『日々の映像』

2008年06月08日(日)  居酒屋タクシー 今年の造語大賞になるだろう

 一昨日の「公費タクシーの金品受領、13省庁で502人」の日記に対してトコ (ttfuji)から次の書き込みがあった。

「あきれ果ててコメントのしようもありません。怒り心頭です。高級官僚になるとモラルも正常な判断もできなくなるのでしょうか。ワーキングプアや生きるのが精いっぱいの人が大勢いるという日本の現状のなか、自宅までのタクシー代23000円がどんな金額か、しかも何度も使いリベートまで受け取っている。すべて税金からという意識もないのでしょうね。退職金など支払わずやめさせるべきだと思います。」
 
 今日は主要新聞の見解を掲示するのみで終わりとしたい。補足する気力が生まれない。おそらく、「居酒屋タクシー」は今年の造語大賞になるだろう。

居酒屋タクシー―これで負担増を言えるか
                   2008年6月7日 朝日新聞
タクシー接待 “税金感覚”がないのか
2008年6月7日東京新聞社説
タクシー接待 この鈍感さにはあきれた
                     新潟日報6月7日 社説
社説:居酒屋タクシー 税金でいい思いは許されない
毎日新聞 2008年6月7日 
社説2 役人の余計な仕事こそ問題
2008年6月7日 日経

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居酒屋タクシー―これで負担増を言えるか
                   2008年6月7日 朝日新聞
 なんともあきれた役人の実態が、またしても明るみに出てきた。
 国民から税金を集め、それを無駄なく使うよう配分してチェックする。財政の番人である財務省や国税庁の役人たちが、深夜の帰宅用タクシーから様々な金品を得ていたのだ。
 運転手から少なくとも150万円の現金をもらっていた者が1人、金券が18人、ビールなどの物品は364人にのぼっていた。
 財務省以外でも12の省庁などで金品をもらっていたという。調査の途中なのでもっと増えるだろう。厳格に調査して公表しなくてはならない。
 これは、民主党の長妻昭衆院議員が全省庁に調査を求め発覚した。
 長妻氏らはこれまで、年金管理のずさんさや道路財源のムダづかいを暴いてきた。野党議員の求めで省庁が自らの不始末を調べて報告するとは、一昔前なら考えられなかったろう。「ねじれ国会」で野党の発言力が飛躍的に増した成果だ。これからも政府をしっかりとチェックしてほしい。
 それにしても、長年にわたりタクシーから金品やキックバックを得ていた神経はどうかしている。多くの者がなじみの運転手をつくり、携帯で呼び出して見返りを得ていたのではないか。なんとも情けない。料金以上の金額をタクシー券に記入して見返りを受ける悪質な例がないかについても、厳しく調べなければならない。
 タクシーが乗客へのサービスを競うのは結構なことだ。おしぼりやポケットティッシュなどをもらって気分がよかった読者も多かろう。
 しかし、役所のタクシー券は税金で払われる。私費ではない。金品のサービスを料金の割引へ回せば、経費を節約できる。そう考え、役所としてタクシー側と割引契約を結ぶのが筋ではないか。それをせずに個人が金品を受け取ってきたのは、明らかに一線を越えている。税金を懐へ入れていたといわれても仕方がない。
 財政再建が政府最大の課題になり経費節減が叫ばれてきたのに、役所の体質は一向に改まらない。各省庁での娯楽費の野放図な使い方をみても、役人は税金を自分のお金だと勘違いしているのではないか。これでは、真っ当に仕事をしている人まで国民から疑いの目で見られるようになる。
 高齢化により増える福祉費用の財源をどうやって確保するか。他の削れる予算を福祉へ回したうえで、国民にも新たな負担を求めなければならなくなるだろう。お年寄りの医療保険制度が問題になっており、時間はない。
 そもそも社会福祉の制度は、政府への信頼が基本になければ成り立たない。そうした仕事をこの政府と官僚は担っていけるのか。「居酒屋タクシー」はそのことを突き付けている。
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タクシー接待 “税金感覚”がないのか
2008年6月7日東京新聞社説
 財務省はじめ中央省庁の職員がタクシー運転手から金品などを受け取っていた問題は、あきれたとしか言いようがない。官僚の倫理観はどこへいったのか。厳正な処分と再発防止の徹底を求める。
 深夜の霞が関には、ずらりとタクシーの列ができる。ほとんどが個人営業の車だ。「役人は上客なんだろうな」と思っていたら、運転手が“接待”するほど「お得意さま」だったわけだ。
 財務省はタクシー運転手から現金や金券、ビールなどを受け取っていた職員が三百八十三人に上るという内部調査結果を発表した。町村信孝官房長官は国会で、問題の職員は環境、総務など計十三省庁・機関で五百二人に達したと明らかにした。今後の調査次第で、職員や関係省庁の数はさらに増えるだろう。
 中でも、財務省主計局の係長級職員は約五年間にわたって一回当たり二千−三千円の現金やクオカードを、年間百五十回にわたって受け取っていた。少なくとも総額百五十万円を超す金額になる。
 いうまでもなく、役人が深夜帰宅する際のタクシーチケット代は税金で賄われている。税金を使ったタクシー料金の見返りに現金を受け取ったのは、いわば「税金の割り戻し分」を自分のポケットに入れたようなものではないか。
 運転手が金品相当額を上乗せしたタクシー代を請求し、役人に払い戻していたなら、税金を横領した形になる。そうでなくても、国家公務員倫理法に触れる可能性がある不(ふ)明瞭(めいりょう)な行為であるのは、間違いない。関係省庁は徹底して事実関係を調べ、法に照らして厳正に処分すべきだ。
 とくに、財政再建のために、真っ先に予算の無駄や非効率を削らなければならない立場であるはずの財務省職員が大勢、かかわっていたのは深刻である。
 「ちょっとした役得」程度に考えたのかもしれないが、こんな甘い税金感覚だったとは、財政を担う官僚のプライドと気概はどうなったのか、と問わざるをえない。
 タクシー運転手が遠距離の上客を確保したい気持ちは分からなくはない。業界の激しい競争はよく知られている。だからといって、役人の特定客に“過剰サービス”しているのでは、一般客は納得しにくい。「それなら、初めから遠距離は割引せよ」という声も出るかもしれない。
 この際、監督官庁や業界はタクシー料金をめぐる実態や問題点の総点検も必要ではないか。

