『日々の映像』

2009年04月14日(火) 事業整理の実態

資料
1、「倒産相談」にぎわす2業種とは
                      2009年4月12日  日経
コンサルタントの内藤明亜さん

 過日経営に関する相談を受けた。時代の流れは激しく事業に縮小・廃業・倒産を意識しなければならない人が多いのが現実だ。我々は社会のことを知っているようで知らないことが多い。新聞に1年で1万数千件の負債総額1000万円以上の倒産が報道される。これは主に民間のリサーチセンターの収録情報である。

 しかし、資料の通り経営の行き詰まりは次の形で現れている。
1、倒産
2、廃業・・・統計に出ていない
3、夜逃げ・・・統計に出ていない。「放置逃亡」の件数ははるかに多く、世の中にはその数を把握している統計・機関はどこにもない。

資料より以下を引用したい。
「私が倒産した際は手続きに300万円かかりました。法人、個人(私)両方の破産のために地裁に支払った予納金の額です。これ以外に弁護士費用が必要になります。一般的には小規模な場合は100万〜200万円程度で、私の場合は150万円ほどかかりました。でも、今は簡略な手続きを選べば、一式全部でも20万円程度で済みます。かつてはこの300万円が工面できず、心ならずも処理をあきらめてしまう経営者が少なくなかったのですが、今は立ち止まって処理に踏み切りやすくなったと言えるでしょう。」

 知人に長年裁判所の書記官をした人がいる。法的問題の種類によってどこに行けばよいかアドバイスしてくれる。私の知る限りでは自己破産も弁護士に依頼しなくてもできるのである
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1、「倒産相談」にぎわす2業種とは
                       2009年4月12日  日経
コンサルタントの内藤明亜さん
 倒産の恐怖が現実味を増している。2008年は上場企業倒産が戦後最多の45件となった。自分の勤め先はもちろん、取引先、家族の勤務先などにも起こりうる事態に不安を感じざるを得ない中、『倒産するとどうなるか』(明日香出版社刊)を書いた経営危機コンサルタントの内藤明亜さんは「最近相談が急増している業種が2つある」と明かす。
 
<<経営危機コンサルタントの内藤明亜さん>> 
倒産を取り巻く事情はこの10年間ぐらいいで様変わりしつつあります。私が経営していた会社が倒産したのは1994年秋の事。当時、私が経験した倒産手続きより、今はずっと手際よく会社を畳めるようになりました。法律や行政の仕組みが整ってきたことが背景にありますが、そうなったのは倒産件数が増えたからでもあります。

 年間の倒産件数は各種統計で発表されていますが、新聞に載るこの数字だけでは倒産増加の実態は見えにくいところです。なぜなら、倒産扱いされない「廃業」の件数がこの数字には含まれていないからです。しかも、決して好ましくないことではあるが、穏便な整理に至らず、やむなく債権者の前から姿を消す「放置逃亡」の件数ははるかに多く、世の中にはその数を把握している統計・機関はどこにもありません。

 私が倒産した際は手続きに300万円かかりました。法人、個人(私)両方の破産のために地裁に支払った予納金の額です。これ以外に弁護士費用が必要になります。一般的には小規模な場合は100万〜200万円程度で、私の場合は150万円ほどかかりました。

 でも、今は簡略な手続きを選べば、一式全部でも20万円程度で済みます。かつてはこの300万円が工面できず、心ならずも処理をあきらめてしまう経営者が少なくなかったのですが、今は立ち止まって処理に踏み切りやすくなったと言えるでしょう。

 ただ、こういう変化があまり広く知られていないのはもったいない事です。しかも、こういう手続きの改善が起きたのは、先に述べた通り、件数が増加して裁判所側が対応を見直した結果です。つまり、東京地裁管轄の東京23区のような多発地域ではこうした恩恵にあずかれますが、倒産処理件数が年に数件という地域では、裁判所のスタッフ・体制の問題もあって、必ずしも東京地裁と同じというわけにはいきません。東京地裁のノウハウが全国津々浦々に行き渡っているわけでもありません。このあたりは地裁の裁量に任されています。結果的に倒産に関しては地域間で、受けられる司法サービスに格差が生じているのが現実です。

 破産処理が終わるまでの期間もぐっと短縮されています。私は倒産後、3年半も破産者でした。でも、今では3カ月〜半年程度で破産者扱いは終わるのが普通です。その分、再起しやすくなっているとも言えるでしょう。

