本と編集と文章と
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田口ランディの「モザイク」を読んでいる。今までの2作はラストまで一気に読んだが、この作品は中断することが多い。本人が書く環境に、さまざまな雑音が入ったようだ。ランディは、自分の原稿を何度も読み直して推敲するタイプではない。むしろ、一過性のライブに近い感覚で書いている。 そういう意味では、この作品はもっと安定した環境で書かれたなら、よりすぐれた作品になる可能性を秘めていたと感じられる。 しかし、そのこと以上に感じるのは、ランディによって、日本の現代文学が人間の存在の本質を認識しようとする衝動の最前線に復帰したということだ。
科学が個別のテクノロジーに自己解体していく時代には、科学は「人間とは何か」という問いとその答の「断片」をまき散らすだけで、それらを統合する力を失っている。 これは文学のチャンスなのだ。 現代という時代に、文学の可能性はあまりに低く見積もられている。 文学は人間を再定義するレースの先頭ランナーに十分になりうるポジションにいる。 ランディがそのことを果敢に証明している。
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