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タクシー接待 この鈍感さにはあきれた
                     新潟日報6月7日 社説
 霞が関のお役人の感覚はやはり世間とずれている。福田康夫首相がいくら「国民目線の行政を」と掛け声を発しても、これでは望み薄ではないか。
 公費でタクシーを使って深夜に帰宅する中央省庁の職員が、運転手から現金や商品券、ビールなどをもらっていた実態が明らかになった。該当職員は十三省庁五百人以上、回数にして一万二千回を超えるという。驚くべき数だ。
 中でも目を引くのは、財務省の多さである。三百八十人余りが接待を受けていた。このうち埼玉県北部に住む職員は、五年間で現金など二百万円相当の金品を提供されていた。
 深夜まで仕事に追われた職員がタクシーで帰り、その料金を公費で負担することまでは仕方がない。だが、そのことで接待を受けていたとなれば話は別だ。しかも範囲が広い。役人全体のモラルが疑われて当然だ。
 タクシー業界は競争が激しい。運転手には深夜の上得意客を何とかつなぎ留めておきたいという思いがあったろう。現金提供は行き過ぎだが、その心理は分からないでもない。
 だからこそ、利用する側がサービスを遠慮するべきだった。国民の税金を集め、それを使う公務員が、公金を元手に便宜供与を受けることに痛痒(つうよう)を感じない。問題の本質はここにある。鈍感にもほどがある。
 それにしてもカネをめぐる官の不祥事が後を絶たない。防衛省では前事務次官が装備品納入に便宜を図る見返りに業者からゴルフ接待を受け、現金をもらっていた。道路特定財源で職員用の電動マッサージチェアを購入していたケースがあった。根っこは同じだ。
 今後の年金財源をめぐって、消費税率引き上げ論議が本格化しそうだ。しかし、税金の大元締である財務省が接待タクシーの最大顧客では国民の理解は得られまい。社会保険庁の年金記録不備などにより、ただでさえ国民の反感は強まっている。
 タクシー接待問題を受け、福田首相は「当たり前のことをどうして守れないのか」と強く批判した。政府は職員の処分など厳正な対応を約束した。きちんと守ってほしい。
 政府には同時に役所の業務効率化にも手を付けてほしい。国会開会中は議員からの質問通告を深夜まで待つ。このため残業が急増する。財務省職員への接待が突出したのは、それだけ残業が多いせいだろう。
 夜遅くまで残業を強いられ、仕事一辺倒の生活しかできないのでは官僚の意識が世の中と遊離する。国民目線の政策立案など無理な注文だ。今回の問題はこうした現状を改善する好機だ。処分だけで済ませてはならない。]


