MUSIC春秋
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 2005年11月11日(金)
存在




今日も昼休みは山に登った。
昨日と違う方向へ行ってみた。
半ばヤケクソ気味に登り続ければ
たとえ途中で怖くなっても
行く道も戻る道も山の中。
木、倒木、枯葉、くもの巣、
土、石、岩、苔、
立て札、地蔵、
虫の声、鳥の声、
自分。

街に戻れば
山の中にいたことは
夢の中の出来事のよう。
再びコンピューターに向かい
コーヒーを飲み
テレビを見る。

仕事を終えて外に出ると
日は暮れていて
雨が降っていた。

昼に私がいたあの山道も
今は闇に包まれて
雨に濡れているのだろう。
枝の先にぶら下がっていた
赤い葉っぱは
もう地面に落ちているかもしれない。
ひんやりとした闇の中で
枝の青葉も土の上の枯葉も
ざわざわぼつぼつと
音をたてているのだろう。

私はそこにいないのに
今この時もその風景はある。
私がいない所すべてに
今この時もすべての風景はある。
私には見えていない所に。
私が知っている人はすべて
今私がいない所にいる。
私には見えていない所に。
もし私が消えても。



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