『日々の映像』

2008年02月05日(火)  殺人ギョーザの波紋どこまで広がる

 私はここで何回も中国の野菜及び野菜を中心として加工品の輸出に反対の記述をしてきた。十数年前、有名なレスター・ブラウン氏が「だれが中国を養うか」と長文のリポートを発表した。その根拠は、中国全体としては水不足の国なのである。レスター・ブラウン氏は将来「誰が中国人民を養うのか」という問題提起をしている。

 水不足が原因で、早晩中国は食料の輸入国になるとの視点に立っているのだ。中国の首都北京の砂漠化を懸念するリポートに接する機会が何回もあった。野菜及び野菜を中心とした加工品の輸出は「水」を輸出していることなのである。
「水」を輸出するより、首都の砂漠化を防ぐために「水」を使うべきでないか。

 繰り返すが中国は、12億人国民に食料を供給するだけでも立派なことなのである。あえて、食料を輸出して国際的な信用を落とすまでもないと思う。

 夕刊フジの報道の一部を引用しよう。
1、北京五輪に暗雲が立ちこめてきた。中国が開催の絶対条件として国際社会に約束した「食の安全」が“殺人ギョーザ”事件で大きく揺らいでいるからだ。
2、“殺人ギョーザ”事件が発生しており、中国当局が受けた衝撃は図りしれない。
3、米国では、ヒラリー・クリントン、オバマ両民主党候補がともに中国製品の安全性を批判したこともあり、ギョーザ事件を契機に米世論が一気にチャイナフリー(非中国産)に大きく傾く可能性がある。
4、国際社会からギョーザ問題の解決を突き付けられており、「解くにも解けない矛盾を抱えた、まさに内憂外患だ」と指摘する。胡政権は発足以来、最大の危機を迎えているわけだ。
5、その他省略

殺人ギョーザ”で北京五輪重大危機…開催危ぶむ声も
2008/2/2 夕刊フジ
毒ギョーザ”観光業界追い打ち…五輪特需に冷や水
2008/2/2 夕刊フジ

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殺人ギョーザ”で北京五輪重大危機…開催危ぶむ声も
2008/2/2 17:01  夕刊フジ

 北京五輪に暗雲が立ちこめてきた。中国が開催の絶対条件として国際社会に約束した「食の安全」が“殺人ギョーザ”事件で大きく揺らいでいるからだ。被害者が1000人を突破した日本だけでなく、米韓まで非難を強めている。中国発の新型インフルエンザの世界的流行まで懸念されており、8月の五輪開催に重大な危機が迫る。

 中国は国家の威信をかけ、北京五輪を成功させようとしている。北京市内にあるメーン会場「国家体育場」(通称・鳥の巣)でも、8月の開会式に向け、急ピッチで建設作業を進めている。

 その矢先に、“殺人ギョーザ”事件が発生しており、中国当局が受けた衝撃も図りしれない。

 無理もない。中国の食の安全を統括する国家品質監督検査検疫総局の魏伝忠副局長(当時)は昨年10月、本紙などの取材に対し、「食品に関する非常に厳しい基準と監視システムを設けた。万一、問題が発生してもどこに原因があるか追及できるシステムを構築した」と胸を張っていたほどだった。

 ペットフードや練り歯磨き、養殖魚など中国産の有害物混入が相次ぎ、五輪への不安が世界に広がったのを受け、中国は食品の安全管理体制を大急ぎで整備してきた。

 「確かに、零細な食品工場もあるが、五輪ではHACCP(国際的衛生管理基準)を取得した優良企業だけが選手や観光客に食べ物を提供する。日本の皆さんに安心して五輪に来てとお伝えください」。魏副局長はこういって笑みさえ浮かべていた。

 だが、問題の“殺人ギョーザ”を製造した「天洋食品」がまさにHACCPを取得した代表的な優良企業。総局幹部が「模範」としてPRするため、わざわざ視察先に選んでいた工場でもあったのだ。

 事態を重く見た中国政府は即座に捜査当局の介入を決め、「工場で毒物は検出されなかった」との結果を発表、異例の早さで動いた。だが、原因は不明なままだ。

 中国に詳しいジャーナリスト、富坂聰氏は「当局の落としどころとしては『証拠がない以上、努力したが、原因が分からなかった』と迷宮入りにするか、時間がたってから『一従業員による個人的仕業だった』と持っていくしかないのではないか」と推察する。

 だが、そんな悠長なことを言ってられない国際環境が中国を取り巻く。 被害が拡大の一途となっている日本では、世論の声に後押しされるように舛添要一厚生労働相が、輸入禁止措置を定めた食品衛生法第8条の発動に言及している。

 大統領選まっただ中の米国では、ヒラリー・クリントン、オバマ両民主党候補がともに中国製品の安全性を批判したこともあり、ギョーザ事件を契機に米世論が一気にチャイナフリー(非中国産)に大きく傾く可能性がある。

 韓国でもギョーザ事件は大きく報道され、中国批判が強まっている。2005年に中国産キムチから寄生虫の卵が見つかり、韓国では批判が噴出した。今年になって、ようやく中韓間の輸出入が正常化した経緯があり、今や「日米韓という包囲網が布かれ、中国が追い詰められた状況」(富坂氏)なのだ。