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社説:居酒屋タクシー 税金でいい思いは許されない
毎日新聞 2008年6月7日 
 13の中央省庁・機関で500人余りが深夜タクシー利用に際して、商品券などを受け取ったり、ビールなど飲食の接待を受けていたことが明らかになった。中でも、財務省では、財務省本省、国税庁に在籍する2681人のうち、約15%にのぼる383人がタクシーの運転手から、何らかの金品を受け取っていた。そのうちの一人は現金だけでも187万円を受け取っていた。
 国の予算から支出される深夜帰宅などのタクシー利用で、運転手から供応を受けることは、公務員として許されることではない。こうした公務員倫理の緩みは許すわけにはいかない。政府は早急に税金が使われている全組織の実態を明らかにすべきである。
 今回、明るみに出た官僚が深夜に公費でまかなわれるタクシーチケットで乗車した際の接待問題は、三つの視点からとらえられる。
 第一は、公務員の間に、タクシー代金が税金で支払われるという認識が欠如していたのではないかということだ。行政は税金でまかなっているのであり、公費の支払いで対価を受け取ることは、犯罪行為といっていい。財務省は、同省がタクシー業界と利害関係がなく、国家公務員倫理規程で禁止されている行為には当たらないとの見解だが、納税者が納得できる説明ではない。
 そこで、公務員の金品授受には、より透明性の高いルールが必要である。公費が支払われる場合は利害関係のありなしにかかわらず、金品の受け取りは禁止しなければならない。
 第二は、10年前に接待汚職事件で当時の大臣、事務次官が引責辞任した財務省(旧大蔵省)の体質の問題である。利害関係がなければいいとか、1回あたりの金額が大きくなければ金品の供与は許されるというおごりや甘えの空気があるとすれば、深刻である。
 財務省は財政再建の実現に向け、歳出削減の先頭に立たなければならないが、これでは示しがつかない。今回の財務省調査でも予算編成を担当する主計局、税の徴収に当たる国税庁の職員の金品受け取りが多かったことは、影響が大きい。綱紀が緩んでいては財政再建はできない。
 第三は、中央省庁の職員の残業問題である。深夜のタクシー利用が多いのは国会への対応などで、勤務が深夜まで及ぶからだ。役人は日付が変わるまで仕事をするのが常識といった悪弊は変えなければならない。
 公務員制度改革と言う以上、こうした問題にも踏み込む必要がある。これは国会改革でもあるのだ。
 今後の調査に際しては、金品授受のみならず、タクシーチケットが適正に使われているかも十分、チェックしなければならない。
 財政再建が正念場を迎えているいま、公務員は身ぎれいでなければならない。
東京朝刊
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社説2 役人の余計な仕事こそ問題
2008年6月7日 日経
 財務省、総務省など中央官庁の役人たちが深夜帰宅で使ったタクシーの運転手から現金や商品券などを受け取っていた事実が判明した。かつての「接待漬け」当時に比べれば金額は少ないものの、公費で賄うタクシーの運転手から金品をもらうのは良いわけがない。

 綱紀粛正を徹底してほしいが、この際、不適切な行為の温床となった連夜のタクシー帰宅そのものを見直したらどうだろうか。財務省本省のタクシー代は国税庁分を含め2006年度で4億8000万円。少ない金額ではない。大勢が深夜まで働いている役所は残業代も膨大だ。

 そもそも中央官庁では世間一般の勤め人に比べて夜型の人が多い。職位にもよるが、深夜2時ごろ役所を出て、翌朝は10時ごろ席につく人が結構多い。この夜型の勤務を何とかできないものか。

 一つは明るいうちにさっさと仕事を片づける習慣を身に付けてもらうことだ。米国政府では午前6時ごろ出勤し、夕方の5時ごろ家路に就く役人も珍しくない。

 もう一つ、役人を夜型にしている原因に、翌日の国会で質問する議員から事前に質問内容を聞き、翌朝までに答えを用意する慣習がある。「大臣に恥をかかせないため」というが、実際は大臣が役人の敷いた路線を踏み外さないよう振り付ける狙いも大きい。

 この答弁の下書きのほか、様々な役所間調整や議員への根回しなどで時間を取られ、夜が遅くなる人も多い。役人がいまだに政治の中枢にいる証しだろう。

 閣僚はどんな質問にも役人に頼らず対応できるよう準備しておくべきだ。政策立案も役人任せでは困る。国会は閣僚の負担を減らすよう質疑で副大臣をもっと活用するとか、政策立案のため政策秘書制度を充実させる方法を考えてよい。役所に情報を独占させないで、日ごろから開示を徹底させておくことも重要だ。

 これらは政治を官僚の手から政治家へ移すうえでとても大事である。裏返せば、政治家主導への改革が不十分なため役人のタクシー帰宅が多いともいえる。役人には余計な仕事をさせず、早く電車で帰れるようにした方がよい。

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石田ふたみ