+--- Cinema Memo ---+


■ マニアックな設定の代償「マトリクス・レヴォリューションズ」 2003年12月25日(木)
センティネルズがザイオンに向かって突き進む中、ネオとトリニティーは人類がいまだかつて挑んだことのない領域まで入ることを決意。ホバークラフト艦隊の乗員、ベインに憑依したエージェント・スミスとの対決は? 預言者オラクルの導きの言葉とは? 戦いは今夜終わる。ネオの運命と、マシンと人類、二つの文明の未来はどうなるのか…。
監督-----アンディ&ラリー・ウォシャウスキー 出演----キアヌ・リーヴズ キャリー=アン・モス ヒューゴ・ウィービング
音楽☆☆☆.5 ストーリー☆☆☆☆ 映像・演出☆☆☆☆ 俳優☆☆☆☆ 総合評 ☆☆☆☆
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※ネタバレしています。未鑑賞の方はお気をつけて。

様々なメタファー…、というかあらゆるシーン、台詞、装飾にまで意味がありそうな三部作の完結編。キリスト教的の多かった前半に比べ、本作はアジア的な思想が入ってきている。
・アーキテクト(マシン)サイド:キリスト教、白人配役(リローデッドの双子、有閑夫人パーセフォニーの白い肌やドレス等に象徴される白)。
・オラクル(ザイオン)サイド:アジア思想、多民族配役(だから当初アンダーソン=ネオの間をゆらぐ配役には各国の血を引くキアヌがぴったりくるのかも)。

…というように、見る人によっていろいろ面白い見方ができる隠し絵的な面白さが魅力でもある(もちろんこれは私の勝手な想像で、それが製作側の意図と合っていようが、なかろうが楽しめるという意味です)。個人的に、いい映画の条件は観た人それぞれに様々な感想や考えを抱けることだと思っています。

とはいうものの…ストーリーは把握できるんだけど、とにかく毎回、字幕+ヒアリングでは限界のある台詞の意味を考えながら画面についていくのが大変で(とくにオラクル周辺…英語ってダブル・ミーニングばかりだし)深い意味はやはり本などで補足するしかないのだろうと半分あきらめてますが(笑)
だから、殿方には血沸き肉踊ったであろう壮大なメカ戦闘シーンが、私には休憩時間となったわけです。あの場面だけは往年のハリウッドアクションの王道展開を踏んでいたからね。レボリューションズで覚醒したネオがもはや「記号」となってしまった今、他に人間的感情を呼び起こす方々が必要なわけですね。少年兵とベテラン将との邂逅、夫の帰りを待ちながら闘い続ける妻、もうお泣きなさいと言わんばかりのカタルシスてんこ盛りです。これがマニアックな設定における代償か。しかも長い。もうちょっと短くてもよかったと思うんだけど、やっぱり監督はここに力入れてたんでしょうねー。

とはいえ、後半ネオとベイン=スミスの死闘(こちらの方が雨のシーンより緊迫感があった。慣れって怖い)やマシン・シティーへの潜入、トリニティーの死(このへんもメロウギリギリだけど)からラストにはやはり大きな流れとパワーがあり、引き込まれた(とくにネオの失明がツボ直撃!)。実は私、ネオとスミス相打ちに加えてザイオン全滅という非常に暗いラストを予想していたのですが、やはりそれだと救いようがなかったでしょうか(汗)

ラストのアーキテクトとオラクルの会話、一見同じ展開が永遠に繰り返されるようにも思える…となると”レボリューションズ”の意味は? 私はザイオンとマシンシティの戦争が終結した世界が始まるのだと解釈しました(幼女と天使=セラフが手を繋いで蘇る)。
これまでと変わらないように思える日常…何度も戦争を繰り返し、いつまた危機が訪れるかもしれないこの世界。うまく現実の世界を重ねた上手いラストだと思いました。

最後に、唯一笑えたのが狭間の列車ホームでネオが「え〜っと、ここに来れたんだから、自力でここから抜け出せるはず…」とかブツブツひとりで考えてるとこ。ちらっと「アンダーソン君」時代のさえなさが顔を出した、お気にのシーンでした。




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Written by S.A. 
映画好きへの100の質問



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