『日々の映像』

2008年04月02日(水)  首相としての指導力

 自民党寄りの新聞は「税の暫定税率が期限切れとなった。早くも一部のガソリンスタンドでは値下げが始まり、混乱の4月が幕を開けた」との書き出しになる。ガソリンの価額が下がっただけで「混乱の4月が幕を開けた」という必要がないと思う。

 以下の3社の社説を読むとまさに自民路線の応援団の感があり、庶民の目線が全く感じられない。自民は果たして再可決が出来るだろうか。25円下がったガソリンを再度値上げが出来るのか。朝日新聞の世論調査では、72%がガソリン税の下がることを歓迎している。

 福田首相は再可決が絶対の信念であれば、解散して国民に信を問うべきである。政治混乱の原点は福田首相に解散の勇気がないことだと思う。与党の勢力は2005年、小泉政権下の郵政解散によって得た議席だ。その後、安倍政権も福田政権も衆院選で国民の信を問うていないのだ。これでは首相としての指導力が発揮できるわけがない。




1、再可決して一般財源化の公約を果たせ
                     2008年4月1日 日経社説
2、「暫定」期限切れ 「再可決」をためらうな
                     2008年4月1日読売社説
3、4月混乱 まともな政治取り戻せ
                         2008年4月1日 産経社説
4、ねじれ国会 有権者が動かすほかない
                        2008年4月1日 毎日社説
5、立ちすくむ政治―この機能不全をどうする(引用省略)
                     2008年4月1日朝日社説

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社説1 再可決して一般財源化の公約を果たせ(4/1)
                   2008年4月1日 日経社説
 ガソリンにかかる揮発油税などの暫定税率が期限切れとなり、1日の出荷分からガソリンの税負担は1リットル当たり約25円下がる。道路関連以外の優遇措置の期限を5月末まで延長する「つなぎ法案」は成立し、最悪の事態だけは回避された。

 政府・与党は憲法の「60日みなし否決」ルールを適用して、今月末にも衆院で再可決し、税率を元に戻す方針だ。財政事情などを踏まえれば当然だろう。道路特定財源が温存されないように、福田康夫首相は自ら公約した2009年度からの一般財源化の方針を閣議などできちんと決める必要がある。

 首相は31日の記者会見で「政治のツケを国民に回す結果となったことを心よりおわび申し上げる」と述べ、期限切れを陳謝した。

 与野党は2日の参院本会議で揮発油税の暫定税率維持を盛った租税特別措置法改正案の趣旨説明を実施することで合意した。参院に法案が送られてから、1カ月も審議されなかった。参院の主導権を握る民主党の態度はあまりに無責任である。

 与党と民主党が法案修正で合意することが本来は望ましい。しかし暫定税率を巡る溝は大きく、進展は期待薄の状況だ。

 定例日にこだわらず、2日から精力的に審議を進め、参院の意思を早く示すことが重要である。そうすれば法案が否決されても、月末まで待たずに再可決する条件が整う。

 暫定税率が全廃されると国、地方を合わせ年間で2兆6000億円の穴があく。7月の主要国首脳会議(洞爺湖サミット)で環境問題が主要議題となるなかで、ガソリン消費を奨励するような暫定税率の撤廃は国際社会の理解も得られない。消費者の反発は避けられないが、政府・与党は再可決をためらってはならない。

 問題は、再可決されると政府案が無修正で成立し、道路特定財源がそのまま生き残ってしまうことだ。

 福田康夫首相は先の記者会見で特定財源の廃止を明言するとともに(1)10年間の道路中期計画を5年に短縮して見直す(2)与野党協議会を設置して一般財源の使途などを協議、決定する――などと表明した。

