『日々の映像』

2008年06月25日(水)  太陽光発電:補助金復活?

 経済産業省が太陽光発電の普及を促すため補助金復活に動き出すという。報道では「国内の太陽電池市場が再び活性化する可能性が出てきた。地球温暖化対策や原油価格高騰を追い風に、化石燃料を使わない太陽光発電は欧州を中心に拡大する一方、国内では縮小傾向だった。各メーカーはビジネスチャンスの到来とみて期待を高めている。」(毎日から)というが、ヨーロッパでなぜ太陽光発電の普及が進んでいるかを理解する必要があると思う。

 ドイツは04年に太陽光発電の電力を「通常電力料金の3倍で買い取る制度」、日本を抜いて累積導入量で首位に立っている。スペインなども同様の制度で普及している。世界の3割を超える供給を行なうシャープ、京セラ、三洋電機、三菱電機などの各メーカーは、欧州向けに増産している。日本のメーカーが日本以外の国で太陽光発電に貢献しているのである。

 経済産業省は国益より「日本の電力業界の利益」を優先する政策しか取れないのではないか。太陽光発電の設置に当たっての補助金などは必要ないのだ。ドイツのように、余剰電力を「通常電力料金の3倍で買い取る制度」を導入すれば、爆発的な普及が進むだろう。

 2008年6月24日の8月物は1バレル136.74ドルで取引を終えている。石油の99%を輸入している日本が、一番太陽光発電に力をいれなければならないのに、巨大な電力業界の顔色を伺っているような政策(補助金)ではたいした普及はないのだろう。1バレル130ドル台の価額が続くと恐ろしいほどの国民負担がやって来る。


太陽光発電:補助金復活へ…商機再来に期待感
                       毎日新聞 2008年6月24日 
環境白書:環境ビジネス45兆円に拡大
                       毎日新聞 2008年6月3日 
電機各社が増産 温暖化対策、原油価格高騰
                       毎日新聞 2008年3月26日 
新戦略を求めて
                朝日新聞 http://www.asahi.com/strategy/0607a.html
NY原油、終値136ドル台
                       2008年6月24日 日経
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
太陽光発電:補助金復活へ…商機再来に期待感
                       毎日新聞 2008年6月24日 21時37分
 経済産業省が太陽光発電の普及を促すため補助金復活に動き出したことで、国内の太陽電池市場が再び活性化する可能性が出てきた。地球温暖化対策や原油価格高騰を追い風に、化石燃料を使わない太陽光発電は欧州を中心に拡大する一方、国内では縮小傾向だった。各メーカーはビジネスチャンスの到来とみて期待を高めている。【秋本裕子、平地修】
 国内の太陽光発電の設置規模(累積導入量)は、04年まで113万キロワットと世界首位を誇っていた。国が94年度から始めた住宅向けの補助金制度がけん引したためだ。太陽光発電の購入者に対して1キロワット当たり最大90万円を補助し、需要は急拡大した。
 しかし、05年度に補助金制度が終了すると、翌年から導入量は頭打ちに。太陽電池の業界団体、太陽光発電協会によると、07年度の太陽電池の国内出荷量は前年度比22%減で、2年連続で縮小した。
 その一方で伸びたのは輸出量だ。07年度は同16%増で国内出荷の3倍に達した。伸び悩む日本市場に代わって、メーカーが狙いをつけたのは欧州市場だ。ドイツは04年に太陽光発電の電力を通常電力料金の3倍で買い取る制度を始め、05年には日本を抜いて累積導入量で首位に立った。スペインなども同様の制度で普及し、シャープ、京セラ、三洋電機、三菱電機などの各メーカーは、欧州向けの増産体制を整えてきた。
 こうした中、国内でも補助金制度などが始まれば、「大きな市場が見込める」(大手メーカー)との見方は強い。「福田ビジョン」の目標「30年までに現在の40倍」に対し、「実現すれば国内が魅力的な市場になる」(同協会)と期待している。
 一方、経産省は、住宅用太陽光発電導入に対する補助金や税制の優遇措置などで早期に普及率を高めたいとの方針で、メーカーの量産体制を軌道に乗せることが導入コストの大幅削減につながるとみている。ただ、3〜5年で太陽光発電システムの価格を半額に抑える目標については、「かなり厳しい」との声も上がっている。
 同省によると、太陽光発電システムの購入費用は現在、1戸当たり約230万円。1キロワット時当たりの発電コストに換算すると45〜46円で、同22〜23円の既存の電力料金の倍に相当するため、普及が進まない大きな要因になっている。
 このため、補助金の導入によって家庭の導入負担を低減する一方で、メーカー側には量産体制の確立や技術革新を促し、発電システムの価格をできるだけ低くするよう求める。システム購入費用を現在の半額に抑えることができれば、電力料金とそん色がなくなり、「補助金を出さなくても、自然に普及率が高まるようになる」との目算だ。
-―――――――――――――――――――――――――――――――――――
環境白書:環境ビジネス45兆円に拡大
                          毎日新聞 2008年6月3日 
 政府は3日の閣議で、08年版の環境・循環型社会白書を了承した。国内の環境ビジネス市場が、00年の30兆円から06年には45兆円に拡大したとの調査結果を報告、環境対策と経済発展の好循環が生まれ、「低炭素社会への転換期を迎えた」ことを強調している。
 水処理や廃棄物管理を含む環境ビジネスは今後、特にアジア・アフリカ諸国で年率10%前後の高い成長率が見込めると予測。環境問題などに配慮した「社会的責任投資」が米国で07年に2.7兆ドル(約280兆円)に及ぶなど、資金の流れの変化が世界を変えつつあることに触れ、各国の排出量取引制度や環境関連税制を重点的に解説した。
 また、太陽光発電の導入伸び率(06年)について、スペインの198%増に対して日本は1%減、風力発電能力では日本は13位など、自然エネルギー分野での立ち遅れを指摘した。家庭1世帯当たりの給湯や料理に使うエネルギー消費量は米や英、独より多いなど、「省エネ大国」のイメージと異なる側面に注意を促し、取り組みを求めている。英訳し、7月の北海道洞爺湖サミットで各国代表団などに配布する。【山田大輔】

