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真っ赤な木の実 2003年11月14日(金)

もう、十年も前の景色を、
思い出していた。

ひょいと、陰に入れば、
そこには、たくさんの木の実があった。

それを、取りあっては、
それを、食べあっては、
遊んでいた、
無邪気な子どもを、
思い出していた。

小さなゆびさきで掴んだ、
真っ赤な木の実は、
たしか、おいしかったんだろう。

たやすく、つぶれて、
服まで、赤の斑点。
口はしに、木の実の皮。

それでも、笑っていて、
もういちど、もういちど。
って、まいにち、
傷だらけになりながら、
木の実を取りに、行っていたのだ。

もう、たぶん、あの林は、ないのだろう。

ひょいと、飛び越えても、
今は、ビルの中へと、吸い込まれなければ。

とりかえさなければいけないものがある。





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熊野
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