『日々の映像』

2009年01月30日(金) 国家の企業への公的支援の可否

資料

社説1 企業への公的支援は公正かつ透明に
                       2009年1月29日  日経

米国は銀行を含めて民間企業の救済に100兆円以上の資金を投下する。この様相をどう表現すればよいのだろう。少なくとも世界の自由経済体制の様相が変わってきている。

 日本も負けじと、金融危機で資金調達が難しくなった企業を公的資金で救済する新たな支援制度を設ける検討が進んでいる。新制度は経済産業省が中心となって細部を検討しているようだ。今のところ枠組みの中心は政府系の二つの金融機関だ。

 世界中の国家が自国の企業が倒産しないように動くのであれば、その行き着く先には保護主義の妖怪が待っているような気がする。どう世界が変化していくのか。


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社説1 企業への公的支援は公正かつ透明に(1/28)
 政府は、金融危機で資金調達が難しくなった企業を公的資金で救済する新たな支援制度を設ける。急激に収益が悪化し、一時的に自己資本が大きく欠損した事業会社を対象に、民間金融機関の機能を政府が補って経営破綻を回避する狙いがある。

 平時ならば破綻しないはずの企業を危機対策として助けるのは、政府の重要な仕事である。企業の有力な資金調達手段だった社債・コマーシャルペーパーの市場が機能不全に陥り、銀行の融資能力も低下している以上、政府が資金面で支援の枠組みを作るのは理にかなっている。

 ただし注文もある。支援の判断と手続きは、公正かつ透明でなければならない。特定の企業や業界に利する援助は許されない。政治家による利益誘導や、官僚の裁量で支援の対象や規模が決まらないよう制度設計には細心の注意が必要だ。

 新制度は経済産業省が中心となって細部を検討している。今のところ枠組みの中で中心的な役割を担うのは政府系の二つの金融機関だ。

 まず自己資本が少なくなった企業に対し、昨年秋に特殊会社として再スタートした日本政策投資銀行が出資する。投資先企業の倒産などで出資元本に損失が生じた場合に、同じく特殊会社の日本政策金融公庫が国の財政資金を得て、損失の一部を肩代わりする。

 いわば救済目的の出資に対し部分的に公的な信用保証をつける仕組みだ。出資により企業の資本内容が改善し信用度が高まれば、金融機関からの融資も受けやすくなる理屈だ。

 焦点となるのは、政策投資銀が出資を決める基準である。現行の産業活力再生特別措置法(産業再生法)に基づき、経産相が事業計画を認定した企業を対象とし、政策投資銀も独自に判断するという建前だが、今回の政策の目的は「企業再生」ではなく「危機回避」である。

 その目的のためには、現行法より厳格な基準を設けるべきだ。経営の努力不足で構造的に不採算となった企業を、いたずらに延命する手段にしてはならない。

 保護主義的な政策にしないためには、内外無差別の原則を貫く必要もある。日本国内で事業展開する企業であれば、日本企業も外国資本の企業も同等に扱うべきだ。

 経産省は、政策投資銀だけでなく民間の金融機関も参加できる枠組みを検討している。民間銀行も救済出資の判断に加われば、さらに公平性は高まるはずだ。リスク負担能力が低下している銀行を枠組みにどう取り込むかが課題となろう。

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石田ふたみ