 自民党内には一般財源化に強い異論がある。首相は修正協議がまとまらなくても一般財源化を進める考えを示したが、再可決されれば自民党内で放置される恐れがある。

 私たちは環境対策の必要性などを挙げて、一般財源化を明言した首相の姿勢を評価してきた。党内の反対論を抑えて、一般財源化の道筋をつける仕事は首相にしかできない。

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「暫定」期限切れ 「再可決」をためらうな
                    2008年4月1日読売新聞社説
福田首相が、毅然(きぜん)とした政治姿勢を示すべき重大な局面である。
 ガソリン税など道路特定財源にかかわる暫定税率の期限が切れた。ガソリン価格は下がるが、財政に大きな穴が開く。混乱回避のため、政府は、できる限りの措置を講じなければならない。
 国民生活や地方財政の安定を図るには、暫定税率を早期に復活させる必要がある。
 ガソリンの暫定税率維持を含む税制関連法案は、4月29日以降、衆院の3分の2以上の賛成で再可決できる。首相はこれをためらうべきではない。
 与野党の修正協議が不調に終わるなら、憲法の定める民主主義のルールに従って法案を再可決、成立させる――。こうした政治的な意思をはっきりさせておくことが肝要だ。それが、混乱を最小限に抑えることにつながる。
 首相は、年度末の暫定税率期限切れを避けようと、大幅な修正案を示した。2009年度から道路特定財源制度を廃止し、一般財源化するというのが柱だ。
 だが、民主党は、08年度からの一般財源化を譲ろうとしない。大人げない態度だ。
 暫定税率も即時廃止と言う。だが、すでに予算は成立し、現在の国の財政事情を考えても、減税するのは困難だ。
 民主党は、一般財源化を最優先させて修正協議に入り、一般財源化した後の使途などについて、与党と話し合ってはどうか。
 税制法案は、参院に送られてから1か月も棚ざらしにされた。異常なことだ。ようやく審議入りで合意したが、これ以上、審議の引き延ばしはあってはなるまい。
 いったん下げられたガソリン価格を元の価格に戻す、つまり、「値上げ」は、政治的には難しいとの議論がある。
 だが、暫定税率の失効を1年間放置すれば、2兆6000億円という大幅な税収減になる。そのツケは、いずれ国民に回る。
 福田首相は、税制法案の再可決が不可欠であることを、国民に繰り返し説明してもらいたい。
 民主党は、与党が法案を再可決した場合、首相に対する問責決議案を参院に提出し、政権を追いつめる構えだ。しかし、問責決議案は、憲法や国会法をはじめ法的な根拠はどこにもない。
 首相の修正案は、自民党内の慎重論を押し切っての「政治決断」だった。国民への約束になった修正内容の実行でも、そうした指導力をみせてほしい。

