2004年08月09日(月) |
第345話 桃ちゃんと叔母さん |
帰省するときに立ち寄る母の実家。
母の実家のあとを継いでいた叔父さんは4年前に心不全で急死して、おばさんと愛犬が暮らしていた。 ベアデッド・コリーの桃ちゃんだ。
もうことし13歳で、2年前から体のあちこちに脂肪の塊のようなものが出来ていた。塊は時期が来ると破れて治って、を繰り返していた。 それが今年になっていきなり数が増えた。
体中にしこりが出来て、次々破裂して血と膿が出るようになり、桃ちゃんの苦しみと年齢もあってお医者さんに安楽死を勧められた。
叔父さんが急死したあと桃ちゃんは、叔母さんの寂しさをどれだけ救ってくれていたか。 叔母さんはなかなか決心できなかったそうだが、夜となく昼となく苦しむ桃ちゃんの姿に、ついに「明日 獣医さんを呼ぼう。」と決心したそうだ。
そしてその夜、桃ちゃんの隣に座布団を並べて添い寝して、ずっとずっと話しかけたそうだ。
「お母さんが弱虫なばっかりに 長く苦しませてごめんね。 明日楽にしてやるからね。 もう痛くなくなるからね。 最後までお母さんがそばにいてやるからね。 怖がらなくていいからね。 お父さんのとこに行って、一緒に遊んで待っててね。 お母さんも後から必ず行くから。 それまでお父さんと待っててね。」
泣いて泣いて目玉が溶けるかと思うほど泣いてお別れをしたらしい。 桃ちゃんは起き上がれなくなっていたけど じっと話を聞いていたらしい。
夜明け前の3時ごろ、添い寝してた叔母さんの手を桃ちゃんが舐めて、 舌があまりに冷たいので飛び起きると、桃ちゃんは叔母さんの膝に前脚をかけて一つ大きく長く息を吐いて、そのまま叔父さんのもとへと旅立ったそうだ。
叔母さんは
「私の話がわかったのかなと思ってさ。 自分からお父さんの所に行ったんだと思うの。 もう私は、犬は飼わない。 最後まで面倒見れるかどうかわからないし、 何よりこの年になってああいうのはこたえるわ・・・。 子供のときからずっと犬と一緒だったけど、 でももういいわ。」
と話していた。 毎年帰省の度に立ち寄る家だけど、今年は立ち寄らなかった。
ノアを見れば 叔母さん、泣くだろうなと思って。
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