 だが、中国政府はギョーザ事件だけにかかわってはいられない深刻な問題を抱えている。史上まれにみる大寒波の襲来である。

 現地報道によると、中国人が故郷を目指して民族大移動する春節(旧正月)直前にもかかわらず、中南部では半世紀ぶりの大雪に見舞われた。多くの地域が長期の停電に見舞われ、南北を結ぶ交通は完全にマヒしてしまった。

 政府は解放軍20万人を救助に動員する非常事態に入り、胡錦涛国家主席らが被災地入りし、「災害克服に向け、全中国が団結するとき」と呼び掛けざるを得ない状況に追い込まれている。

 広東省の広州駅では約50万人が足止めされ、飲まず食わずで排便を垂れ流すしかない惨状。温家宝首相が駅の1つに駆け付け、拡声器で「もう少しの我慢を!」となだめる場面もみられた。14日間も封鎖されたままの高速道では車内に閉じこめられ、多数の凍死者が出ているとも伝えられる。

 富坂氏は「胡錦涛政権にとって当事者能力が問われる最大の試練で、正月過ぎには温かくなってくれないと危機的状況に陥る」とみる。

 だが、天災を乗り越えてもなお、国際社会からギョーザ問題の解決を突き付けられており、「解くにも解けない矛盾を抱えた、まさに内憂外患だ」と指摘する。胡政権は発足以来、最大の危機を迎えているわけだ。

 さらに五輪開催に向け各国の専門家が憂慮するのが中国からの新型インフルエンザの大流行だ。人は新型ウイルスへの免疫を持っていないため、感染すれば死亡する確率が高く、豪州の研究機関は最悪の場合、中国だけで約2800万人が死亡すると試算している。

 「新型インフルエンザの流行が起きれば、ほかの対応どころではなくなり、五輪自体が吹っ飛んでしまう恐れすらある」。富坂氏はこう警告している。
2008/2/2 17:01 更新
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毒ギョーザ”観光業界追い打ち…五輪特需に冷や水
2008/2/2 夕刊フジ
 一向にやまない“殺人ギョーザ”騒動に、観光業界も戦々恐々だ。8月の北京五輪を前に、新年度の中国ツアーの特需をアテにしていた営業担当者にとっては、予期せぬ冷や水を浴びせられた格好。ツアー申し込み客から食事の心配をする声が多く寄せられる中、「レストランやホテルで提供される食材の仕入れ先まで、一つ一つチェックできるわけがない」と頭を抱えている。

 「五輪前に大変なことをしてくれた。初めて中国を訪れるお客さまは何を信用したらいいのか、ますます不安になる。観光客は結局、老舗や旅行社紹介のレストランに頼るしかない。北京の外食関係者はみな危機感を抱いています」

 長年、中国への業務渡航を専門に取り扱う旅行会社社長は、こう憤る。

 旅行客の中国の食への不信感は、昨年来急速に高まっており、五輪効果でやっと収束してきたところ。それだけに、関係者の衝撃は大きい。

 この数年、北京ダックなどが観光客に人気のレストランが相次いで地方進出し、現地の業界関係者の間では食材への不安が渦巻いていたという。

 「これは中国全土の問題。名のあるレストランなら大丈夫、と言い切れない。SARS(新型肺炎)問題以降、レストランはもちろん、市中の屋台もきれいになりつつあり、衛生面の改善は進んでも、食材の農薬汚染はそれ以前の問題。ツアーで利用する食事場所は注意して選びますが、それも過去の評判や病気が出ていないかなどの情報だけで信頼しているだけ」(先の社長)

 実際にダメージも起きている。元JTB北京事務所長で大阪観光大教授の鈴木勝氏(62)は次のように解説する。

 「昨年の段ボール肉まん騒動以降、増え続けていた中国への旅行者数が減少しています。今回の騒動はさらに足を引っ張るでしょう。北京五輪チケットの外国人割り当ては極端に少ない。旅行会社は入手に苦労し、担当者が頭を悩ませていただけに、春までにツアーが出そろうかは微妙です」

 最低でも年に1度は中国に赴く鈴木教授だが、初めて訪れるレストランでは必ず外から中の様子を見て現地の人の出入りが多いことを確認。屋台は絶対に利用せず、厨房(ちゅうぼう)の衛生や食材の管理状況も厳しくチェックする。

 「ギョーザなら大丈夫だと思っていたがダメでした。ここまでくると、一般の方では、もはや注意のしようもない。五輪前は、当局も相当神経をとがらせ、北京の外国人向けレストランの食材監視も徹底するでしょう。逆にいえば、北京以外の都市での食事が要注意。旅行会社は中国各都市を組み合わせたツアーを用意しますが、地方では見知らぬレストランには行かない方が賢明です」

 鈴木教授が北京駐在当時(1989−93年)には、食あたりのつもりがC型肝炎にまで発展してしまったツアー客もいたという。

 中国ツアーは「食文化」が最大の魅力。“殺人ギョーザ”が観光業界に落とした陰は、あまりにも大きい。


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石田ふたみ