『日々の映像』

2007年09月13日(木) 飲酒運転 酒を勧めても同乗しても懲役刑

(9月12日付・読売社説)
 
今度こそ、飲酒運転に甘い風潮を断つべきだ。

 改正道路交通法が19日から施行され、飲酒運転に対する罰則の内容が大幅に変わる。

 運転者に酒を勧めること、酒を飲んだ人に車を貸すこと、飲酒運転の車に同乗すること――は悪質な行為だと明確に規定され、新たに罰則が設けられた。運転者はもちろん悪いが、飲酒運転を許容した側の責任も大きい。そんな考え方への転換でもある。

 しかも、こうした周囲の人の行為に科せられる罰則は、決して軽くはない。運転者に対しては、酒酔い運転は懲役が最高3年から5年に、酒気帯び運転は1年から3年にと厳罰化されるが、車や酒の提供者、同乗者の罪も、最高で2年から5年の懲役刑となる。

 車を運転する人に「一杯ぐらいは」と安易な気持ちで酒を出し、酒を飲んだ人に「車で送ってほしい」と頼むことは、もはや通らない。家庭や飲食店で、企業などの宴会の場で、それぞれの人が肝に銘じなければならない。

 福岡市で昨年8月、一家5人の乗った車が同市職員の車に追突され、3児が死亡した事故が、改正の契機となった。市職員は事故前、居酒屋などで友人らと約4時間にもわたり酒を飲んでいた。

 市職員は懲戒免職となり、危険運転致死傷罪とひき逃げの罪に問われて公判中だ。本人の無自覚さにはあきれるばかりだが、友人や飲食店主らが注意すれば、事故を防げた可能性もあった。

 この事故後、飲酒運転の車に同乗しても懲戒免職とするなど、内部規定を見直す自治体が相次いだ。警察庁も「飲酒運転を絶対にしない、させない」をスローガンに、酒類の販売業者や運送業界などに協力を要請している。

 飲酒運転による死亡事故も、今年は7月末現在257件で、昨年同期より162件も減少した。10年前の35%の水準だ。飲酒運転への批判が高まり、自戒した人が増えた結果だろうが、それでもまだ、根絶にはほど遠い状況だ。

 兵庫県尼崎市では今年6月、約15時間にわたって酒を飲んだ男の車が、タクシーに正面衝突するなどで3人を死亡させる事故があった。懲りない運転者が絶えない。改正法の施行を機に、飲酒運転は悪だとの意識を、社会全体に一層徹底させていかなければならない。

 アルコール依存症など、飲酒運転の常習者対策も今後の検討課題だ。米国では飲酒運転の違反者に、酒気を検知するとエンジンがかからなくなる装置の装備を義務づけている。こうした技術面からの飲酒運転対策も進めてもらいたい。

(2007年9月12日1時37分 読売新聞)

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石田ふたみ