2008年11月01日(土) |
政府 26.9兆円追加経済対策を決定 |
政府 26.9兆円追加経済対策を決定 ―――批判だけの報道は引用しなかった――― 資料 1、3年後の消費税上げ表明26.9兆円追加経済対策を決定 共同通信 2、<麻生首相>「ばらまき」批判かわす狙い…消費税上げ明言 毎日 3、給付金は1人1万2千円で調整 高齢者・子どもは加算 朝日 4、社説 与野党は追加対策の早期実現へ全力を 日経 5、主張:追加経済対策 市場安定へ全力挙げよ 産経
政府・与党は総額2兆円規模の「給付金」支給などを柱とする追加経済対策をまとめ、麻生太郎首相が記者会見で発表した。この中で首相は「政局より政策、何より景気対策を求める世論が圧倒的に高い」と述べ、政局の焦点の衆院解散を当面は見送る構えである。
この事業総額26兆9000億円の追加経済対策に対して批判のみを展開する論説の引用は除外した。何もしないのであれば、洪水のような批判があってもやむを得ないと思うが一定の政策に対して、その総てを否定するような論説は無責任の言論ではないかと思う。
麻生太郎首相が30日の記者会見で、3年後の消費税率引き上げを明言した。今回の発言によって、次期衆院選で消費税増税問題が争点となることは避けられず、首相の発言は大きな意味を持つと思う。責任のある政治家の発言と評価されるか、選挙の大敗北の原因となるか・・・これは国民の審判である。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 1、首相、3年後の消費税上げ表明 26・9兆円追加経済対策を決定 2008年10月31日 共同通信 麻生太郎首相は30日、首相官邸で記者会見し、事業総額26兆9000億円の追加経済対策(生活対策)を発表、社会保障の安定財源確保などのため「経済状況を見た上で、3年後に消費税率の引き上げをお願いしたい」と表明した。 首相が消費税率の引き上げ時期に踏み込んで発言するのは異例。年末に税制改革の全体像を示し、2010年代半ばまでに段階的に実行するとしているが、与党内に異論もあり「ねじれ国会」の下で実現は簡単ではなく、議論を呼びそうだ。 今回の経済対策の柱は、家計緊急支援のための「生活支援定額給付金」(仮称、総額2兆円限度)で全世帯に支給。首相は「4人家族で6万円程度になる」と述べた。 首相は「金融災害というべき100年に1度の暴風雨」と厳しい現状認識を強調。「暮らしの不安を取り除く」として住宅ローン減税や高速道路値下げ、雇用対策、市場安定などを盛り込み、政策を総動員した。国の財政支出は政策減税を除き5兆円で、第2次補正予算を編成する。 給付金の支給時期について、首相は前日に「年内と年を越すのではだいぶ意味が違う」と年内実施の考えを示したが、「年度内」と訂正した。 雇用保険の料率も下げ、標準世帯に年約2万円還元。今年末で期限が切れる住宅減税は最大控除額を過去最高の600万円規模にして延長。証券優遇税制も3年延長する。 金融危機で貸し渋りに遭っている中小企業向けに、融資や保証枠を21兆8000億円追加。8月の総合経済対策で実施した9兆円と合わせ30兆8000億円に拡大し、資金繰りに万全を期す。 道路特定財源の一般財源化に伴い、1兆円を地方の実情に応じ使える新たな仕組みを設ける。自治体が社会資本整備などに使える臨時交付金6000億円も支給する。 高速道路料金を大幅に下げ、地方では休日の「1000円乗り放題」を導入、首都、阪神高速も休日割引を行う。生産調整(減反)に協力するコメ農家への助成も盛り込んだ。 対策の財源は、主に特別会計の積立金など「霞が関の埋蔵金」で捻出、赤字国債は増発しない。年末に税制改革の全体像を示すことも明記した。 2008/10/30 22:52 【共同通信】 ―――――――――――――――――――――――――――――――――― 2、<麻生首相>「ばらまき」批判かわす狙い…消費税上げ明言 10月31日2時30分配信 毎日新聞
