『日々の映像』

2009年07月23日(木) 政権選択の選挙


報 道

1、衆院解散、海外メディアも詳報 「歴史的な政権交代の可能性」
                       2009年7月22日 日経
2、社説:衆院解散、総選挙へ―大転換期を託す政権選択
                      2009年7月22日  朝日
3、社説:衆院解散 総選挙へ=政権交代が最大の焦点だ
                      2009年7月22日  毎日
4、社説 政権選択選挙の名に恥じぬ政策論争を
                      2009年7月22日  日経

小泉純一郎首相(当時)が郵政民営化を争点にした2005年9月の前回総選挙からほぼ4年ぶりの選挙である。今回の選挙は、日本の将来を切り開く役割を、自民、公明の連立政権に今後も託すのか、民主党中心の政権に代えるのかを決める重要な「政権選択」の選挙となる。各党は選択に堪える説得力のあるマニフェスト(政権公約)を示し、日本の将来像を競う活発な論戦を展開してもらいたい。

この4年間で暮らしは良くなっただろうか。多くの人が「ノー」と答えるだろう。年金や医療など社会保障制度の深刻なほころびが明らかになり、「構造改革」の下で格差が広がり、貧困や自殺者増が社会問題化している。米国発の金融危機は日本経済を直撃し、国内総生産(GDP)は戦後最悪の減少幅を記録、地方は暮らしも経済も「疲弊」している。

報道1の通り総選挙のニュースは海外でも反響が大きく、主要メディアが詳しく取り上げている。各国メディアは自民党や麻生太郎首相の支持率が低下していた背景を伝え、「総選挙は歴史的な政権交代をもたらす可能性がある」(ロイター通信)などと解説している。自民党はこの流れを食い止めることは至難でないか。

