『日々の映像』

2008年09月02日(火)  首相退陣表明 またも無責任な政権投げ出し

 朝の6時から1時間ほど以下の社説を中心に福田首相の辞任記事を読んだ。
私の書いているミクシイでの日記(エンピツでは日々の映像)は「社会の動きに対してあなたはどう思いましか、わたしはこのように思います」というスタイルの短文エッセイである。1997年1月1日から書き始めたので、今年は12年目に入っている。この短文エッセイを1日も欠かさず書き続けてきたことがささやかな誇りである。

 今回の首相退陣表明について次の設題としたい。「首相退陣表明の社説が以下の通りあります。5大新聞の社説を読んで、どこの社説が一番ぴったりと来ましたか。わたしは毎日新聞です」

福田首相辞任―早期解散で政治の無理正せ
                    2008年9月2日  朝日新聞
社説:首相退陣表明 またも無責任な政権投げ出し
                    2008年9月2日  毎日新聞
社説 解散戦略描けず行き詰まった福田政権
                    2008年9月2日 日本経済新聞【主張】福田首相辞意 空白抑え強力な政権を 党利党略超えた政治に戻せ
                       2008.9.2 03:14 産経新聞
福田首相退陣 政策遂行へ強力な体制を作れ
                     2008年9月2日 読売新聞社説