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
電機各社が増産 温暖化対策、原油価格高騰
                    毎日新聞 2008年3月26日 東京朝刊
◇時代は太陽光発電
 シャープなど電機大手各社が太陽光発電設備の増産に乗り出している。地球温暖化対策に熱心なドイツなど欧州を中心に世界需要が急拡大しているためだ。発電量でかつて世界首位だった日本は最近伸び悩んでいるが、原油価格の高騰もあって将来的には再び成長が予想され、各社は投資に力を入れている。
 生産量で世界トップクラスのシャープは、09年度に堺市で新工場を稼働させ、生産能力を現在の2・5倍の年1850メガワットに拡大する。投資額は約1000億円と見られ、家庭の年間の太陽光発電能力(約4キロワット、必要な総電力の7割程度をカバー)で約46万戸をまかなえる計算だ。
 京セラも約200億円を投資して、滋賀県東近江市の工場を増設し、10年度までに生産能力を現行の2・4倍の500メガワットにする。三菱電機は今年10月までに約70億円で長野県飯田市などの工場を拡充し、現在の1・5倍の220メガワットとする。12年には500メガワット体制も検討している。
 太陽光発電は高額な設備が普及の障害だったが、ドイツは電力会社が電力買い取り価格を大幅に引き上げるなど推進策を導入し急成長。05年には発電量で日本を抜いて首位となり、現在は世界需要の約半分。発電設備は日本の電機メーカーが世界生産量の約3分の1を占めるが、多くをドイツに輸出している。
 一方、日本国内で太陽光発電を設置している家庭は約40万戸。企業も含めた需要は約200メガワットで世界全体の約1割。国が家庭への購入補助を05年度に打ち切ったため、伸びが鈍化している。また、設備は200万円程度となお高額。政府は補助制度の再開を含め普及策を検討しており、メーカー側も「世界的に省エネに関心が高まっており、将来的に有望」(シャープ)とみている。【森山知実】
==============
 ■ことば
 ◇太陽光発電
 住宅などの屋根にパネル型の太陽電池を設置して太陽光を電気に変える。発電時の二酸化炭素の排出はゼロ。三菱電機の試算では、07年の世界需要は04年から倍増し、1950メガワット。12年には約2・8倍の5550メガワットに達すると見込まれている。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
新戦略を求めて
             朝日新聞 http://www.asahi.com/strategy/0607a.html

