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'05.7月より徒然花茶(雑記)をblogに移行しました。
2003年06月24日(火) |
『唇には微笑みを〜』裏話、または商業誌化顛末記 |
久しぶりの小説UPは、1995年に商業誌となった知る人ぞ知るという作品です。 ――以下はその本の「あとがき」より抜粋。
============ 始まりは――『同人誌に発表したある作品』(実際の後書きにはタイトルが入っていた)を今度出す本に――というお話だった。 あんな暗い話を? 純可の作品の中でも屈指の暗さなんだぜ。 でもアンソロジーということだから、ほかの作家さんの作品に紛れ込めば、気色の変わったものっていう感じでいいのかな? 能天気な私はひとり納得した。 次に連絡をいただいたとき、それは個人誌へと昇格していた。 ついては一本では少ないから他の作品を送って欲しいという。 自慢じゃないが、私の作品は基本的に暗い。 「二十歳以下の♂は♂未満」と言い切ってはばからない私が書くのだから、主要キャラたる男たちも、ま、若くない。 私は狼狽を隠して問い返した。 「あんな暗いのばっかでいいんですか?」 「はい」 「今の流行から外れていますよ」(自覚はある) 「そうですね。同人誌らしくないです」 「それでもいいんですか」(担当さんを脅迫してどーするんだ!) 内心の狼狽を知ってか知らずか、担当のYさんはあくまでも穏やかに優しい声で、私に告げた。 「はい、いいんです。分かっていますから」 なんと太っ腹な出版社だろう! と、本当にいいのかしらん? という、せめぎ合う気持ちのうちに、このプロジェクトは(大袈裟なっ)進行したのであった。
(中略)
この二作品に共通するものは恋愛でも友情でもなく、交錯する人の想い……でしょうか。 どれほど心を寄せてもすれ違ってしまう想い。伝わらないもどかしさ、そして生じてしまう誤解(う〜ん、暗いぜ)。 だからこそ人は誰かを求めるのでしょう。そして恋愛や友情が生まれるわけで……でも、やっぱりどこか分かり合えないもどかしさを内包していて――これはメビエスの輪ですね。 ==============
とまぁ、こんな調子で商業誌化された、それはそれは暗い・重い某小説に抱き合わせた作品が、今回連載を開始した『唇には微笑みをたたえ』である。 「暗い・重い」と並べるには、当時から統一感のない作品集だと思っていたので、 『ちょっと統一感のない作品集ですが、これもみな、静と動、冷静と情熱、お茶目と陰険を合わせ持つ(世間では二重人格ともいう…笑)ABという血の成せる業(わざ)とご容赦下さい』 などと、ちゃんとしっかり言い訳しているけど、今回引っぱり出してみて、私の目に狂いはなかったことに自信を持つ次第(おいおい…)。
さて、この作品集のおかげで、その後私は数奇な(?)運命をたどる。 これからお世話になろうという出版社がバブル崩壊とともに、なんと倒産してしまったのだ。 土地になんか手を出さずに地道に出版業に勤しんでいれば、そんな憂き目にあわなかっただろう、とは当時の業界筋の噂話……どうでもいいけど、原稿料を清算してからにして欲しかった。
数ヵ月後、再び某社から勧誘(?)があった。投稿とか売り込みもしていない無精者の私をまたも拾ってくれようという、ありがたいお言葉である。 だが条件があった。 一つはその当時創刊された♀×♀雑誌への執筆。 「無理です。それ(JUNE)とこれ(百合物)とは、まるで方向性が違いますから」 考えなしにも、あっさりお断りした私だった……。実はのちに発刊された雑誌の執筆メンバーを見て、ちょっともったいなかったかなーとも思ったけど、やっぱり書ける自信がなかったもんね。
もう一つは、やはり雑誌なんだけど――「もっとHに!」 努力はしましたとも、嫌いじゃないし(笑)。 世の中はJUNEからYAOIを経てBLが台頭してきたころで、「過激さ」が求められていた。 唸りながらチャレンジして、何とか担当氏のOKをいただき、ほっとしたのもつかの間、だがその雑誌は、私の作品が掲載された翌号だか翌々号から廃刊となってしまったのだった。決して私の作品のせいではない…と思う……。 立て続けの出来事である。誰だってショックだろうけど、能天気な私もさすがにショックだった。原稿料、もらっていないし……。
そしてある日、私は妙に吹っ切れてしまった。
元々「どうしてもプロになりたい!」という気骨も信念も少なく、ただでさえ少ない睡眠時間と本業を犠牲にして、「えっち」を頑張らねばならないことが、なんだかな〜って気分になってしまったのだ――そう、「えっち」描写に苦労したのよ(爆)。 どうやら私は、♂同士の「えっち」を書きたいのではなく、男性の中にあるホモちっくな遺伝子が醸す、恋とも友情ともつかぬ、その微妙な関係に色気を感じるタチらしい。 好きなものを好きに書ける同人という「場」を知ってしまっているから、「ま、いーか」と吹っ切れついでに居直っちゃったのであった。 (※補足・・注文通り「書ける」人がプロになるのだろうし、だからこそプロなのよね、きっと)
そういう意味で感慨深い作品ではあるのだけど、読み返してみると、手を入れたくてうずうず。でもそれを始めたら、たぶん全面改訂したくなるのが目に見えているので、そのままUPすることにしました。 お楽しみいただければ幸いです。
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