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4月混乱 まともな政治取り戻せ
2008年4月1日 産経新聞社説
 ■事態収拾に再議決が必要だ
 与野党対立のまま、ついに揮発油(ガソリン)税の暫定税率が期限切れとなった。早くも一部のガソリンスタンドでは値下げが始まり、混乱の4月が幕を開けた。
 それだけではない。今月中旬には世界的な金融動乱をテーマとする先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)がワシントンで開かれるのに、日銀総裁は依然として空席である。
 このままでは極度に悪化した財政の中で、国・地方合わせて2・6兆円の歳入不足が生じる。金融動乱で東京市場の混乱が続き、景気減速懸念が出ているのに、金融政策も円滑に運べないだろう。
 ≪責任の多くは民主党に≫
 日本の浮沈がかかる局面で財政、金融という経済運営の根本政策が機能不全に陥ることは許されるはずがあるまい。福田康夫首相が衆院での再議決が可能になる今月末に、暫定税率維持を含む歳入関連法案を成立させるのは、国民生活の混乱を最小限に食い止める上で当然である。
 日銀総裁の空席も一刻も早く解消しなければならない。
 重要な政策決定がまったくできない異常事態を招いた原因は、ねじれ国会下の不毛な与野党対立で陥った政治の機能不全にある。その責めを負うべきは、理念なき政局至上主義の小沢一郎代表率いる民主党である。
 首相は道路特定財源問題で今年度予算は暫定税率を含む政府・与党案でいくが、来年度は民主党のいう全額一般財源化すると提案した。暫定税率についても、財政状況や環境問題などへの対応も含め今秋の税制抜本改革の中で論議するよう与野党協議を求めた。
 ガソリン価格の乱高下や歳入不足を回避し改革理念を実現するには、これ以外の現実的選択肢はなかった。民主党は歳入不足のまともな対応策も示さず暫定税率廃止にこだわった。政府・与党の再議決による再値上げという混乱拡大を狙ったとしか考えられない。
 日銀総裁人事もしかりだ。財務省出身の武藤敏郎前副総裁の昇格などを拒否したのは、「財金分離」に反し日銀の独立性が侵されるとの理由だった。だが、先進各国では財務省経験者の中央銀行総裁は山ほどいる。
 中央銀行の独立性ももともと政治からのそれを意味する。自らの政治介入で独立性を奪った矛盾に気付かないような政治の劣化が続くと、日本経済は間違いなく世界の流れから取り残されよう。
 ≪議員は傍観者になるな≫
 国政の混乱の主たる責任は、二大政党のトップである福田首相と小沢代表に帰するとしても、衆参両院で722人に上る国会議員は、この半年あまり、一体何をしてきたのか。
 とくに民主党は参院での数の力を背景に、定例日以外の審議は拒否するという日程闘争によって政治空白を生み出す姿勢を顕著にした。参院で衆院から送付された歳入関連法案を1カ月以上も放置したことには、同じ野党の共産党が異論を唱えたほどである。
 この政局至上主義からの転換を民主党内で求める動きはほとんどない。小沢代表と距離を置く勢力からも、強い異論は出てこない。国政の危機を目の当たりにしながら、傍観者のような振る舞いでよいのか。
 民主党の出方を見極める難しさはあったとしても、政策遂行が相次いで行き詰まりをみせたのは、与党の対応のまずさや出遅れによる。野党の賛同が見込まれない法案や人事案件を取り扱う場合、ねじれ現象に陥る以前の発想から抜け切れていないのではないか。
 首相は小沢代表に党首会談を呼びかけても「門前払い」されているという。政策遂行に必要なら、今後もことあるごとに申し入れるべきだ。それでも相手が拒否するなら、国政上の責任を放棄したとみなすしかあるまい。
 19年度中の国会承認が必要だった在日米軍駐留経費の日本側負担(思いやり予算)を延長する新特別協定も、承認の遅れにより、空白が生じる。インド洋上での海上自衛隊の補給活動の中断と同じく、日米同盟の信頼性が傷付く事態が繰り返される。
 もとより、政策協議や修正合意を経た政策の実現が望ましい。それが無理な場合、憲法に明記された衆院再議決を躊躇(ちゅうちょ)しないことが、政権を担う自民、公明両党の責任ある対応である。首相の指導力と説明責任が求められる。
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社説:ねじれ国会 有権者が動かすほかない
2008年4月1日 毎日新聞社説
