2007年10月30日(火) |
第648話 手術経験者の話 |
犬と人を同列に話すのは、当たり障りがあるかもしれない。 でも、ご本人が納得して話をしてくれたので書いてみる。
股関節置換手術を3回も経験した女性に、ノアのことを話してみた。 その女性は「手術してあげなさいよ。楽になるから。」ということだった。
ここ1年は眺めてることが多いお散歩だったね。
股関節形成不全であることに、自分も家族も気がつかず、 「なんでこんなに脚が痛いんだろう。なんでこんなにつらいんだろう」 そう思って生きてきたそうだ。
子どもの頃、農作業をやってるとつらくてつらくて、休むと「ずるい」と姉妹に言われて悲しかったそうだ。自分でも説明できないしんどさだったそうだ。
出産のときに医者に言われて初めて自分が股関節形成不全だとわかったそうだ。
デコボコに磨り減った関節は、たまに神経に直で刺激を与えるらしく、そういうときは動けないんだが、なんかのはずみで神経に当たらなくなるとまた痛いながらも動けるようになるんだそうだ。
今回のノアがまさにそれなんだろうか。
人工股関節の寿命は長くても15年だから、 「なるべくぎりぎりまで痛み止めで持たせる」と医者に言われてたけど、手術したら人生が変わったほど生活が楽しくなったそうだ。
「手術してあげて。きっと生まれ変わったように元気になるから。」
「それまで痛くて日常生活も大変だったのに、私、術後は富士山に登ったのよ。」
「手術は痛くないのよ。術後も痛くないのよ。麻酔や鎮痛剤のおかげで痛くないの。だから心配いらないから。」
「犬の寿命を考えたら死ぬまで使えるじゃないの。私なんか3回も手術したのよ。大丈夫よ。若いうちに走らせてやりなさいよ。」
そうか。 痛くないのか。 獣医さんは鎮痛剤を術後に使ってくれるのかな。 ノア、安静にするためのケージの中で、トイレできるかな。 私に会えない間、捨てられたと思わないかな。
いかーん。 わし、今から気弱でいかーん。
ノアのために手術しようかと決意したきっかけのひとつは、私が心配して暗い顔でノアを見つめてたら、ノアが
『おかあさん、ごめんなさい。よくわからないけど、ごめんなさい。』 と耳を倒して頭を低くして私に謝りにきたこと。
ノアに申し訳ないやら悲しいやら自分が痛くて大変なのに私を心配してくれるその愛情がセツナイやらで、お風呂で泣いてしまった。
なのでもうノアが心配するような言葉や表情は見せないことにしたんだけど、心配しても仕方が無いことばかりが頭を占めるのは困ったもんだ。
犬ってさあ、自分が悲鳴を上げるほど痛いときでも悲しい顔の人の事を心配するんだね。
違う意味で泣けるわ。
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