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福田首相辞任―早期解散で政治の無理正せ
                    2008年9月2日  朝日新聞
 あまりにも唐突に、福田首相が辞任を表明した。
 安倍前首相の突然の政権放り出しから、わずか1年足らず。自民党の首相が2代続けて自ら政権を投げ出すことになる。極めて異常、無責任としか言いようがない。野党第1党に政権を引き渡せという声が出ても不思議はない。それほどの事態だ。
 いま辞任すればそんな批判を浴びせられるであろうことは、首相も十分わかっていたはずだ。それなのになぜ、こんな決断を下したのか。
 ■またも政権の投げ出し
 首相は記者会見で「先の国会では民主党が駆け引きで審議引き延ばしや審議拒否をした。何を決めるにもとにかく時間がかかった」と、参院の多数を握る民主党への非難を繰り返した。
 そのうえで「この際、新しい布陣の下で政策の実現を図っていかねばならない」と、辞任の理由を語った。
 この1年間の国会運営が難しいものだったことは確かだ。自分の手では、もはや政治を前に進めることはできない。政権の「顔」を変えるしか、手だてはあるまい。首相の言葉からは、そんなやむにやまれぬ思いが伝わってくる。つまりは、政権運営に行き詰まったということだ。
 首相が政権を引き継いだのは、昨夏の参院選で自民党が大敗した直後のことだ。衆参の多数派が逆転した「ねじれ国会」の運営は、だれが首相になっても難渋しただろう。
 それを打開しようと、首相が乾坤一擲(けんこんいってき)、仕掛けた切り札は小沢民主党代表と語らっての「大連立」構想だった。だが、これが民主党内の反発で夢と散った後、首相はほかに打つべき手を思いつけなかった。
 早期解散・総選挙に狙いを絞った小沢民主党は、インド洋での給油支援継続のための特措法案、ガソリン暫定税率の期限切れなどで福田政権との徹底的な対決路線にかじを切る。
 ■積もり積もった矛盾
 首相は衆院の3分の2を超える与党の多数を生かし、3度も再可決を繰り返してなんとかこの危機をしのいだ。
 だが、再可決には、衆院を通過してから60日間もの日数がかかる。内閣支持率がじりじりと低下を続けたのは、この手法の限界を物語るものでもあったろう。遅々として進まない政治への世論のいらだちが表れていた。
 小泉時代に獲得した衆院での圧倒的多数が国会運営での柔軟さを失わせ、衆院解散で政局の行き詰まりを打開する道を封じることになったのは皮肉なことだった。
 ちょうど1カ月前、首相は内閣改造でようやく自前の布陣を整えた。秋の臨時国会で自らの政策課題を実現させようと意気込んでいたはずだ。
 なのに、ここへきて首相が急に辞任を決断したのは、補給支援特措法の延長や消費者庁創設などに成立のめどがたたなくなったからだ。「平和協力国家」と「安心実現政権」を掲げる首相にとって、これらが頓挫すれば政権そのものが意味を失いかねない。
 決定的だったのは、与党である公明党からの思わぬ攻勢だった。
 来夏の東京都議選をにらんで早期解散に目を向ける公明党は、衆院再可決に待ったをかけた。世論の反発を買うという理由からだった。
 さらに、物価高や景気減速を受けた総合経済対策では、予算のばらまきにつながるとして渋る首相を押し切って定額減税を受け入れさせた。
 公明党の協力がない限り、衆院の再可決の道は閉ざされる。選挙になれば創価学会の支援なしには自民党の勝利はまったくおぼつかない。そんな事情が自民党内にも影響し、首相への大きな圧力になったのは間違いない。
 財政と安全保障の両面で政策の方向性を定められない。そんな福田政権のひ弱さがあらわになった。
 民主党、世論、そして公明党。首相を取り巻くこの包囲網が、首相のやる気を失わせたのは想像に難くない。
 ■政権の正統性回復を
 首相には、打開の道もあったはずである。首相の座についてから最初の予算案を編成したあと、今年1月にも衆院の解散・総選挙に打って出て、政権の正統性を取り戻すことにほかならなかった。
 小泉政権時代の郵政総選挙から3年。安倍、福田と政権がたらい回しされたのに、政権選択を問う衆院選は一度も行われていない。参院選では与党が惨敗した。
 衆院では自民、参院では民主と、多数派が異なる中で、政策の方向がなかなか決まらないのは構造的なものだ。自民党のだれが首相になろうと、政権運営は早晩、行き詰まらざるをえない。その根本的な矛盾がある限り、世論の支持も上がらない。
 自民党総裁選を経て選ばれる新首相の使命は、できるだけ早く衆院を解散し、国民の審判を受けることだ。それなしに、まともで力強い政権運営をすることはできない。
 政治がいま迫られているのは、社会保障の立て直しと財政の再建を両立させる方法を国民に示すことだ。さらに、効果的な景気対策をどう講じるかという難題も重なっている。
 場合によっては、国民に痛みを強いる選択も避けられまい。民意を体した正統性のある政権を一日も早く日本に取り戻さなければならない。
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社説:首相退陣表明 またも無責任な政権投げ出し