 混乱の4月が始まった。ガソリン税の暫定税率は結局、期限切れを迎えた。1月末、衆参両院議長のあっせんにより、与野党が年度内に出すとしていた「一定の結論」とはこんな事態だったのか。私たちは再三、与野党に歩み寄りを求めてきたが、極めて残念だ。
 既にガソリンの販売現場では混乱が始まっている。歳入欠陥が生じる地方自治体も対応に追われている。福田康夫首相は31日、明言は避けたものの、いずれ与党が3分の2以上を占める衆院で再可決を目指すとみられる。だが、野党の反発は確実だ。福田政権が深刻な状況に追い込まれる可能性もあろう。
 「政治のツケを国民に回す結果となった」と首相が陳謝したように、ここに至った責任は第一に政府・与党側にある。
 首相が先週、道路特定財源を09年度から廃止して一般財源化する方針を表明したのは評価する。ただ、いかにも時期が遅過ぎた。新年度予算の衆院審議段階で与党から修正方針を示すべきだったにもかかわらず、当初は「民主党が先に修正案を」と求めるのみで、まるで人任せだった。
 ◇大連立の後遺症
 民主党もやはり、期限切れにさせることが最大の目標だったのだろう。首相に一般財源化を決断させたのは道路特定財源の無駄遣いを次々と暴いた民主党など野党の功績であり、ねじれ国会の成果でもある。党内にも「一般財源化こそ本質」との声はある。だが、衆院選をにらんでガソリン値下げこそがアピールすると判断し、暫定税率の協議は一切受け付けなかった。
 実際、与党内にも衆院で再可決して税率を戻すためには相当の覚悟がいるとの声がある。野党側は再可決の場合、参院で首相に対する問責決議案を提出する構えでいる。
 少なくとも首相は一般財源化方針を自民党として決定する手続きを急ぎ、法案作りを進めるなど具体的な作業に入るべきだ。また、今後、環境税や炭素税に衣替えするとしても、なぜ、今の税率水準が必要か、どうしてそれが地球環境対策になるのか、きちんと説明しなくてはならない。それができなければ国民は再可決に納得しないだろう。
 それにしてもだ。空席が続く日銀総裁人事を含め、国会はなぜ、ここまで機能不全状況に陥ってしまったのか。
 間違いの始まりは昨秋の唐突な大連立構想だった。
 衆参のねじれを打開するには、政府・与党が謙虚に野党の理解を得る努力をしなければならない。だが、首相は大連立に安易に飛びつき、失敗した後も民主党の小沢一郎代表が何とか同党をまとめてくれると淡い期待を抱き続けた。
 小沢氏も大連立で党内の猛反対を受け、求心力を失った。両党首が会談しても局面を動かしようがないのが実態なのだ。
 もう一つの要因は、福田首相が衆院解散・総選挙をひたすら回避しているからである。表向きの対決姿勢とは裏腹に与野党に緊張感があるようには見えない。だれも責任を取らず、逆に責任のなすり合いに終始しているのは、「首相は解散できず、当分、衆院選はない」とたかをくくっているからであろう。
 今のような対立が続けば国民の痛みも伴う社会保障政策の改革などは先送りされるだけだろう。与野党が「大事なことは決められない国会」から抜け出せないのなら有権者が動かすほかない。衆院選でどちらの主張、政策が妥当なのか、有権者が判断するのだ。
 衆院解散・総選挙に対しては与野党通じて「選挙をしても今以上に混迷する」との見方がある。自民・公明両党は衆院で現勢力を確保するのは困難で再可決もできなくなる。一方の民主党も過半数を取れない可能性が高いというわけだ。
 ◇真の政権選択に
 しかし、そもそも今の与党の勢力は05年、小泉政権下の郵政解散によって得た議席だ。その後、安倍政権も福田政権も衆院選で国民の信を問うていないのだ。
 民主党が過半数を制し民主党政権となれば基本的に衆参のねじれは解消する。よって政権担当能力が一段と問われる選挙となる。
 一方、与党も過半数を取れば、選挙に勝利し、直近の民意の支持を得たことになる。野党は参院で審議のあり方を変えざるを得なくなるだろう。そうした位置づけの衆院選となる。
 もちろん、当面はガソリン税の暫定税率期限切れに伴う混乱をいかに最小限にとどめるかが先だ。7月の北海道洞爺湖サミットなど外交日程への配慮もあってしかるべきだ。
 各党とも選挙で問うべき肝心のマニフェスト作りも進んではいない。ガソリン問題だけでなく、年金や医療、教育、安全保障問題などテーマはたくさんある。各党がより具体的に公約を掲げるため、一定の準備期間も必要と考える。
 いずれにしても、次の衆院選は本格的な政権選択選挙となる。首相は解散から逃げないことだ。党や議員のためではない。国民のために政治を次のステップに進めるには、その決意が必要である。


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石田ふたみ