| 2006年10月28日(土) |
米:急増する風力エネルギー需要 |
日々の映像で10回ほどレスター・R・ブラウンのリポートを引用させてもらった。今後は月2回余りのペースで掲載させてもらう計画である。今回はアメリカで急増している風力エネルギー需要を引用する。なにしろ、「風力発電コストも、1980年代初頭に1キロワット時あたり38セントだったものが今では4セント(4.2円)から6セント(6.3円)まで下がっている。その結果、安価なエネルギーがほとんど無限に供給されるようになったのである。原発に固守する日本のエネルギー政策は可笑しいと思う。以下は主要部分の引用である。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 通常電力を下回る発電コストが米国を再生可能なエネルギー社会に変える http://www.earthpolicy.org/Updates/2006/Update52.htm レスター・R・ブラウン
テキサス州オースティンの電力供給公社オースティンエナジーが、2000年にグリーンチョイス・プログラム(訳注:自然エネルギーで発電した、環境に優しい電力を選んで購入できる制度)を導入した当時、グリーン電力を選択した顧客は、通常より高い料金を支払うことになった。
しかし2005年秋になると、天然ガス価格が高騰を続け、その影響で通常の発電コストは、主要なグリーン電力である風力による発電コストを上回ることになった。こうした価格の逆転現象はオースティンに限ったことではなく、他の地域でも見受けられた。まさにこのことが米国が再生可能なネルギー社会へと動き出すきっかけを作ったのである。
オースティンエナジーは、風力発電による電力を調達するに当たって、10年間価格は固定するという契約を結び、グリーンチョイスの顧客に安定した価格で電力を供給している。このように料金の安定していることが、オースティンにあるアドバンスト・マイクロ・デバイス、デル、IBM、サムスン、3Mなど、388を数えるグリーンチョイス契約を結んだ企業や団体にとっては実に魅力なのである。・・・・・同じことが、コロラド州最大の電力供給会社であるエクセルエナジーでも起きている。エクセルから風力発電による電力供給を受けている3万3,000の顧客は、2005年末までは毎月通常の電気よりも6ドル高い料金を支払っていた。
それが今では、天然ガスや石炭主体の通常の電気代よりも、幾分安い料金で手に入る。急速に膨らむ需要に対処するため、エクセルは現在風力エネルギーの開発に協力してくれるところから提案を募り、コロラド州の23万2,000戸の家庭の電気を賄える、最大775メガワットの風力発電電力を新たに確保しようとしているのである。・・・・風力エネルギーへの関心は、発電コストが下がるにつれて高まっている。メディアの注目を集めているのは、例えばケープコッド沖に計画されている大規模なオフショア・ウィンドファームのように、風力発電には賛成でもタービンの設置は「自分の地域ではごめんだ」と反対するコミュニティである。しかし国内のほとんどの地域では、ウィンドファームは熱烈な歓迎を受けている。「ぜひ自分の地域に」という声が、あちこちから上がっているのだ。
エクセルが風力発電容量を数百メガワット増やすと発表した際には、風力資源が豊富なコロラド州東部一帯で牧場主たちが関心を寄せた。例えばワイオミングとの州境にあるグローバーのような牧場経営が中心の小さな田舎町では、牧場主たちはおよそ30の牧場にまたがる300メガワットのウィンドファーム建設案を歓迎した。
優に年間10万ドル相当はある電力を供給する最新の大型風力タービンを設置すれば、土地使用料を3%としても、約300坪の農地を提供することで、牧場主は年間3,000ドルを手に入れることができる。しかも、放牧は今まで通り続けられるのである。
計画が予定通り承認されると、およそ30人の牧場主が平均7基の風力タービンを設置して、年間約2万1,000ドルの副収入を得る計算になる。10年後には、何千もの牧場主が、牛を売る以上の収入を売電で稼ぐようになるかもしれない。
ニューヨーク州北部、オンタリオ湖近くにあるルイス郡では、酪農家たちがメープルリッジ・ウィンドファームを快く受け入れた。風力タービンは195基で、1基につき年間5,000から1万ドルの土地使用料が支払われる条件となっている。
農村でウィンドファームが歓迎されるのは、それが農家や牧場主の収入と技術者の雇用につながり、安い電力が手に入るからである。また、税収が増えるおかげで学校の設備を向上させたり道路の補修ができることも理由に挙げられる。
風力エネルギーの収益性の伸びには、大企業も関心を寄せている。4年前、ゼネラル・エレクトリックは、エンロングループの中で数少ない高収益の会社であったエンロン・ウィンドを買収し、同社の最新型風力タービンで世界の風力タービン業界トップの座を手にした。
さらに2005年半ばには、ゴールドマン・サックスが、ウィンドファーム開発を手掛ける小規模のジルカ・リニューアブルエナジー(Zilkha Renewable Energy)を買収した。この会社は現在ホライゾン・ウィンドエナジー(Horizon WindEnergy)という社名でゴールドマン・サックスの完全子会社だが、同社が有する風力発電容量は、建設中と計画段階のものを合わせると4,000メガワットになる。この容量で1,200万戸の電力を十分賄うことができる。
風力発電事業における世界的大手のAESは風力発電の開発を手掛けるシーウェストを買収し、米国の風力発電業界の中で確固たる地位を築いた。同社が開発中の風力発電容量は1,800メガワットである。英国沖合の風力発電をめぐる入札で有力候補とされるシェル石油は、現在米国内に315メガワットの発電容量を有し、それをさらに増量することを計画している。またBPは2,000メガワット規模の風力発電設備を計画しており、米国内で建設候補地を選定中である。
2005年には米国全体で風力発電容量は36%増加し、9,149 メガワットに達した。今年は50%の増加も不可能ではないだろう。米国では2005年末の時点で、30州に商用ウィンドファームが存在している。風力タービンの生産が間に合わないという制約がなければ、風力発電の成長はもっと加速しているだろう。ゼネラル・エレクトリックは現在米国の風力タービン市場で60%のシェアを占めているが、既に2007年分まで完売の状態にある。
風力エネルギーは豊富で安価な上、無尽蔵で広くどこでも手に入り、クリーンなため気候に影響を及ぼすことがない。そのため新エネルギー経済の中核的な存在となりつつある。米国内50州のうち、ノース・ダコタ、カンザス、テキサスの3州には、米国全体の電力需要を満たすことができるほど、利用可能な風力エネルギーが十分にある。さらに風力発電コストも、1980年代初頭に1キロワット時あたり38セントだったものが今では4セントから6セントにまで下がった。その結果、安価なエネルギーがほとんど無限に供給されるようになったのである。
その上、風力エネルギーは決して枯渇することがない。誰も供給をストップしたり、値段を上げることはできない。そして地球の気候をなんら乱すことなくわれわれに エネルギーを供給してくれるのである。 (翻訳:酒井、山田、古谷)
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