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■ めぐりあう時間たち 2003年06月17日(火)
1923年ロンドン郊外、「ダロウェイ夫人」執筆中の作家ヴァージニア・ウルフ。1951年ロサンジェルス、「ダロウェイ夫人」を読む妊娠した主婦ローラ。そして現代、2001年ニューヨーク、「ダロウェイ夫人」と同じ名前を持つ編集者クラリッサは、エイズで死に行く友人の作家を祝福するために受賞パーティの企画に智恵をしぼる。それぞれの時間に生きる三人の女は、やがて「ダロウェイ夫人」に誘われひとつの物語へと紡がれていく……。
ピュリッツァー賞とペン/フォークナー賞W受賞に輝くマイケル・カニンガムのベストセラー『めぐりあう時間たち』を、『リトル・ダンサー』のスティーヴン・ダルドリー監督が完全映画化。

監督-----スティーブン・ダルトリー 出演----ニコール・キッドマン ジュリアン・ムーア メリル・ストリープ

音楽☆☆ ストーリー☆☆☆☆ 映像・演出☆☆☆ 俳優☆☆☆☆ 総合評 ☆☆☆.5

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これ、感想を言葉にするのがけっこう難しい作品なんですが、物語としては直接的にしろ間接的にしろ精神的に追いつめられ、あるいは病を得てひたすら「死」に向かって自発的に加速して行く人たちの、ある一日を描いた作品でもあると思います。
それは、愛する家族や友人ですら止めることができない恐ろしく強力な磁力となって彼らを引き込んでいく。本人にもどうすることもできないほど自然な流れのように見える。

また、気づくか気づかれないか、という程度の通奏低音として同性への愛情がひっそりと影を落としている(ヴァージニア・ウルフは娘や青年として転生を繰り返すファンタジー「オルランドゥ」を同性の恋人に向けて書いたのらしい)。原作もいつか読んでみようと思います。

後半、ふたりの女性にはある意外な現実的接点が浮かび上がってくるのですが、その接点となるキイパーソンの人生にもかなり深いものがあって、ラストへの感動を強めていっているように思います。
はっきりとしたカタルシスの代わりに、リアルな現実感やささやかな家族や友人との愛情、絶望、人間の持つ強さなどが細やかに描かれている。

彼らが最終的に下した決断は、ここでは伏せます。
ただ唯一、音楽だけがやけにメロウで気になっちゃって。もう少し控えても良かったのではと思ったのですが。




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Written by S.A. 
映画好きへの100の質問



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