                    2008年9月2日  毎日新聞
 あまりに唐突な政権の投げ出し劇である。福田康夫首相が1日夜、緊急記者会見し、退陣を表明した。12日から始まる臨時国会を前に退陣することについて首相は「新しい布陣のもとに政策の実現を図る」などと理由を述べたが、そのまま受け入れるわけには到底いかない。無責任政治はここに極まった。
 国会で所信表明演説を終えた直後の昨年9月12日、辞任表明した安倍晋三前首相を思い出した人も多いだろう。日本の首相は、米国やロシア、中国などの大統領や国家主席を相手にしているのだ。2代続けて、このように短期間で、政権を放り出すのは異常事態であり、国益を損ねる行為でもある。果たして、今の自民党に政権担当能力があるのだろうかと疑う。
 自民党では早急に党総裁選を行う方針で、後継には麻生太郎幹事長が有力視されている。しかし、安倍前首相、福田首相ともに、そもそも首相就任後、衆院選で有権者の審判を受けずにきたことが、自信を持って政権運営できなかった大きな要因だったのだ。
 直ちに衆院を解散し、総選挙を行って有権者の審判を仰ぐべきである。新首相が決まったとしても、その内閣は、もはや選挙管理内閣と見なすべきだ。
 つまずきは大連立
 それにしてもだ。なぜ、この時期なのか。
 福田首相は会見で「だれも手をつけなかった国民の目線の改革に手をつけた」などと胸を張り、「私は自分のことを客観的に見ることができる」と開き直りもした。そのうえで、臨時国会を前に「新しい布陣のもとで政策の実現を図るため」、そして「政治空白を作らないため」に退陣するのだと語った。
 だが、福田首相が退陣しても、参院で野党が過半数を占めている状況は変わらない。新たに自民党の首相が誕生しても、政府・与党の思い通りになるような政権運営は困難である。
 福田首相は会見で「安倍前首相は病気だった」と、安倍退陣との違いを述べたが、これもまったく説得力を欠く。国会開会直後であろうが、直前であろうが、責任放棄であることには変わりはないからだ。
 要するに、野党が参院で過半数を占める「ねじれ国会」を理由に、政権運営が思うようにならないから、投げ出したということだろう。そして、福田内閣の支持率が低迷し続け、自民、公明両党内にも「福田首相の下では衆院選は戦えない」との声が次第に強まる中で、それに抗する気力も熱意もなかったというのが実相であろう。
 福田内閣は参院選惨敗に伴う与野党「ねじれ国会」に直面した安倍前首相の退陣を受け、昨年9月に発足した。最初の組閣では安倍内閣の閣僚を大幅に引き継ぎ、自ら「背水の陣内閣」と称し、野党が攻勢を強める中、自公政権の立て直しを目指した。政権発足後ほどなく民主党の小沢一郎代表との党首会談を通じ同党と「大連立」を模索したが、失敗した。
 若い安倍前首相の後継として期待されたのは、落ち着きのある、地道な政治だったはずだ。振り返れば、「大連立」という奇策に安易に走ろうとしたところがつまずきの始まりだったのではないか。
 失敗を機に、まず大きな懸案だった、インド洋で海上自衛隊による給油活動を継続する新テロ対策特別措置法は衆院で57年ぶりの再可決で成立させるなど苦しい対応を余儀なくされた。
 ◇成果も乏しく
 さらに行き詰まりを感じさせたのは、今年の通常国会の攻防からだ。参院の同意が必要な日銀正副総裁人事で民主党の同調が得られず、総裁候補の武藤敏郎氏らの人事案がたて続けに否決される混乱を生んだ。4月にはガソリン税の暫定税率が期限切れ。道路問題でさらに2度の衆院再可決で関連法を成立させるという際どさだった。
 もたつきの中で政権発足時は57%あった内閣支持率も今年5月に18%にまで落ちこみ、衆院山口補選で自民候補が敗北するなど、次期衆院選で首相を「顔」として戦うことを不安視する見方が与党に広がった。8月の内閣改造で、麻生氏を幹事長に起用し態勢立て直しを目指した。だが、新テロ法の期限延長に慎重姿勢を示す公明党との間で、次期国会の日程をめぐる調整が難航。民主党が早期解散を求め、公明党も年内・年明け解散に軸足を始める中、国会の乗り切りが危ぶまれていたのは確かだ。
 首相独自の政策としては消費者庁の設置や道路特定財源の一般財源化などを打ち出したが、局面打開に至らなかった。「改革に手をつけた」とも言えない1年だったというほかない。
 重ねて指摘しておく。そもそも今、衆院で3分の2以上を占める与党勢力は、05年9月、小泉政権の下での郵政選挙でもたらされたものだ。この「遺産」といえる勢力で国会運営を進めるのは、とっくに限界だったということだ。それを今回は改めて示した。
 国民に責任を感じるとすれば、直ちに衆院解散・総選挙に踏み切ること以外、与党には道はなかろう。
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社説 解散戦略描けず行き詰まった福田政権
                     2008年9月2日 日本経済新聞
 福田康夫首相が緊急記者会見し、退陣する意向を表明した。首相は「今が政治空白をつくらない1番いい時期と考えた。新しい人に託した方がいい」と述べ、次期臨時国会前の時期を選んで辞意を固めたことを明らかにした。

