『日々の映像』

2008年02月15日(金)  認知症と高齢者虐待

 高齢者福祉情報になんかも高齢者虐待の関する記述をした。高齢者福祉情報の書き込みで今でも記憶に鮮明に残っている内容がある。長期にわたり海外生活をして人の一言である「こんなに高齢者を粗末に扱う国民は世界中どこにもない」という言葉であった。そもそも高齢者を虐待してはいけませんという高齢者虐待防止法が制定されることは、恥ずかしいことなのである。

 東京都西東京市で父親(85)と同居していた長女(43)が、全国で初めて 高齢者虐待防止法に基づく立ち入り調査を拒否したとして、同法違反容疑で逮捕された。高齢化が進めば、虐待の事例は増えることは必至である。高齢者福祉用法に書いたが、虐待を受ける高齢者の8割が認知症なのである。

 生涯青春の会を立ち上げ他2005年5月認知症患者は150万人であった。この時で、1年に認知症患者が10万人増加すると予測されていた。現在の統計では170万人となっており、おおよそ1年で10万人のペースで増加している。あと15年余りで、認知症患者は320万人になるとされている。認知症患者の問題は、これを支える若い世代の問題なのである。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
高齢者虐待
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

1、高齢者虐待(こうれいしゃぎゃくたい, Elder abuse)とは、家庭内や施設内での高齢者に対する虐待行為である。
虐待の分類
この行為では、高齢者の基本的人権を侵害・蹂躙し、心や身体に深い傷を負わせるようなもので、次のような種類がある。
身体的虐待
殴る、蹴る、つねるなどで、裂傷や打撲などの跡を残すことがある。本人の意に反し手足を縛る身体的拘束もある。
性的虐待
性的な暴力(高齢者夫婦間でのドメスティックバイオレンス-DVも含む)。
心理的虐待
脅迫や侮辱などの言葉による暴力、恫喝、侮蔑。
ネグレクト(介護や世話の放棄)
生活に必要な介護の拒否、意図的な怠慢、必要な医療や食事、衣類や暖房の提供をしない、病気の放置など、生活上の不合理な制限、戸外への締め出し。
経済的虐待
年金・預貯金・財産を横取りされたり、不正に使用されたり、売却されること。
その他
以上のほかに「自虐」という分類を加える研究もある。また、「家庭内」「施設内」など、場所による分類もある。

2、特徴と課題
児童虐待に比べて高齢者はメディアでの報道は少ないが、潜在的なケースはかなりの件数に上ると推定される。その背景には、子息および孫などの家族と同居している高齢者が多く、虐待する側もされる側も虐待の事実を隠す傾向が強いことが原因となっている。また慢性化した虐待の場合、当人が何も反応しなくなる事もあり、他方高齢者の肉体・精神に固有の加齢に伴う普遍的な変化もあって、露見し難い・当事者が言い逃れし易いという問題も見られる。
こうした虐待を発見するには、高齢者本人のごく自然な行為に対する極度のおびえや、立ったり座ったりという普通の日常的な生活動作での不具合、局部にかゆみのようなものを訴えるなどといったことに注意する必要があり、保健師、介護支援専門員、ホームヘルパーなどによる発見が期待されるが、発見後の虐待を行う家族への介入は非常に難しいという現状がある。
なお、2006年4月、高齢者虐待防止法が施行され、高齢者虐待防止に関する行政や国民の責務が定められた。

3、 認知症と高齢者虐待
要介護高齢者が増加するにつれ、虐待も増加していると言われている。かつては医療機関や老人介護施設における認知症患者に対しての「身体拘束」などの行為が日常的に見られたが、徘徊防止と称してのベッドに縛り付ける行為が、本人の尊厳を損なうのみならず、認知症が悪化し、日常生活に支障をきたす原因となっていた。 特に軽度の認知症患者では、日常生活においては、周囲の支援によりあまり問題なく生活できる場合があるが、契約や物の貸し借りといった事を忘れてしまいがちになる事から、これを悪用して財産を巻き上げたり、虐待の事実を隠蔽するケースは後を断たない。 近年ではこれら徘徊に対する拘束が、高齢者自身の健康を損ない、また人権侵害であるという考えが広まり、拘束が行われない方向での看護方針の改善が進んでいる。一例を挙げれば、高齢者に常時位置を知らせるPHSや電波発信機を携帯してもらい、所在地を確認できる様にする等である。他方、老人看護施設では、徘徊傾向のある高齢者が施設外に出掛けるのを禁止する所もあり、一種の軟禁状態にあるという問題もあるが、近年の老人看護施設では、施設内で大抵の用事が済ませられるよう、設備拡充を図るケースも見られ、どの程度に管理するかという点を含め、様々な改良が進められている。

4、法整備による保護の状況
日本では2000年に法改正された成年後見制度により、高齢者の法的保護が図られるほか、2006年には高齢者虐待防止法が制定され、虐待の「おそれがある」と思われる段階で、地域包括支援センターへの通報