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1、衆院解散、海外メディアも詳報 「歴史的な政権交代の可能性」
                     2009年7月22日 日経
 日本の衆院解散・総選挙のニュースは海外でも反響が大きく、主要メディアが詳しく取り上げた。各国メディアは自民党や麻生太郎首相の支持率が低下していた背景を伝え、「総選挙は歴史的な政権交代をもたらす可能性がある」(ロイター通信)などと解説した。
 米紙ウォールストリート・ジャーナル(電子版)は1990年代以降の自民党政権が「高齢化や国民の生活水準の維持など根源的な問題を解決できなかった」と分析。民主党については「米国との対等な外交関係を提唱している」とした。
 中国国営の新華社は「麻生内閣の支持率が低迷し、自民党の支持率も民主党に大きく引き離され、自民党内は『麻生降ろし』の動きで混乱した」と報じた。そ
2、社説:衆院解散、総選挙へ―大転換期を託す政権選択
                      2009年7月22日  朝日
 政権交代の予兆が強まるなかで、歴史的な総選挙の号砲が鳴った。
 戦後の日本政治を率いてきた自民党政治になお期待を寄せるのか、それとも民主党に国を託すのか。そして、どんな政権であれ、失敗があればいつでも取り換え可能な新しい政治の時代を開くのか。有権者が待ちわびた選択の日がやってくる。
 内も外も大転換期である。危機を乗りこえ、人々に安心と自信を取り戻すために政治と政府を鍛え直す。その足場づくり、つまりはこの国の統治の立て直しを誰に託すか。これが焦点だ。
 ■失われた20年を超えて
 それにしても、自民党に対する民意の厳しさは尋常ではない。解散までの混迷が映し出したのは、それにうろたえるばかりの政権党の姿だった。
 小泉首相の郵政選挙から4年。
 衆参のねじれで思うにまかせぬ国会。2代続いての政権放り出し。麻生首相の迷走と政策の説得力の乏しさ。だが何よりも、明日の暮らしと国の未来への人々の不安や危機感を受け止められない自民党政治への失望だろう。
 かつて日本の強みだった「一億総中流」とは似ても似つかぬ格差と貧困、雇用不安、疲弊する地方。そこに世界的な大不況がのしかかり、社会はきしみを深めている。
 一番の元凶は小泉改革だと、自民党内でも批判が熱い。だが振り返れば、20年前の冷戦終結とバブル後の「失われた時代」の到来はすでに、戦後の右肩あがりの時代を率いた自民党政治の終わりを告げていたのではなかったか。「自民党を壊す」ことで自民党の延命を図った劇薬も、それなりの効用はあったが、賞味期限は短かった。
 官庁縦割りの政策や予算。政官業のなれ合い。行政のムダ。霞が関への中央集権。温存された矛盾を何とかしなければ経済危機への対応も難しい。それを国民はひしひしと感じている。
 日本が寄り添ってきた米国の一極支配はもうない。多極化した世界で、G20や米中のG2が重みを増す。中国の国内総生産は今年中に日本を追い越しそうだ。「世界第2位の経済大国」という看板は、巨大な隣国に移る。
 ■堂々と政権公約選挙を
 日米同盟が重要というのは結構だが、それでは世界の経済秩序、アジアの平和と繁栄、地球規模の低炭素社会化に日本はどう取り組んでいくのか、日本自身の構想と意思を示してほしい。それが多国間外交を掲げる米オバマ政権の期待でもあろう。
 現実的な国益判断に立って、国際協調の外交を進めるのは、そもそも日本の有権者が望むところだ。それができなければ、外交への国民の信頼は失われ、日本の国際的な存在感もますます薄れていく。
 民意が今の流れのままなら、民主党政権誕生の可能性は高いだろう。確かに、政権を代えてみたいという期待は強い。だが懸念や不安もある。
 民主党の言う「脱官僚」の政策決定の仕組みができれば、永田町や霞が関は大変わりだろう。経済界や民間にも影響が及ぶ。混乱は最小限に抑えられるのか。この変革の先にどんな民主主義の姿を展望するのか。ばらまき政策に財源はあるのか。外交政策もあいまいなところが多すぎる。
 一方の自民党が踏みとどまるには、みずからの長い政権運営の歩みを総括し、生まれ変わった「政権担当能力」を示すことだ。党内の派閥間で疑似政権交代を続けてきた時代はその必要を感じなかったろうが、これからはそうはいかない。
 マニフェストづくりを急ぐ各政党に強く訴えたい。政権を選ぶ材料として、取り組む政策の優先順位を明確にしてもらいたい。
 なすべきことは多く、資源と時間は限られている。公約の説得力を有権者の前で競う「マニフェスト選挙」にしなければならない。それを政権選択選挙の当たり前の前提にしたい。
 ■民主主義の底力を示せ
 選挙後の勢力図次第で、政局は予断を許さない。自民党内からは政党再編論が早くも聞こえてくる。自民も民主も基本的に差はない、危機には国を挙げて、という理屈だ。
 しかし、政権交代しやすい小選挙制度を導入して15年。民意が政権公約に基づく選択でそれを機能させようというところまできたのに、いきなりその選択を無にしようという発想はいただけない。複雑な大変化の時代だからこそ、選択の結果を大事にしたいというのが有権者の思いではなかろうか。
 本紙の世論調査では、政権を与えた党の実績が期待はずれなら次は他の政党に、という人が6割にのぼる。政党間の不断の競争と緊張。民意によって与党にも野党にもなる。重要政策で妥協が必要ならば、開かれた国会の場を使うことだ。
 有権者もこの間、多くを学んだ。一時のブームや「選挙の顔」よりも、政権公約の内容、実行の態勢、指導者の資質を堅実に判断することの大事さだ。口に苦くても必要と思えば受け入れる覚悟がいることも。
 この選挙で課題がすべて解決するわけがない。だが、まずは民意の力で「よりましな政治」へかじを切る。日本の民主主義の底力を示す好機だ。

