やんの読書日記
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2005年05月14日(土) 蒼穹の昴

浅田次郎作
講談社文庫

話題の作でいつも書店に平積みされている。
歴史物それも清朝の末期とくれば
いわずと知れた西太后。
この物語は西太后派と皇帝派の争いが縦軸になっているが
芯は運命に翻弄されるひとりの少年とひとりの役人の
生き様だ。極貧の少年春児が星占いによって天下の宝を
自分のものにすることを知り、何が何でもその道を行こうと
自ら自分の体の一部を切り捨てて宦官になる。
庶子ではずれものの郷士の次男文秀が科挙にトップ合格する。
そういう場面は運命を自分のものにしていこうとする
すさまじさや力強さが感じられて手に汗を握る。
同郷のふたりが相反する別々の道をすすみ
政治に翻弄されていく。春児は星占いの人生を
実現し、文秀は夢破れて逃亡する。

これまで見知って来た歴史上の人物が
当時のなにものかによって美化されあるいは
歪曲されていることがこの物語を読んでよく分かった。
特に西太后がその中心だ。
宦官や、清を打ち立てた韃靼人も
これまでは不可思議な遠い人種のように見てきたが
それは当事者のわなであることを今やっと思い知った。
清朝がなぜ繁栄、崩壊したのか
そのことがよく分かった気がする。


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