消費抑制、日本の役割 自然エネルギー導入拡大を
 
太陽や風力、植物を使ったバイオマス燃料など、自然エネルギーはどの国にもある資源だ。省エネルギーも、石油や天然ガスの消費を抑え、需給の逼迫(ひっぱく)をやわらげる点で貴重な資源と言えるだろう。日本はその技術力を生かして、こうした資源をアジアに、世界に広めていく役割を担っていきたい。(編集委員・竹内敬二、社会部・井上道夫)

日本の課題
・日本は省エネ先進国だが、自然エネルギー導入で後れをとっている。
・省エネの経験を世界に広めるとともに、自然エネルギーの技術革新でも最先端をめざす。
・化石燃料への依存を減らし、世界の需給を楽にする。それをエネルギー戦略の旗印にする。

 世界の太陽光発電パネルの半分は、日本企業がつくっている。太陽光発電の導入量世界一も日本の指定席だった。しかし、欧州の調査団体によると、昨年末、ドイツに抜かれた。

太陽光発電による売電を酪農と並ぶ生活の柱にしているブールスマさん一家。
 「牛は搾乳など1日に2回の世話がいるが、これは何もしなくても稼いでくれる」と、ブールスマさん(33)は屋根を見る。オランダ国境に近いドイツの農村地帯。酪農を営むブールスマさんは2年前、屋根に普通の住宅の10倍、約30キロワットの太陽光発電パネルを設置した。

 電力会社に1キロワット時当たり0.54ユーロ(75円)で売れる。昨年の発電量は2万8000キロワット時で、売り上げは約210万円だった。約2000万円の設置費用は10年で回収できる。

 「いま乳牛が45頭、子牛が50頭いる。売電と酪農の稼ぎは同じくらいかな。牛乳の値段は動くけど、売電は固定収入が保証されるので生活が安定する」

 ドイツでは法律で、自然エネルギーでつくる電気の全量買い取りを、電力会社に義務づけている。太陽光や風力の発電事業を促すために買い取り価格を高めに設定し、そのコストは電気料金全体に薄く上乗せしている。太陽光からの買い取り価格は2年前に引き上げられた。

 ブールスマさんの家の工事をした設置会社「太陽エネルギーセンター」のシュルツさんは、「多くの人が『これなら投資が早く回収できる』と気軽に考え始め、2年間で太陽光設備が急伸した」と語る。

■技術革新──積極投資で自然エネ発電に競争力を

 自然(再生可能)エネルギー導入の主な目的は、温暖化を防ぐために二酸化炭素排出を減らすこと。そして、エネルギー安全保障のために自給率を高めることだ。欧州連合(EU、加盟25カ国)、米国、日本は表のような政策を導入している。

自然エネルギー政策の比較
 EU  加盟国平均で2010年にエネルギー全体の12%、電力の21%まで導入。欧州議会は「エネルギー全体で20年に20%」という目標を提案しているが、拘束力はない。
 米国 昨年できたエネルギー政策法で、風力、太陽、バイオマスの利用拡大を経済的に支援。2013年までに連邦政府の電力消費の7.5%を自然エネルギーに。植物利用のエタノール燃料も拡大。
 日本  電力では2010年までに1.35%の導入を義務化。エネルギー全体では同年に7%が目標。東京都は独自に、エネルギー全体で2020年に20%の目標を設定。
 最も積極的なのがEUで、「2010年に加盟国平均で電力の21%を自然エネルギーで」との目標を持つ。

 地球温暖化防止に冷ややかなブッシュ米政権は数値目標を敬遠している。EUよりは見劣りする米国だが、「侮ってはならない」というのは、風力発電装置で世界6位のシェアをもつ「リパワー社」(ドイツ・ハンブルク)のファーレンホルト社長だ。「米国はエネルギー安全保障の観点から技術開発を進めており、投資額は巨大だ」。現に連邦政府とは別に、20以上の州が電力量の一定割合を自然エネルギーで供給するよう義務づけている。

