『日々の映像』

1996年01月05日(金)  本当の個人金融資産は572兆円


 国立国会図書館が「調査と情報」というレポートを出しているのだが、その491号に「家計金融資産140兆円の分析―金融資産の質、量及び分布の状況―」と題された論文がある。この論文を読むと個人資産の中身がよくわかる。・・・・・
 個人資産に関して3種類の統計結果が出ている。「日本銀行資金循環勘定」と「総務省家計調査」、それに「金融広報中央委員会世論調査」の3種類である。一般によく知られている1400兆円というのは日銀の統計によるものだ。・・・・・

 論文中には次のよな記述がある。
「国家財政の持続性、株式市場をはじめとするリスクキャピタルの源泉、金融機関のリテールビジネスの対象などを議論するためには、個人事業主の保有分、現金、年金基金を除いた上で、負債部分を差し引いたネットの値を検討することが適切ではないか」
 つまり、国の借金はどこまでできるか、財政は破綻せずにどこまでもつかということを考える場合、負債部分はもちろん「個人事業主の保有分」、「現金」「年金基金」などは除くべきだというのだ。・・・・・
 そしてこ論文では、このような観点から判断すると、3種類の統計のうち「総務省家計調査」の数値が相対的には妥当性が高いと結論づけている。・・・・・

 「総務省家計調査」では、現金と年金準備金はカウントされていない。さらにたとえば、「料理飲食店、旅館または下宿屋を営む併用住宅の世帯」が除外されている。つまり「個人事業主の保有分」はほとんど含まれていないと考えられる。
すると、残りの部分の合計が「個人純金融資産」である。預金の509兆円をはじめ、有価証券、保険準備金などの合計は829兆円となる。そこから負債の257兆円を引くと純資産額(ネット)では572兆円という結果になる。・・・・・・・

 日本の政府は個人金融資産を当てにしているようだが、実際に国民が拠出できるお金など572兆円しかないのである。
1400兆円の半分にも満たず、1000兆円を超えるこの国の借金をファイナンスできないことなどそれこそ小学生にもわかる話だ。

預金封鎖はやりたくてもできない状況

 私は預金封鎖は当分やらないと考えているが、もし預金封鎖をやって、チャラ(相殺)にしようと思っても絶対額が足りないのである。預金封鎖をして1件落着するのならまだやる意味はあるが、解決しないのであればその副作用はあまりにも大きい。預金封鎖を実施した瞬間、日本国の信用は完全に失墜し、円、国債、株など日本のありとあらゆる資産が大暴落を開始するだろう。・・・・・・
 だから、預金封鎖は当分ない。その前にまずは金利の上昇、国債暴落、ハイパーインフレ、極端な円安などの経済現象が起こると考えられるのが妥当である。最終的には日本でも預金封鎖は起こりうると思うが、それは国家破産時代の末期、最後の最後であろう。
 日本円の信用が完全に失墜し、預金封鎖をしなけれキャピタルフライト(海外への資本逃避)や円から外貨への両替が止まらないという状態になったときに初めて実施されるだろう。つまり、「政府が預金封鎖に追い込まれる」というのが正しい表現で、誰も積極的に預金封鎖などやりはしないのだ。
 ただし、ひとつ例外がある。それは日本が首都直下型地震などの大災害に見舞われた場合である。そのときには、それを口実に預金封鎖を強行する可能性はもちろんある。

           浅井隆氏著 『小泉首相が死んでも本当の事を言わない理由』 より抜粋


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石田ふたみ