高齢者への虐待 防止体制遅れ
2008年1月30日(水)沖縄新聞
二〇〇六年度に施行された高齢者虐待防止法で、市町村による虐待防止のための体制整備や周知活動の取り組みが遅れている。県の調査では、厚生労働省が求める多くの項目で、〇六年度は全国平均の半分以下、〇七年度中の実施予定を含めても6―8ポイント下回った。県は周知徹底が課題とし、〇八年度も啓発を強化する方針。二十九日、県総合福祉センターで開かれた県地域包括・在宅介護支援センター協議会「高齢者虐待防止セミナー」で、県が公表した。(嘉数浩二)
 〇六年度末時点の市町村回答では、八割以上の市町村が虐待防止に関する対応窓口を設置しているものの、住民へ周知しているのは43・9%(全国平均67%)、居宅介護事業者への法の周知も29・3%(同51・7%)だった。
 被虐待者の一時避難など居室確保で関係機関と調整しているのは7・3%(同39・9%)、警察担当者との協議設置は12・2%(同32・1%)だった。
 また、成年後見制度で、家族や親族が後見人になれない場合に市区町村長へ代行申し立てをする体制があるのは二自治体、県全体の4・9%(同50・4%)にとどまった。
 逆に対応窓口の設置や住民への周知に「取り組む予定なし」と回答した自治体の割合は全国の三倍に上った。
 県福祉保健部担当課は(1)広報啓発の強化(2)連携体制の整備(3)人材の確保―を課題に挙げ、〇八年度新規事業として関係機関代表による虐待防止推進会議の設置や市町村に専門職を派遣する方針。
 セミナーでは、那覇市地域包括支援センターのネットワークづくりと、本部町在宅介護支援センターの地域力を活用した高齢者世帯の実態把握の取り組みが紹介された。

-――――――――――――――――――――――――――――――――――
高齢者虐待、どう防ぐ 『個々の対応』悩む自治体
2008年1月30日東京新聞
 
十八日、高齢者虐待防止法(一昨年四月施行)に基づく立ち入り調査を拒否したとして、東京都西東京市で父親(85)と同居していた長女(43)が、全国で初めて同法違反容疑で逮捕された。立ち入り調査権がある同法の効果が出た形だが、調査権行使の判断に迷う自治体の実情も浮き彫りになった。 (広川一人)
 逮捕された長女は父親と二人暮らし。門扉から玄関先まで、長女が野良猫に与えたえさの空き缶で埋め尽くされ、近所から悪臭などの苦情が出ていた。
 東京都外に住む長女の弟が何度か、合鍵で家に入り乱雑な室内を掃除していたが、数年前に長女が玄関の鍵を替え、家の中に入れなくなっていた。
 二〇〇六年から市と地域包括支援センターは年に二回、弟に同行する形で、父親に介護保険を受けさせるよう長女を説得してきたが、拒まれてきた。家に入れてもらえない弟が、長女と窓越しに口論していると、様子を見に顔を出す父親。「これが唯一の父親の安否確認手段」(同市担当者)だった。
 状況が変わったのは、今月四日。年始に来た弟らの前に父親は姿を現さなかった。
 「十二月から言い争う声がしない」「ごみに紙おむつがなくなった」という情報も入り、父親の安否に不安を抱いた市は十八日、田無署立ち会いで、高齢者虐待防止法に基づく立ち入り調査を実施。長女は検査を拒否し、強引に玄関を閉めようとしたため同法違反(正当な理由なく調査を妨害)の現行犯で逮捕された。
 保護された父親に健康上の問題はなかった。現在市内の病院に入院中で「要介護2相当。医師によると軽い認知症もある」(福祉関係者)という。
 高齢者虐待防止法は、「高齢者の生命又は身体に重大な危険が生じているおそれがある場合」自治体に立ち入り調査を認めている。今回のケースは、住環境が劣悪で、典型的な介護放棄に該当。怒声を浴びせるなど心理的虐待の疑いも濃厚だったが、「立ち入り調査が必要か、判断が難しかった」と同市担当者。「逮捕までいかず、(長女との)話し合いで解決できればよかった」と悔やむ。
 一方、「年二回の安否確認は少ない」(同署)と市側を非難する声も。近隣三市の事例研究会では「面会を拒絶される状況で、やむを得ない対応と判断された」(同市担当者)という。
 行政権限の行使に踏み込めない自治体は少なくない。医療経済研究機構が千九十六市区町村に行った調査では、今回の事件のように被虐待者と養護者の関係が共依存の場合「対応が大変困難」とする回答が73%を占めた。
 家庭のプライバシーの問題もあり、同法の「重大な危険」の判断が難しいからだ。厚生労働省も「各自治体の判断に任せている」(認知症・虐待防止法推進室)と突き放す。同省が留意点をまとめた〇六年四月の資料も、安全を優先する迅速な対応を求める一方「時間をかけた対応が必要となることもある」と、あいまいな言い回しだ。
 西東京市は弟と話し合い、今後、父親を長女から引き離し、市の老人保健施設などに入居させる考えだ。しかし父親の意向を確認する必要があり、引き離しがスムーズに進むかどうか分からない。
 同市担当者は「高齢化が進めば、虐待の事例は増えるが、個々の事情は異なり、マニュアル化した対応は難しい。市として地域のネットワークづくりを進めている。虐待の情報が集まりやすくなれば、早期対応が可能になる」と話している。

 < 過去  INDEX  未来 >


石田ふたみ