「にこにこばかりもしてられない。」
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5月にさかなさんが丼がほしいよう〜と泣いていたのを、 軽い気持ちでお手伝いしたのが発端で、 初めて吉野屋に行くことになりました。
吉野家。 私が初めて勤めた会社のビルの1階が吉野家だったので、 日々吉野家フレーバーにまみれて仕事をしていたあの頃。 タクシーの運ちゃんが蝶ネクタイを外しながら丼をかっ込んでいたあのお店。 部長のおつかいに弁当買いに行ったことしかないけれど、 とても小娘の居場所のある店ではなかった。
そんな吉野家に行くのだ!
それも、丼がもらえるのだ!
それだけじゃなくて、作ってくれるのが社長なのだ!
うきうきと、待ち合わせ場所に。 さかなさんが黒のスーツにすると言っていたので、 ワタシ的にさかなの妻に見えるべく、黒のワンピースである。 それを聞いたほかの面々も結婚式の帰りか、参観日か、と言うような格好である。
とても「吉野家に牛丼を食べに行く格好」とは思えない。
ぞろぞろとお店に入ると、二階にどうぞ、と通される。 二階、貸切である。
階段を上りきると、カウンターの中に、恰幅のいい、スーツ姿のすてきな 思わず一目惚れするようなオジサマが吉野家の帽子をかぶって微笑んでいる。
写真で拝見した社長ではない。 名札バッジも社長の名前ではない。ダレ?ダレ?
社長秘書の方でした。 さかなさんがずっとメール交換していたのはこのオジサマだった。 シャチョーヒショだからといって松嶋菜々子ちゃんみたいなおねいさんではありませんでした。 さかなさんめげなきゃいいけど。
秘書のオジサマに「お席が決まっております。」と微笑みかけられ、 名前を順に呼ばれる。 あらヤダ、みんなそんな普通な名前なのね!と露見する瞬間なのであるが、 読み上げないのである。 さすが秘書なのである。かゆいところに手が届く御仁なのである。 ここにこうして集まったメンツが、普通に名前を呼ばれることを 「本名が晒される」などと言うヤカラだということを先刻ご承知なのである。すばらしい。
実は今回のこのメンバー、2ちゃんねるがらみで集まった。 みなさんいわゆる、2ちゃんねらさんである。 私はもーしわけないが2ちゃんねるに出入りすることがほとんどない。 いまだに2ちゃんねるのTOPがどれだか知らないし、 ギコもモナーもトロも、区別がつかない。 なんでこの企画に乗っちゃてるのか自分を小一時間問い詰めたい気分である。
友達に、「お、おまえなぁ、あとのメンバーは2ちゃんのコテハンじゃないかっ!」 と言われても、それがどーゆー意味合いなのかさっぱりわからんのである。
さっぱりわからんが、べつにどーということもなく、ただたのしそーである。 ある意味たいへん、私らしいのでよしとしての参加である。
私はさかなさんの隣に座った。 これはたいへん心強い。 さかなさんは「いつまで飽きるかずうっとお昼ご飯吉野家チャレンジ」したくらいの吉野家通だ。 ていうか、今日のメンバーさん私以外は吉野家の常連さんだ。
ものめずらしいのである。 一人だけものめずらしいのである。
これはなんだ。あっ。サラダ入れだ。へー、冷蔵だ! 「それが、おしんこだよ。勝手に取っていいんだよ。」
ものめずらしげな私がものめずらしいのか、同席のメンバーから解説が加わる。
あっ。ほんとに、イスがボルトで固定してある。ガクガクガク(←ゆすってみてる) 「だからね、子供を座らせると、ボロボロこぼすのよ。」
あっ。紅しょうがってこんなもんに入ってるんだ!わーぎっしり! 「底にビンテージ物がたまってるんじゃないかって気になるでしょ。」
通なみなさんは新型七味入れについて談笑。(←ついていけない)
「ではー、そろそろ時間ですので、始めたいと思いますー。 あー、ワタクシ申し遅れました、某月刊誌の某ですー。」
Tシャツにジーンズで学生みたいなお兄さんがしきりはじめた。 あのまま黙ってたらカメラマンの助手扱いされてたと思う。 企画そのものはこの月刊誌のレギュラー企画で、このお兄さんはその担当者だ。 えらい企画の担当で心中いかばかりかとお察しします。
「では、社長を、お呼びしますー。」
と厨房の奥の引き戸の中にがたがたと消えていって、 代わりに、吉野家のユニフォームにエプロン姿で名札をつけた小柄なオジサマが登場。 「ども!いらっしゃい!」 名札に安部とある。 社長である。 吉野家ディーアンドシー社長の「いらっしゃい!」である。
恋に落ちそうである。
なんてステキな笑顔なのかしらっ!
