イランの核開発問題を含めて核不拡散体制の強化を訴えた。
 さらに気候変動対策、中東和平の実現への決意を示したうえで、「核兵器廃絶などの課題は私の生涯でも実現できないかもしれない。しかし、一人や一国だけで解決できないことを認識するかぎり、解決はできる」と呼びかけた。
 ◇オバマ米大統領の声明要旨
 【北米総局】オバマ米大統領の声明要旨は次の通り。
 ノーベル賞委員会の決定に驚き、深く謙虚な気持ちで受けとめている。これは私自身が成し遂げたこととは思っていない。すべての国の人々の願望を代表して米国の指導力が肯定されたものとして受けるのだ。ノーベル賞の歴史を見ると、受賞が特別な業績にだけでなく、大義に弾みをつける手段として用いられたこともある。だから、この受賞を行動を呼び掛けるものとして受け入れる。すべての国に21世紀の共通する挑戦に直面することを求めるものだ。
 我々は核の恐怖の中で生きることはできない。だから私たちは核兵器なき世界を目指す具体的な措置を開始した。すべての国は核利用の意図が平和目的であることを明示しなければならない。
 気候変動がもたらす脅威も容認できない。我々はエネルギーの使い方を変えなければならない。人種や宗教が異なる人々との新たな関係を築かねばならない。イスラエルとパレスチナの人々が平和に生きる権利を認識しなければならない。
 すべての人が教育を受け、疫病や暴力などの恐怖のない、まっとうな生活ができるようにすべきだ。
 すべての問題が私の任期中に解決できるわけではない。だが、一人の人間や一つの国だけで解決できないと分かっていれば、これらの問題は解決できる。この賞はすべての人々が分かち合うべきだ。
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2、ノーベル平和賞受賞で「外交複雑に」 米紙が指摘
                 2009年10月11日  日経
 10日付の米紙ワシントン・ポスト(電子版)はオバマ米大統領のノーベル平和賞受賞について、ブッシュ前政権で傷ついた米国の対外的なイメージを回復することに寄与すると評価する一方、「(米国の)外交政策の遂行を複雑にする可能性がある」と指摘した。
 同紙は平和賞の受賞により、米政府が協議しているアフガニスタンへの増派問題に影響を与えることや、核開発を進めるイランへの抑止力が低下することに懸念を示した。そのうえで、平和賞の受賞は「(オバマ大統領の理念が)何らかの成果をもたらした後がふさわしかった」とした。(10日 22:03)
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3、社説:ノーベル平和賞―オバマ変革への深い共感
                       2009年10月10日 朝日
 核のない世界をめざす。地球温暖化問題に真正面から取り組む。単独行動主義はやめ、国際協調と対話でさまざまな問題にあたる。彼の発した「チェンジ」のメッセージが、それほどまでに世界の人々の心を揺さぶったということだろう。
 ノーベル賞委員会は今年の平和賞に米国のバラク・オバマ大統領を選んだ。就任から1年もたたない政治指導者に贈られるのは極めて異例のこと。授賞理由のなかで委員会は、オバマ氏が「大統領として国際政治において新たな機運を作り出した」と、核廃絶構想をとくに評価した。
 世界が直面する気候変動に果敢に挑むなかで、「建設的な役割を果たしている」とも評した。
 粘り強い交渉で中東和平合意や、北朝鮮の核危機の回避をもたらしたカーター元米大統領に、平和賞が贈られたのは02年だった。地球温暖化問題で国際世論を盛り上げたアル・ゴア元米副大統領には07年に授与した。
 いずれにも、当時のブッシュ政権への批判がこもっていた。
 オバマ大統領への授与は、グローバル化が進み、国際協力なしに対応できない地球規模の問題が深刻化する世界での、米国の新たな指導力に期待を示したものと言えるだろう。
 確かに、オバマ大統領の登場で国際社会の様相は大きく変わった。
 9月には国連安全保障理事会で議長をつとめ、「核のない世界」を目指す決議を採択する立役者となった。米ロ間では、戦略核兵器削減に関する新条約が年内に締結される見込みだ。核実験した北朝鮮、核開発疑惑のあるイランとの対話による打開もさぐっている。地球温暖化では国連の枠組みのなかで対応する姿勢を強調してきた。
 難題ばかりだ。どこまで成果に結びつくかは未知数な部分が大きい。アフガニスタン戦争も出口がなかなか見えない。ノーベル平和賞を受賞したからと言って、国際社会の複雑な利害対立が解けるわけでもない。
 だが、それも承知で委員会は、オバマ流の国際政治こそ、初の授賞から108年の間ずっと後押ししようとしてきたものだ、とたたえている。
 むろんオバマ大統領が無謬(むびゅう)であるはずもない。それでも、希代の指導者による挑戦を頓挫させることは、世界の公益に大きなマイナスとなる。
 オバマ大統領は来月12日に日本を訪れ、鳩山首相と会談する。日米同盟は今や、日本や極東の安全保障だけでなく、地球規模問題への対応で力を合わせていく同盟である。
 とくに、核廃絶に向けた戦略は日米の緊密な協力が欠かせない。オバマ大統領という「世界の資産」を最大限生かしていくためにも、首脳会談を大事にしたい。
ノーベル平和賞:米大統領、賞金は寄付
ノーベル平和賞:オバマ氏受賞 広島、長崎から歓迎の声
ノーベル平和賞:オバマ氏「深く謙虚に受け止め」と声明
ノーベル平和賞:ロシア オバマ氏に「具体的行動を」注文
余録:オバマ大統領の平和賞



