2001年02月16日(金) |
妻からの三行半(みくだりはん) |
世の中には惨めな男がいる。そこ最たるものが定年になって突然妻から「三行半」を突きつけられる男たちだ。俗にいう定年離婚である。1月のプレジデントは、家庭と題する特集で、大半は離婚に関するテーマであった。作家の藤原智美さんの一文を引用すると「妻から離婚届を突きつけられ、晴天の霹靂と慌てる。・・・妻という最も身近にいる人間の心の変化を読み取れなかったと言うことは、鈍感のそしりを免れない。人を見る目も、先を読む力も乏しいと思われる。仕事だって出来ないに違いない。そんな男が妻から離婚を切り出された時は、もはや相手を説得する力もなければ、その離婚届けを撤回させる力もないだろう」と惨めな初老の男性像を表現していた。 女性の側から見ると「こんな男とこれからも一緒に暮らすのだろうか」と思うとゾォーとすると言うからどうにもならない。男性の方は「俺は、仕事一筋の会社人間だった。家族のために働いてきた」等と言い訳しても、三行半を突きつけられた時は、もはや終わりのようだ。藤原智美さんは「女性が離婚を決断するということは、そう容易なことではない。今後どうやって食べていくかと言う経済的な問題、これから先をどう歩んでいくかという人生設計を含め、かなり周到な準備をしてからでないと難しい。つまり、敵(妻)は着々と戦略を練り上げ、虎視眈々とチャンスを狙っているのである」このチャンス到来は、夫が退職金をもらった時、すなわち定年離婚なのである。
経済アナリストの森永卓郎氏は「離婚したあとの夫婦を見ていると、一番多いパターンは、妻が元気になったのに夫は居場所を失ってふさぎ込んでしまって、精神科医のところに駆け込んで行くというケースである」と指摘している。すなわち、ボケ老人のコースに乗ってしまうのだ。どうしてこんな惨めな結果になってしまうのだろう。
もう少し森永卓郎氏の説明を引用したい「夫が自立して生きてこなかったからである。…会社だけが居場所だった人間は、定年で居場所を失ったとたん、どこにも居場所がなくなる。『濡れ落ち葉』などと揶揄されても妻にしがみつくことになる。妻の方が別れたくなるのも当然だ」1月11日に書いたように、退職して一人の人間になる…すなわち虚飾を剥ぎ取った時に、その人に何が残っているかが一番問題なのだろう。何も残っていない空っぽの人間では妻から三行半を突きつけられても止むを得ないといわねばならない。人間としてのコミュニケーション能力がないのである。
20年以上の同居期間のある離婚は、統計によると16.9%である。昨年の離婚を基準にすると約4万人が妻から三行半を突きつけられている。
・濡れ落ち葉 妻に嫌われ 落胆し 医者に駆け込み 其れから何処へ
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