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3、社説:衆院解散 総選挙へ=政権交代が最大の焦点だ
             2009年7月22日  毎日
 衆院が21日解散された。衆院選は8月18日に公示され、同30日に投開票される。民主党を中心とする政権に交代させるのか、それでも今の自民・公明政権が続いた方がいいと考えるのか。有権者の選択が最大の焦点となる。戦後政治の大きな転換点となる選挙戦が事実上始まった。
 「昨秋解散しておけばよかった」と麻生太郎首相は後悔しているはずだ。毎日新聞の世論調査(18、19日)によると麻生内閣の支持率は17%で前月より2ポイント下落。自民党の支持率は18%で36%の民主党に大きく引き離されている。有権者の間には「一度政権を交代させてみたら」というチェンジ志向が確実に広がっていると見ないわけにはいかない。
 ◇結束にほど遠い自民
 衆院本会議に先立ち開かれた自民党の両院議員懇談会で麻生首相は「私の発言や『ぶれた』と言われる言葉が国民に政治への不安や不信を与え、自民党の支持率低下につながったと深く反省している」と語り、記者会見でも自身の「不用意な発言」や自民党の結束の乱れを挙げて国民にも陳謝した。しかし党内は結束とはほど遠い状態で、首相が陳謝しないと収まらないところに今の追い詰められた姿が表れている。
 圧勝した05年の衆院選から4年。なぜ、こんな事態に陥ったのか。
 郵政民営化のみを争点に掲げ、造反者の選挙区には「刺客」候補を送って注目された前回は、報道のあり方を含め確かに問題は多かった。ただ、反対を押しのけて進もうとする当時の小泉純一郎首相に多くの有権者が「政治が変わるのでは」と期待したのは事実だろう。
 ところが政治はさして変わらなかった。小泉氏は格差問題など「小泉改革の影」が表面化する中で改革の後始末をしないまま退陣。続く安倍晋三元首相は郵政造反議員を続々と復党させた。
 迷走はここに始まる。小泉改革路線を進めるのか、転換するのか。自民党は今に至るまできちんと総括してこなかった。そして国民に信を問うことなく次々と首相が交代し、場当たり的な対応をしてきたことが、現在の党内混乱の要因でもある。
 安倍氏は憲法改正路線に軸足を置いた。だが、その間に国民の暮らしに直結する「消えた年金」問題が深刻さを増して、07年7月の参院選で自民党は惨敗。その後、体調不良で突如辞任した。福田康夫前首相も1年で政権を投げ出した。そして、経済危機を理由に解散から逃げてきた麻生首相が今、低支持率にあえいでいる。漢字の誤読もあって「首相の資質」まで問われる有り様だ。
 だが、「人気がありそうだ」と首相を交代させ、その後は選んだ責任を忘れ支えようとしない自民党そのものに多くの国民は「本当に政権担当能力があるのか」と疑問を感じ始めているのではないか。今回の「麻生降ろし」に国民の支持が広がらなかったのはそのためだと思われる。
 ◇民主に問われるもの
 一方の民主党も政権担当能力と鳩山由紀夫代表の首相候補としての資質が当然問われることになる。
 「政治主導」をお題目に終わらせず、強固な官僚組織を変えられるのか。税金の無駄遣いをどこまで削れるか。子ども手当や高速道路無料化、年金制度の抜本改革は実現するのか。消費税率は4年間引き上げないというが、財源の手当てはできるのか。党としての統一感に乏しい安全保障政策はどうするのか。それらの疑問に具体的に応えるのがマニフェストだ。鳩山氏の政治資金問題もさらなる説明が必要となる。
 自民、公明両党はこれまでの実績を強調するだろう。だが、消費税率引き上げに関し、どこまで具体的に書き込むのかなどの課題が残る。自民党には反麻生勢力が独自のマニフェストを作る動きがあるが、これは政権公約とは言わないと重ねて指摘しておく。共産党や社民党、国民新党、新党日本、今後できるかもしれない新党も含め、大切なのはこの国をどんな形にするのかだ。未来に向けたビジョンを示してもらいたい。有権者の目は一段と厳しくなっている。何よりごまかさず、正々堂々と政策論争を戦わせることだ。それがむしろ支持を集める時代なのだ。
 自民党は93〜94年の細川護熙、羽田孜内閣時代に一度野党に転落した。しかし、引き金になったのは自民党の分裂であり、93年7月の衆院選は非自民各党が「細川氏を首相に担ぐ連立政権を目指す」と有権者に公約して選挙を戦ったわけではない。つまり55年体制ができて以降、私たちは衆院選で有権者が投票によって選ぶという形では、政権与党と首相を交代させた経験がないのだ。
 そんな選択に初めてなるのかどうか。異例の長い選挙戦となるが、いずれにしても政治の行く道を決めるのは有権者=主権者だ。こんなにわくわくする選挙はないではないか。
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毎日新聞 2009年7月22日 0時01分

4、社説 政権選択選挙の名に恥じぬ政策論争を
                    2009年7月22日  日経

 衆院が解散され、政府は次期衆院選の日程を「8月18日公示―30日投票」とすることを決めた。今回の衆院選は引き続き自民、公明両党に政権を委ねるのか、それとも民主党を中心とする政権に交代させるのかが最大の焦点となる。