 8月に内閣改造に踏み切ったばかりの首相の政権運営が行き詰まったのは、最後まで衆院の解散戦略を描けなかったためである。

次期首相は早期解散を
 衆参ねじれ国会という厳しい局面で昨年9月に就任した首相は当初、民主党との大連立で政権を安定させる道を模索したが、この構想が頓挫してからは、国会での法案処理で手いっぱいだった。

 本紙の直近の世論調査で、内閣支持率は改造直後の前回調査の38%から29%に低下。与党内では「支持率が低迷する福田首相の下では選挙を戦えない」との見方が広がっていた。このまま手をこまぬいていれば、次期衆院選への危機感から「福田降ろし」の動きが表面化する恐れもあった。

 とりわけ年末・年始の早期解散にかじを切った公明党は、福田政権に厳しい姿勢を鮮明にし始めた。首相と公明党との間では、臨時国会の召集時期や会期をめぐり不協和音が絶えなかった。

 首相は臨時国会で、インド洋上での給油活動を延長する法案や消費者庁設置法案の成立に意欲を示していた。しかし民主党は給油延長法案などに反対する方針を崩さなかった。給油延長法案を成立させるには、衆院で3分の2以上の賛成で再可決するしか手はなかったが、公明党の協力を取り付けられぬまま、臨時国会に臨まざるを得ない状況だった。

 衆院解散で局面を打開することができない首相は早晩、退陣に追い込まれる可能性が高かったといえる。政治空白を最小限にとどめるために、国会召集前に辞意を固めた首相の判断は理解できる。

 しかし前任の安倍晋三首相は1年で政権を投げ出し、福田首相も衆院選の洗礼を受けぬまま、1年で退陣する。与党内の政権たらい回しで、3人目の首相が誕生するのは極めて異常な事態である。

 記者会見に先立ち、首相は麻生太郎幹事長に「総裁選の日取り、手続きを進めてほしい」と指示した。自民党は速やかに総裁選を実施して、新政権を発足させる必要がある。

 だれが首相になっても、早期に衆院を解散して有権者の審判を受けなければならない。衆院選の実施こそが、政治空白を短期間にとどめる道だろう。

 一方、民主党の小沢一郎代表は記者会見で、党代表選への出馬を正式に表明した。告示日の8日に無投票三選が確定し、21日の臨時党大会で選出される見通しになっている。小沢氏は次期衆院選で民主党の首相候補になるが、党大会で政権構想のもとになる所信を発表する意向も示した。

 今回の代表選では有力な対抗馬と目された岡田克也、前原誠司両副代表らが相次いで不出馬を表明。出馬への意欲を示した野田佳彦広報委員長は、支持グループの中から反対論が出て、出馬を断念した。

 私たちは代表選で活発な政策論争をしたうえで、次期衆院選のマニフェスト(政権公約)を練り上げるよう求めてきた。党の存在感を高める絶好の機会を自ら封じてしまったことは遺憾である。

小沢氏は政策を語れ
 首相の退陣表明に伴い、自民党では急きょ、総裁選が行われる見通しになった。自民党との対比においても、代表選が無投票で終わることは有権者にも物足りなさを残すに違いない。

 小沢氏は記者会見で次期衆院選の政権公約について、昨年の参院選の公約と「大筋の考え方は変わらない」と説明した。

 しかし参院選の公約は農業の戸別所得補償や子ども手当など総額15兆3000億円の新規施策の財源の大半を、行政の無駄を省くことで生み出すというもので、説得力に欠けた。その後、民主党はガソリンの暫定税率の廃止などの新たな施策を打ち出しており、党内からも財源の裏づけが不十分との批判が出ている。

 民主党政権ができれば、政権公約に沿って予算編成などに取り組むことになる。今後の政権公約づくりなどで、小沢氏はもっと政策を語るとともに、批判にも謙虚に耳を傾ける姿勢が必要だろう。参院選の政権公約を吟味したうえで、政策の優先順位などをはっきりさせる作業が不可欠だ。

 首相の退陣表明で衆院解散・総選挙は年内に行われる可能性が強まってきた。次期衆院選は文字通り政権選択をかけた歴史的な選挙となる。自民、民主両党は政権公約を示すことが急務であり、その中身が党の消長に直結する。
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【主張】福田首相辞意 空白抑え強力な政権を 党利党略超えた政治に戻せ
                       2008.9.2 03:14 産経新聞
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/080902/plc0809020314009-n1.htm
 
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福田首相退陣 政策遂行へ強力な体制を作れ
                     2008年9月2日 読売新聞社説
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/

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石田ふたみ