やんの読書日記
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浅田次郎作 講談社文庫
話題の作でいつも書店に平積みされている。 歴史物それも清朝の末期とくれば いわずと知れた西太后。 この物語は西太后派と皇帝派の争いが縦軸になっているが 芯は運命に翻弄されるひとりの少年とひとりの役人の 生き様だ。極貧の少年春児が星占いによって天下の宝を 自分のものにすることを知り、何が何でもその道を行こうと 自ら自分の体の一部を切り捨てて宦官になる。 庶子ではずれものの郷士の次男文秀が科挙にトップ合格する。 そういう場面は運命を自分のものにしていこうとする すさまじさや力強さが感じられて手に汗を握る。 同郷のふたりが相反する別々の道をすすみ 政治に翻弄されていく。春児は星占いの人生を 実現し、文秀は夢破れて逃亡する。
これまで見知って来た歴史上の人物が 当時のなにものかによって美化されあるいは 歪曲されていることがこの物語を読んでよく分かった。 特に西太后がその中心だ。 宦官や、清を打ち立てた韃靼人も これまでは不可思議な遠い人種のように見てきたが それは当事者のわなであることを今やっと思い知った。 清朝がなぜ繁栄、崩壊したのか そのことがよく分かった気がする。
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