 政権選択選挙の名に恥じぬ政策論争を強く望みたい。二大政党の自民、民主両党は速やかにマニフェスト(政権公約)を公表し、有権者に判断材料を示す責任がある。

独自公約は許されない

 衆院選は小泉自民党が圧勝した2005年9月の郵政選挙以来、ほぼ4年ぶりとなる。9月10日が衆院議員の任期切れになっており、事実上の任期満了選挙といえる。

 この4年の間に小泉純一郎、安倍晋三、福田康夫、麻生太郎の4氏が首相を務めた。衆参ねじれ国会の影響もあって、安倍、福田両氏がともに1年間で政権を投げ出したことが、自民党の統治能力への疑問を強める結果になった。

 昨年9月に「選挙の顔」として党内の圧倒的な支持で選ばれた麻生首相も、自らの発言のぶれや日本郵政社長人事などでの政権運営の迷走が相次ぎ、内閣支持率の大幅な低下を招いた。自民党にとってかつてない逆風の下での選挙戦となる。

 12日の東京都議会議員選挙で大敗を喫した後の自民党の混乱は目をおおうばかりだった。首相は13日に自ら解散する意向を明らかにしたが、反麻生勢力が総裁選を前倒しするために両院議員総会の開催を求めるなど、深刻な党内対立が露呈した。

 首相は21日の記者会見で自らの失言や党内の結束の乱れを陳謝した。そのうえで「景気の回復と安心社会の実現を約束する。総選挙は安心社会実現選挙であり、国民に問うのは政党の責任力だ」と強調した。

 解散されたにもかかわらず、自民党は政権公約の骨格すら示していない。各党は事実上の選挙戦に突入したが、政権公約なしで、自民党候補は一体何を訴えるのだろうか。

 首相は早急に政権公約をまとめなければならない。首相がこだわる将来の消費税率の引き上げを公約に盛り込むことには、党内に異論が残っている。年金や医療制度などの社会保障改革は待ったなしだ。政調各部会の要望を並べたような政権公約では、有権者の支持は得られまい。

 首相に批判的な議員の間では、党とは異なる独自の政権公約を掲げて選挙を戦おうとする動きがある。これは政権公約と党首(首相候補)を比べて政権を選ぶという衆院選の趣旨に反する行為であり、容認することはできない。独自の政権公約を訴えるなら、潔く離党して新党をつくるのが筋である。

 こうした動きが具体化したら、党執行部は公認取り消しなどの断固たる対応を取る必要がある。

 都議選など一連の大型地方選で連勝を続ける民主党は、政権交代に向けて勢いづいている。だが政権交代は手段にすぎない。大事なことは政権交代後に何を実行するかだ。

 民主党が候補者向けに配った主要政策のポイント解説集には、月額2万6000円の子ども手当、高校授業料の無償化、高速道路無料化、ガソリン税などの暫定税率廃止、農業の戸別所得補償制度の創設などの目玉施策が列挙されている。

 これらの新規施策をすべて実施するのに必要な財源は16兆8000億円と見込み、無駄遣いの削減で9兆1000億円、埋蔵金の活用で4兆3000億円ひねり出すなどとしている。

ばらまき懸念ぬぐえず

 しかし無駄遣いの削減などで本当に巨額の財源を生み出せるかは不透明なままだ。選挙目当てのばらまきとなる懸念はぬぐえない。

 民主党は政権公約で財源の裏づけをくわしく説明する必要がある。子ども手当の創設に伴い、所得税の扶養控除や配偶者控除を見直す方針だが、増税などの負担増についても実のある論戦を期待したい。

 民主党政権が実現した場合の大きな不安要素は、外交・安全保障政策だ。インド洋上での海上自衛隊の給油活動については、小沢一郎前代表当時に「憲法違反」と断じて反対した経緯がある。日米関係などに禍根を残す判断だった。

 鳩山由紀夫代表は政権獲得後も即時撤退はしない考えを表明した。現実的な外交路線に修正する試みかどうかを注視したいが、社民党は反発し、波紋が広がっている。北朝鮮の核開発問題など選挙後に直面する外交課題は山積している。安定した政権を築くには、説得力のある外交・安保政策を示すことが不可欠だ。

 民主党政権ができた場合、共産党は一致できる政策には是々非々の立場で協力する「建設的野党」を目指す方針を打ち出した。与党の公明党や、民主党の連立相手に想定される社民、国民新両党も党の姿勢を明確にして選挙に臨んでもらいたい。

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石田ふたみ