 日本には電力会社に、供給電力の一定割合を自然エネルギーでまかなうことを義務づけるRPS法(新エネ利用特別措置法)がある。だがその義務量は、大型水力を除いて、2010年で1.35%。簡単に達成できる。それどころか、低い義務量が自然エネルギー開発を妨げているのが現実だ。義務量を達成すれば、電力会社が「もう買わない」という状況が風力で出ている。

 今後も原発増設計画がある日本では、自給率は原発で高めようとの意識が根強い。「気象に左右される不安定な自然エネルギーは欲しくない」というのが、電力会社の本音だ。

 欧米はサトウキビやトウモロコシからつくる自動車用のバイオ燃料の導入も急いでいる。日本では材料の植物の生産量が低いこともあり、遅れている。

 EUは、自然エネルギー導入量の国際的な目標値の設定を提案してきた。世界銀行は、途上国の自然エネルギー開発への融資額を毎年20%ずつ増やすとしている。

 新たな動きが進む中で、日本も戦略を立て直すべきだ。


 自然エネルギーのコストは、図のように石油や天然ガスによる従来の発電に比べるとかなり高い。だが、原油が高騰していることに加え、技術革新で自然エネルギー発電のコストも下がってきている。火力発電との差は一段と縮まっており、競争力を強める好機を迎えている。

 「自然エネルギーは化石燃料や原子力にとって代われるわけではないが、価格が見合えばかなり伸ばせる可能性はある。高い石油を想定して、積極的に自然エネルギー開発に投資し、導入拡大をはかるべきではないか」と、エネルギー問題に詳しい経済同友会幹事の高坂節三氏は語る。

 まず、日本の自然エネルギーの導入目標を拡大し、必要な投資、技術開発を思い切って促進する。蓄積したノウハウを開発途上国、とりわけエネルギー需要が急速に拡大する中国やインドなどのアジア諸国に広げていく。それを日本のエネルギー戦略の柱のひとつとすべきだ。

■省エネ大国──技術輸出で地球規模の貢献を

 グラフのように、日本はロシアの19分の1、中国の8分の1、韓国の3分の1のエネルギー消費で同じ国内総生産を生み出すことができる。1973年の石油ショック以来、30年余りで37%の省エネを達成した結果だ。「省エネ分は、自分でエネルギーをまかなったのと同じようなもの。省エネは日本の強力な資源だ」と、経済産業研究所の田辺靖雄副所長は語る。

 経産省の新・国家エネルギー戦略は2030年までに少なくとも、さらに30%の省エネを目標に掲げている。30%で立ち止まらず、できる限り省エネを進めていきたい。

 省エネを加速するには新たな技術開発への投資拡大が求められる。だが、既存の技術の活用、ちょっとした努力でも効果を期待できる。

 日本のメーカーは通常の電球の5分の1ほどの電力消費ですむ省エネ電球を開発、販売している。値段は通常の電球の10倍ほどするが、電気代が大幅に安くなるため、1日に6時間ほど使うと半年余りで元はとれる。こうした電球は一例で、省エネ型の車、家電、住宅、IT機器などの普及をはかれば、どの国でも節約規模は大きくなる。

 環境省はアジア各国に省エネを促し、エネルギー自給率を高める協力計画を検討している。資源エネルギー庁は、省エネ技術をアジア諸国に移転する構想を進めている。

 アジアで省エネを進めることは世界のエネルギー需給を楽にする効果が大きいと考えられるが、省エネ度の低いロシアや米国への普及も大きな課題だろう。省エネという資源を輸出し、地球規模の環境エネルギー対策に貢献する戦略こそ、「Jブランド」(日本の強み)である。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

NY原油、終値136ドル台
                       2008年6月24日 日経
 【ニューヨーク=山下茂行】23日のニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)で原油先物相場は上昇し、WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)でこの日から期近となった8月物は前週末比1.38ドル高の1バレル136.74ドルで取引を終えた。22日に開かれた産油国・消費国の緊急閣僚会合で増産を表明したのがサウジアラビアだけだったことなどを受け、需給逼迫(ひっぱく)は今後も続くとの見方から一時、138.14ドルまで上げる場面があった。(11:50)


 < 過去  INDEX  未来 >


石田ふたみ