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'05.7月より徒然花茶(雑記)をblogに移行しました。
2004年08月09日(月) |
映画『藍宇 LAN YU 〜情熱の嵐〜』 |
かねてから気になっていたものの、香港製と台湾製のVCDかDVDしか出ていなかった作品である。しかもDVDは日本のDVDデッキやPS2では表示されないらしく、PCで視聴できるVCDは、当然英語字幕だし…微妙なニュアンスまで読み取れるか不安。で、買おうか迷っていたのだけど、ようやく日本で公開された。
場所は、新宿武蔵野館。モーニング&レイトショーのみ(関西のほうでも公開予定の噂を聞いたけど未確認)。終わってしまうのでは…と心配していたのだけど、ようやく『藍宇』に会うことができた。
さて、その『藍宇』とは知る人ぞ知る、でもその筋(笑)ではかなり話題になっている香港映画……同性愛ものである。 でもこの映画の魅力は、青年が与える惜しみない愛と、それによって成長していく男の心の軌跡。天安門事件など激動の時代背景も描かれ、同性愛抜きにしても佳作といえる作品で、台湾と香港の映画各賞にノミネート、受賞もしており、2001年11月には「TOKYO FILMeX」に特別招待されている。
英題:Lanyu 監督:スタンリー・クワン 脚本:ジミー・ンガイ 美術&編集:ウィリアム・チャン 出演:フー・ジュン リュウ・イエ
・・・・・以下、苦手な方はご遠慮ください・・・・・
舞台は88年から90年代後半にかけての北京。青年実業家・捍東(ハン・ドン)と、彼の愛人となる藍宇(ラン・ユー)の二人の男の10年に渡る恋愛模様を切々と描いている。 バイセクシャルのプレイボーイ捍東が、地方から北京に来たばかりの貧乏学生・藍宇を買い、ベッドを共にするところから物語は始まる。 捍東は、あくまで一夜限りの関係と割り切っていたが、藍宇は初めての相手となった捍東を慕い、純粋に愛し始めていた。そして捍東もまた他の男と違う彼の雰囲気に、それまでになかった感情を持つようになる。やがて二人は、捍東の家で同棲を始める。
だが社会的体面のために、捍東は仕事仲間の女性と結婚。藍宇は、静かに捍東のもとを去って行く。 捍東の結婚生活は長く続かず、間もなく離婚。 数年後、二人は偶然再会する。捍東は自分が藍宇を愛している事を悟るが、藍宇にはすでに新しい生活があり、恋人がいた。 そんな捍東に追い討ちをかけるように、事業に不正が見つかり、それを知った藍宇は……。
とまあ、文字にするとありがちなストーリーだが、二人の痛々しい恋愛関係を丹念に、そして濃密に描いていくことで情感ある作品になっており、いつの間にか引き込まれてしまう。 天安門事件など歴史的背景も取り上げながら、中途半端な大河ドラマにならずにすんだのは、あくまで捍東の視点で構成されているからだろう。いや、大河ドラマも好きだが。
小説の映画化は、得てして原作のイメージが壊れることが多い。この作品も、かなり大胆な省略が行われているし、天安門事件前後の描写が甘いにも関わらず(さすがに直球では描けなかったのだろう)、映画化は成功している。 いずれ原作の方の書評も考えているので、これ以上は内緒。
何よりも、藍宇の健気さに泣ける……不覚。
藍宇役のリュウ・イエ君は、地味だけどじんわりと心温まる『山の郵便配達』で息子役に出演していた青年で(えっ?!)、この映画が2作目だったのだそうだ。……あの純朴青年の次にこの役って…いったい何があったんだ?(笑) でも、それなりの濡れ場があるにも関わらず、彼の初々しさは健在。そのくせ、なんとも切ない表情をするのだ。思わず抱き締めてあげたくなるような、こちらまで切なくなってしまいそうな。いやん、可愛い…
とどめの台詞は、 Is something wrong with me? How come I like you so much?
こーんなこと呟かれたらクラクラしちゃいますぜ、もう(笑)。 BLファン必見と言ってしまいたい佳作。国内DVDも発売が決定されたし、さあ予約だ!
ただ一つ不満があるとしたら、あの陳腐な日本向けのタイトル。 「情熱の嵐」ってー…相当恥ずかしいと思うのは私だけ?
■小説版『北京故事 藍宇』の書評 ■「藍宇 LAN YU 〜情熱の嵐〜」公式ページ
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