麻生太郎首相が30日の記者会見で、3年後の消費税率引き上げを明言したのは、総額2兆円規模の給付金など追加経済対策に対する「バラマキ」批判をかわすとともに、政策の財源の裏付けをきちんと示すことで民主党との違いを鮮明にする狙いがある。日本経済を「全治3年」と位置づけたことを受けての「3年後の増税」方針。しかし今回の発言によって、次期衆院選で消費税増税問題が争点となることは避けられず、首相の発言は大きな賭けと言える。
実は、首相は16日に首相官邸で開かれた追加経済対策に関する政府・与党会議で、財政再建の観点から消費税増税方針に言及していた。自民党税調の津島雄二会長が「選挙への危機感がない」と声を荒らげるなど出席者は一様に驚き、発言内容は公表されなかった。
09年度から基礎年金の国庫負担割合を2分の1に引き上げることが決まっており、財源には消費税1%分に相当する年間約2.5兆円が必要だ。政府は11年度までの3年間は財政投融資特別会計の積立金の流用を検討しているが、首相は、国民の年金不信を解消するためにも、恒久的な財源確保として消費税論議は避けられないと判断したとみられる。
消費税増税派の与謝野馨経済財政担当相は記者会見で「財政再建は橋本内閣以来の課題だ。私は、正しいことをおっしゃったと評価している」と首相発言を歓迎。一方、民主党の鳩山由紀夫幹事長は記者団に「無駄遣いをなくせば消費税を増税する必要がない。新しい政権を作ることで変えていく」と批判した。
消費税の導入が争点になった79年の衆院選で、自民党は過半数割れの敗北を喫している。【中田卓二】 ――――――――――――――――――――――――――――――――――― 3、給付金は1人1万2千円で調整 高齢者・子どもは加算 2008年10月31日3時2分 朝日 政府・与党は、新総合経済対策に盛り込んだ全世帯対象の「生活支援定額給付金」の支給額を1人あたり一律1万2千円程度にする方向で検討に入った。65歳以上の高齢者と15歳以下の子どもはさらに1人あたり1万円程度を上乗せすることで調整している。 夫婦に子ども2人の4人世帯の場合、4人分の基本額4万8千円と、子ども2人分の加算額2万円の計6万8千円。高齢者2人の世帯では4万4千円が支給されることになる。支給方法は窓口などでの現金支給ではなく、銀行口座に振り込むことを検討している。住民基本台帳をもとに世帯の家族構成を調べる。 定額給付金は所得制限を設けず、全世帯に支給することが決まっている。支給額について、麻生首相は30日の記者会見で「規模は約2兆円。単純に計算すると4人家族で約6万円」と説明していた。
首相、給付金は「4人家族で約6万円」 麻生首相が30日発表した追加景気対策の目玉となった定額給付金は、単年度の措置として、今年度中に全世帯に支給される。給付総額は2兆円で、首相は「単純計算すると、4人家族で約6万円になる」と説明した。 住宅ローン減税は期限を延長したうえで、減税額の上限を過去最高水準に引き上げる。住宅投資を刺激する効果を期待している。 中小企業対策では、8月末の「総合経済対策」に盛り込んだ資金繰り支援のための6兆円の信用保証枠を、20兆円へと大幅に拡大する。 さらに、政府系金融機関などによる3兆円の貸付枠も10兆円に拡充する。 高速道路料金の大幅な引き下げは、燃料価格の高止まりなどに苦しむ運輸業界の支援や、流通コストの抑制効果を狙っている。 悪化する地方自治体の財政を支援するため、道路特定財源の一般財源化に伴って、特定財源のうち1兆円を地方に回す新たな仕組みを創設する考えも掲げた。 金融市場の安定化策では、企業に対する自社株買いの要請や、証券化商品の透明性向上の取り組みなどを盛り込んだ。年末で期限が切れる証券優遇税制は、3年間延長する。 さらに対策は、年内に策定する税制抜本改革の「中期プログラム」の骨格も示した。基礎年金の国庫負担割合を2分の1に引き上げる財源などを確保するため、消費税を含む税制改革に速やかに着手し、2010年代半ばまでに段階的に実行する方針を表明した。 (2008年10月31日00時24分 読売新聞) ―――――――――――――――――――――――――――――――― 4、社説 与野党は追加対策の早期実現へ全力を(10/31) 2008年10月31日 日経 政府・与党は総額2兆円規模の「給付金」支給などを柱とする追加経済対策をまとめ、麻生太郎首相が記者会見で発表した。この中で首相は「政局より政策、何より景気対策を求める世論が圧倒的に高い」と述べ、政局の焦点の衆院解散を当面は見送る考えをにじませた。
