+--- Cinema Memo ---+


■ ★番外★テレプシコーラとバルバラ異界 2003年07月04日(金)
「テレプシコーラ」は雑誌ダヴィンチで連載中の山岸涼子先生のバレエもの(現在4巻まで刊行)。
主人公は小学生の篠原六花(ゆき)という女の子で、母親がバレエ教室を開き、姉の千花はかなりの実力を持っている…というところはかの名作「アラベスク」を彷彿とさせるのですが、六花は180度開脚が難しい体型で、バレエには向いていないと諦めかけたところで、須藤空美という転校生に出会う。空美は酒乱の父のせいで壮絶な困窮生活の中にあるのだけれど、(やや精神に異常を来していると思われる)車椅子の元天才プリマの叔母の指導と血によって、ズバ抜けた技量を持っている。

この二人が出会って…という物語なのですが、単行本1〜2巻は、空美にまつわる残酷な環境がけっこう出てきていてううっ…と辛いのですが、3〜4巻からは六花と千花の対照的な姉妹がコンクールに挑んでいったり、ぐっとバレエ度がupしていきます。
 六花はコンプレックスに悩まされ、人の前に出るのが苦手(アラベスクのノンナと似ている)。母親も姉の千花に比べてあまり期待はしていないし、それを六花もよく知っている。しかし、教室に金子先生という女性が現れてから、六花はどんどん自分に自信をつけていく。人は指導者や周囲の言動によって、いかに暗示に左右されてしまうかがよくわかる。
 バレエの知識や楽しみもしっかり押さえつつ、なぜこんなにサスペンスタッチにできるの!? という場面もあるし、子供が主人公であるにもかかわらず心理ドラマには手に汗握る緊迫感もあり、思わず六花を自分に重ねてしまうし、応援せずにはいられない。


「バルバラ異界」は月刊フラワーズで連載中の萩尾望都先生のSF?もので、1巻が発売されたところ(タイトル間違えてました。スミマセン)。
 人の夢の中に入るのが職業の渡会時夫は、ある事件から眠り続けている少女の夢を探る仕事を依頼される。彼女の夢の中にのみ存在する幻の島「バルバラ」が、時夫の息子キリヤが作ったものと同一だと気づいた彼の周囲で、様々な事件が起こり始める。

実は私は「残酷な神が支配する」がまだ読める心境ではなくて(たぶん相当の勇気を必要とする)やっと萩尾先生の新作が手に取れて嬉しかったりするのですが、うーん、面白い。すっごく面白い。複雑な人間関係、同じくらい複雑に重なり合う異界とメタファーたちに翻弄され、謎を探る頭の働きの気持ちよさ。
萩尾先生の作品には台詞も画面もリズムに溢れていて、どんどん世界に引き込まれる。早く続きが読みたいよう!





+--- back + INDEX + next ---+
Written by S.A. 
映画好きへの100の質問



Material by Amane(RainRain) + Skin by caprice*