**In my heart of hearts**
心の奥のこころ


2016年04月09日(土) 桜も散った

桜の花が一気に満開になったのは、この一週間の間だ。そしてあっという間に散って艶やかなピンクの妖精たちが消えてった。日本中の至る所で、美しい喜びの色をいた花が枯れ木にしか見えなかった風景を変身させて、人々はうっとりとその様子に心を奪われていたことだろう。 梅がまだ寒い冬の空気のなかでも咲き始めて、黄色い菜の花と赤い椿が咲き誇り、白いモクレンの花、桃の花、そして春の空気をつれてくる桜が景色を更に盛り上げる。短い間だけ、夢のように咲き誇る桜。 日本の春。こんなに花を色々目にする時間を持てたのは、今の恩恵である。回り道をしてここに来た私がいる。

桜の花が満開のころに、暖房の切れた職場で体を冷やしてしまった。久しぶりに長引く咳と喉の風邪をひいていた。 そのピークの時だ。やっと翌日は休みの日になるので、こんな時はじっと映画館でスクリーンを眺めて楽しめばいいと寄り道した。苦しい咳と頭のふらつきはあっても意識は大丈夫な感じ。部屋へ帰ると、留守電だった。 うろたえたその声。私にどうしろと言うのだろう。サキ子さんは桜に迎えられたかのようにしてこの世の幕を閉じた。倒れてから、2年くらいだったろうか。いずれわかっていたことでしかない。私には、何かを想像するほどの関心すら、沸くことはないしそれが当たり前のこと。宗二はとうとう別れた切りで関係をつなぐことなく、過ごすことになる。
知らせるのは兄か、母か。 母は私が知らないとでも思うのか、留守電で、お亡くなりになった、などと、妙に丁寧な言葉を使う。私は白ける。城戸で葬儀を終えたとか言っていたようだったけど、泣きついて世話になったのかと、どこまで身勝手な父かと、叔母の死にも冷淡だったのではないのか。 それが、私の父親なのだ。そして長い年月のあと心を開こうとした私に血の通う言動の一つ、示す思考回路を持たないことをあえて、突きつける人。 何も変わらず私は最後までないがしろにされた傷を心に受けるとは、笑ってしまう。 こんなことが私の親子のストーリーか。今になればまっすぐに見ることができる。だから、そういう今が有り難く思える。 私はもういい加減に中年のおばさんだものね。


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