追加経済対策の中身はよく吟味する必要があり、民主党などがよりよい対案を提示したなら、政府・与党は前向きに受け入れるべきだろう。与野党が共同で追加対策の早期実現に全力を注ぐ局面である。
中身は玉石混交
首相が経済・金融情勢の悪化に柔軟に対応して、追加対策をとりまとめたこと自体は評価できる。ただ、今回の対策には必要不可欠なものと財政コストと照らし合わせた効果に疑問があるものが混在している。
世界的な金融危機が続く中で最も重要なのは、日本で信用収縮が広がるのを防ぐことだ。
地方金融機関への予防的な資本注入を可能にする金融機能強化法の復活は、自己資本不足の金融機関が貸し出しを過度に抑えるのを防ぐ役割を果たす。すでに法案の修正審議に入っているが、合意を得て早期に成立させるべきだ。中小企業向けの信用保証枠の拡大も、金融機関の貸し渋りを抑制するのに必要な措置だ。
省エネ関連の投資や、海外子会社の利益の国内還流を促す税制措置も、成長力の強化に資するものであり、評価できる。
証券優遇課税の延長は、投資家にとってわかりにくい制度見直しを避けるという点で理解できる。金融課税の一体化や長期的な資産形成を促す税制など抜本的な改革へつなげる一時的な措置とすべきだ。最終段階になって、確定拠出年金(日本版401k)に従業員の上乗せ拠出を認める措置も盛り込んだが、これは長期の資産形成に貢献する正しい対策である。
住宅ローン減税の拡充は、住宅投資のてこ入れや消費のある程度の下支えにつながるだろう。
一方、前向きな評価ができないのは総額2兆円の給付金の支給である。財政コストと比べた消費刺激効果は小さいと言わざるをえない。給付金は全世帯を対象としており、社会政策としての説明もしにくい。
揮発油税など道路特定財源を一般財源にするのに伴い、1兆円を地方に回すのはいいが、無駄な使われ方にならないような歯止めも必要だ。また、一般財源化に伴って道路予算が減らないよう建設国債を増発して手当てする考えも浮上しているようだが、そうなれば無駄な道路建設をやめるという趣旨に反する。
全体として中長期的な成長力の強化や構造転換につながる具体策が乏しいのも気になる。農家向け支援も減反補助金の上乗せのようなものにとどまるなら農業改革に逆行する。
麻生首相は「経済状況を見ながら、3年後に消費税引き上げをお願いしたい」と述べた。単なる増税だけではなく、それと合わせた年金など社会保障改革の姿が示されなければ国民の安心につながらない。ばらまき批判をかわすだけの「言い訳」で終わらせてはならない。
金融情勢は依然として不安定であり、政府・日銀は金融の安定化や経済の急激な悪化に柔軟に対応する構えを崩すべきではない。
首相は記者会見で現在の経済情勢を「100年に1度の暴風雨」と評し、「政策を実現して国民の生活不安にこたえることが優先順位の1番だと思う」と強調した。自民党執行部は11月30日投票の日程で衆院選の準備を進めていたが、選挙が遠のいたとの観測が広がっている。
やむを得ぬ解散先送り
2005年の衆院選以来、3回も内閣が交代し、政権のたらい回しはもはや限界だ。私たちは麻生内閣発足に際して、実質的には選挙管理内閣だと指摘し、速やかに衆院を解散して民意を問うよう求めてきた。
だが未曽有の金融危機で世界の株式、為替市場が混乱し、経済の先行きに不透明感が強まっているなかで、首相が解散を先送りしたのはやむを得ない判断だったといえる。本紙の直近の世論調査でも、解散・総選挙よりも景気対策を優先すべきだとの回答が63%に達し、解散・総選挙の29%を大きく上回った。
民主党など野党側は解散先送りに反発している。補正予算の早期成立などに協力してきた民主党は、徹底審議を求める戦術に転換したが、インド洋での給油活動の延長法案の採決をいたずらに引き延ばしたりするのはあまりにご都合主義である。
金融機能強化法改正案だけではなく、銀行保有株の買い取りを再開することなどを盛り込んだ緊急市場安定化策関連法案なども速やかに成立させる必要がある。国会は再び衆参ねじれの厳しい現実に直面することになるが、参院第1党の民主党が果たすべき責任は極めて重い。
