私に与えられた部屋は一つではなくて。 今こうして大半の時を過ごす部屋の他に幾つか。 その一つに、私が寄り付く事は無い。 その部屋には、何も無い。 薄ら気味の悪い感覚が私を包む。 長く居る事は出来ない。 恐怖にも似た寒気と、畏怖にも似た眩暈が起こる。 何故なら、そこには何も無いから。 ある種の完璧な空間が広がるから。 私は何だか末恐ろしい物を見たのかもしれない。 あの完全な部屋で。 だから、落ち着かないのかもしれない。 あの壁も、広がる直線も。 淀みない真っ白な空間も。 何もかもが私の喉を絞めてくる。 私は、私の部屋に居る事が出来ない。 それでも私には、この部屋がある。 ガラクタの寄せ集めでも。 この世の全てがひっくり返ったような部屋。 とても、落ち着く。 それでも私はあの部屋に行かなければいけない。 爆弾を抱えたまま。
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