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社説1 「核兵器なき世界」への行動促した平和賞(10/10)
                  2009年10月10日  日経
 今年のノーベル平和賞に、オバマ米大統領が決まった。「核兵器なき世界」の実現を唱え、世界の将来に希望を与えたのが受賞理由だ。ノルウェーのノーベル賞委員会は、国連の役割を尊重した国際協調、対話重視の紛争解決、地球温暖化問題での建設的な役割なども重視した。

 大統領は今回の受賞を「行動への要求」と受け止めた。米国とオバマ氏自身の今後の貢献への期待を込めた平和賞である。これを機に、核軍縮をはじめ国際社会の懸案解決に、一段と指導力を発揮してほしい。

 オバマ大統領は、単独行動の目立ったブッシュ前政権下では考えられなかった新機軸を打ち出した。特に「核兵器なき世界」を唱えた4月のプラハ演説は、国際社会に新風を吹き込んだ。「核兵器を使用した唯一の核保有国として、米国には行動する道義的責任がある」。率直な発言は、唯一の被爆国として核廃絶を目指す日本でも共感を呼んだ。

 先月には、核不拡散・核軍縮に関する国連安全保障理事会の首脳級会合を主宰し、「核兵器なき世界」を目指す決議を採択させた。ロシアとは7月の首脳会談で、12月に失効する第1次戦略兵器削減条約(START1)で定めた戦略核弾頭の保有上限を約3分の1に減らす、核軍縮条約の年内締結で合意した。

 真価を問われるのはこれからだ。北朝鮮やイランの核開発など、実際の核拡散は強まっている。こうした現実の脅威をどう抑えるかは、日本にとっても切実な課題である。

 世界的な核管理体制には既存の核保有国に有利な面もある。米議会はいまだ包括的核実験禁止条約(CTBT)を批准していない。ロシアや中国とともに、米国が率先して核軍縮の実を上げる必要がある。

 地球環境問題では、中国と並ぶ温暖化ガス排出国である米国の対応にはまだまだ課題が残る。オバマ氏が唱える温暖化ガス削減案は、鳩山由紀夫首相の提案に比べてなお小幅である。医療改革を巡る議会との対立で、地球温暖化対策法案が年内に上院を通過する公算は極めて小さい。内向きになっている米議会をどう説得するかが、大きな課題である。

 オバマ氏が外交の柱に掲げ米軍を増派したアフガニスタンも安定化にはほど遠い。オバマ政権が発足してからまだ1年に満たない。今回の受賞は多くの宿題を抱えたオバマ氏が、真の実績を上げるために背中を押したものと受け止めるべきだ。

 大統領は11月に来日する。「核なき世界」を日米主導で実現するためにも広島や長崎を訪ねてほしい。












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石田ふたみ