―――――――――――――――――――――――――――――――――― 5、主張】追加経済対策 市場安定へ全力挙げよ 2008.10.31 03:49 産経 ■消費税上げに法的裏付けを 麻生太郎首相は事業規模27兆円、国の財政支出が5兆円に上る追加経済対策を発表した。同時に3年後に消費税を引き上げると言明した。追加対策を財政的に裏付ける第2次補正予算案も今国会で成立させる方向だ。 焦点の衆院解散については当面見送るとした。米金融危機による日本への悪影響をいかに抑えるかを重視する首相の判断は妥当だ。党派を超えて危機を回避する枠組みが必要な時を迎えている。 選挙もにらんだ追加対策の内容や財源には、その効果や財政規律の面で疑問点が多い。国会は追加対策の中身を十分に吟味する必要がある。首相の消費税発言の意味は大きいが、引き上げにどう道筋をつけるのか。与野党が本格的論議を開始すべきである。 ≪やむを得ない解散回避≫ 首相は「100年に1度の米国発暴風雨」との経済認識を強調したが、追加経済対策をざっとながめてみると、玉石混交というより玉を見つけるのが難しい。住宅ローン減税の延長・拡充とモラルハザードが懸念されるほどの信用保証制度拡充は一定の効果を期待できるかもしれない。 しかし、対策の目玉といわれる2兆円規模の給付金と「1000円走り放題」を含む高速道路料金引き下げは極めてばらまき色が強い。とくに定額減税構想が姿を変えた給付金は問題だらけだ。 これは1世帯平均4万円弱の“お年玉”みたいなものだ。大半が貯蓄と飲み食いに回り、景気押し上げ効果はわずかだろう。もっと問題なのはその財源である。 いわゆる埋蔵金と呼ばれる財政投融資特別会計などの積立剰余金を使うという。「赤字国債の発行は避ける」(麻生首相)としているからだが、本当にそうか。 こうした剰余金は法的に国債償還に充てることになっている。それを別の使途に充てれば赤字国債発行と実質的に同じなのだ。懸念された国債整理基金の流用は踏みとどまったが、もはや財政規律は大きく崩れた。 与党内には、こうした手法を来年度からの基礎年金国庫負担割合2分の1引き上げの財源確保にも使う動きがある。想定していた消費税の引き上げを先送りしてしまったからだ。 年金に限らず社会保障制度は一時的な剰余金では持続しない。税収は今年度当初見込みを大幅に下回るのが確実で、来年度も期待できない。安定財源を確保せずにばらまきを続ければ、2011年度の基礎的財政収支黒字化目標どころか、財政は破綻(はたん)する。 麻生政権はせめて、社会保障財源を確保するための消費税を含む税制改革中期プログラム策定を早急に具体化し、実施を立法化で担保することだ。それが国民に安心を与え、中長期的には最大の景気対策になる。 あわせて重要なのは市場対策である。米金融危機以降、東証1部の時価総額は100兆円規模で吹き飛んだ。これだけでも逆資産効果は相当だが、株下落で金融機関が傷めば先進国で最も体力がある日本経済ももたなくなる。 市場動乱の根っこは米金融危機だから限界はあるし、取りまとめた市場対策も問題を含む。だが、緊急事態であり間髪を入れずに実施することだ。時価会計の緩和も直近の決算に適用したらいい。 もちろん、株価に影響を与える為替の安定も不可欠だから、麻生首相は来月15日の金融サミットで介入を含めた協調を強く促すべきだ。景気対策は金融資本市場次第で足りなくもなるし、逆に不要にもなるのである。 ≪早急に党首会談を≫ 補正予算案の提出は11月下旬とみられ、今国会成立には来月末で切れる会期の延長が必要だろう。民主党は給付金支給を「効果なきばらまき」と批判しており、その財源を剰余金に求めることには反対する構えだ。 この手続きには法改正が必要であり、民主党が反対する限り、衆院再議決を経なければ法案が成立しない状況になる。 首相は解散見送りにより政権運営の選択肢を自ら狭めてでも、政策実現を求めたのだ。追加対策の実施が遅れたのでは、その効果もますます薄れよう。 直ちに民主党の小沢一郎代表に会談を申し入れ、国政に求められる緊急課題の解決を話し合うべきだ。民主党も危機対応力が試されていることを自覚してほしい。
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