 自らの倒産体験を踏まえ、「経営危機コンサルタント」として大勢の経営者の相談を受け続けています。これまでに約650人の経営者から相談を受けました。15年近い経験から言えば、中小・零細企業の経営者の悩みは、昨今の景気後退や円高などのせいもあって、ますます深刻になっています。しかも、構造的な経営環境の変化があり、これまでの常識が通じにくくなっているのです。

 例えば、販売業。このところ相談件数が急増している業種です。本の中では音楽CDショップを一例として取り上げました。ダウンロード販売が広がり、ショップそのものの役割が急激に縮んでいったせいで、町中の中小音楽CDショップは生き残りが難しくなっています。

 私はジャズと落語が好きで、古いレコードを集めています。最近はもっぱら買い物はインターネット。家に眠っていたお宝を、個人がオークションで売り出すこともあり、時折は掘り出し物に巡り会えます。アマゾンも新品ばかりではないので、昔の本も探しやすくなりました。在庫量が勝負のレコードや本といったロングテール商品の場合、中小店舗はネット流通には対抗しにくいでしょう。

 ただ、この構造的変化は音楽CDショップに限った話ではなく、多くの販売業に当てはまる問題です。インターネットショッピングが当たり前になり、流通コストを限界まで切り詰めるニーズが生産者と消費者の両方から求められている今、商品を仕入れて、販売マージンを上乗せし、店頭で売るという「販売業」の業態自体が存在意義を問い直されていると言えるでしょう。店頭で何らかの付加価値を加えて、消費者に手渡すという役割を果たさず、単純に仕入れて売るだけの店舗は、どんな商品を取り扱うにしろ、これまで通りに生き残っていくのは難しい地合となりつつあります。

「倒産相談」にぎわす2業種とは
 英語の「shop」と「store」は意味が微妙に異なり、「shop」は店で何らかの手を加えてくれる店で、「store」は商品をそのまま売っている店だと聞いたことがあります。同じような商品があちこちで手に入る今、その店ならではの付加価値がプラスできない店は、消費者を呼び込むのが難しくなっています。ただ、そんな付加価値は簡単に生み出せないので、販売業はどこも苦戦を強いられているのでしょう。

 広告代理店、広告制作業も最近、相談が多いもう1つの業種です。テレビや雑誌といったメディアが広告媒体として過渡期を迎え、それらに連なる広告関連業種は業界丸ごと大きな変化にさらされています。コストダウンを迫られても、もうのりしろがないので、仕事を続けていくのかどうかを判断せざるを得ない状況に置かれているのです。
 実は私がかつて経営していた会社もこの業種でした。印刷事業もあわせて営んでいたのですが、かつての仕事仲間は多くが厳しい経営環境に直面しているようです。経営者の集まりに外国車がずらりと並ぶような羽振りの良い時期もあったのですが、今では過去の話となりました。テレビが飛ばし見で媒体価値を損ない、雑誌は休刊が相次ぎ、チラシ需要も落ち込む――。こんな状況を予想できた経営者はほとんどいなかったでしょう。
 
ただ、そもそも経営者としてしかるべき能力を備えた社長が少なすぎるというのが、日本の中小零細企業の構造的問題として横たわっています。仕事を続けていたら、人が集まってきて、成り行きで社長になってしまった人が大勢いるのです。こういう社長には人情に厚い人が結構多いのですが、経営者として冷静に判断を下していくには、ドライに選択できるタイプの方が向いていると思います。でも、頼られて引き受けた社長には、従業員の生活を思って5人の社員の1人を解雇できないタイプが少なくないのです。

 経営判断の前提には、しかるべき経営メソッドが実地レベルで身についているのが望ましいはずです。でも、昨今のように最初から起業を目指して経営を学んだ上で事業をスタートさせるような人は、中小企業全体の中ではむしろレアケースでしょう。つまり、社長は大半が経営の素人なのです。日本で教わる経営理論は大企業向きの場合が多く、中小企業の現実に即した経営メソッドを教わるすべがないという現実も、中小・零細企業を取り巻く現実として存在しています。

続きを読みたい方は以下
http://waga.nikkei.co.jp/work/business.aspx?i=MMWAj3000008042009&page=4

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石田ふたみ