企画のなりゆきをU字カウンターの中からにこにこと教えてくださる。 「酔っ払っててねぇ〜、この企画持ちかけられたときー。」 お茶目さんだ。 酔って盛り上がって、ほいほい約束した結果がこれなわけだ。
「んじゃ、さっそく、贈呈しますか!」
一人一人に社長さんから桐の箱に入った丼が贈呈される。 丼に、名前を入れて世界にたった一つのマイ丼を、と言う企画に、 「名前」を入れたのは3人だけで、 「ねぎだく(゜Д゜)ウマー」と入れたメンバーに丼を渡すとき、 社長はとても嬉しそうに、 「ネギダク、お好きですか?」と訊き、 「ウマー ヽ(゜д゜)ノヽ(凸)ノ ウマー」と入れたメンバーに丼を渡すとき、 「窯元が一番苦労しましたー。」と大笑いした。
実にフトコロの深いステキな人である。 洒落を楽しむ間口の広い人なのである。
2ちゃんねらさんと一緒に吉野家に行くからには、 殺伐とにらみつけながら食わねばならないのだよと、 教えられてはいたものの、 とーてーも、そんな雰囲気ではないなごやか〜な店内である。
注文した名前に間違いがないことを手にとって確認したところで、 一旦丼回収。洗って、いよいよ社長自ら牛丼サービスである。
ここでスタッフ紹介。 本日のテイスティング、関西エリアマネージャー。 本日の接客、サービス部門全国チャンピオン。 本日の飯盛り、開催店店長。 本日の肉盛り、取締役社長。
比類なきラインナップ。 最強のホスティング。
「あ、あのね、きゃおさん、これは普通ではないんだよ。」と 隣からさかなさんが教えてくれる。 ぷ。 さかなさん、どっぷり緊張してます。
接客のおねーさんがお茶を出してくれる。 「熱いのと冷たいのとどちらがよろしいですか?」 どーしよう?さかなさんっ。 「ど、どどどっちでもいいんだよ。」 へぇ〜。 「でもフツーはそんなこと訊いてくれないヨ。」 へぇ〜。
秘書のオジサマが 「今日はお好きなだけサイドメニューお召し上がりください〜。」 どーしよう?さかなさんっ。 「フツーはそんなじゃないんだヨ。」 へぇ〜。
おしんこを食べてみたかったので一ついただいて食べてみる。 あら。おいしい。量は多いけど。 こんだけの量のお漬物って、丼一杯には多すぎるけどなぁ。 つついていたら、 「醤油かけないの?」 「七味かけないの?」 「えっ?七味かけるの?」 などと、おしんこ一つにもいろいろこだわりがあるらしい。
接客チャンピオンがオーダーをとりに来た。 みんな慣れた様子で「並」だの、「ねぎだく」だの頼んでいる。 接客チャンピオン、3人分のオーダーを取ったところで厨房を振り返り、 社長に向かって、 「ハイ、並2丁、ネギダク1丁!」と叫んだ。 社長と秘書と店長が同時に叫んだ。 「誰が!?」
今日に限って誰がどれかが決まってるのである。 店内大爆笑。 吉野家でオーダーに厨房が「誰が?」と返すことなど無いんだろうなぁ。 さかなさん、これもフツーじゃないのね?
「なにになさいますか?」 気を取り直して接客チャンピオンが注文をとりに来た。 牛丼屋さんなんだから、「牛丼。」て言えばいいんだけど、 メニューに無いメニューがあるのが吉野家なので そこをどういったらよいのやら見当がつかない。 困って、周りを見る。 「普通のにしといたら?」 そだね。 「普通の作って下さい。」 「それを並って言うんだよ。」とさかなさんからたしなめるようなツッコミ。
社長、肉盛りは8年ぶりだそうで、1時間も前から練習したそうだ。
社長の並が来た。
ほえ〜。
いただきます。
見た目がたいへんよろしい。 お肉とタマネギのバランスがほどよくて美しい。 ぱく。 あら。お肉柔らかい。 んま、ご飯が、ほわほわ。 おいしーもんである。牛丼て。
はた、と周りを見ると、みんな食べ方いろいろである。 お肉を寄せて半分玉子かけご飯にする人、 紅ショウガてんこもりにする人、 玉子にバンバン七味入れて七味玉子かけご飯にする人。 なんていうか、工夫の光る食べ物なのね、牛丼て。
おいしーおいしーと言いながらいただいてると、 てへへ、と社長が笑っている。
マイファースト牛丼が社長お手製。 牛丼=おいしいものと刷り込まれた。
社長も一緒にカウンターに座って牛丼で会食。 滅多にない機会なのでみんなが口々に牛丼への熱い思いを語ったりする。 それに応じる社長の答えがとてもクリアで、 とてもとても頭のいい親分なのがよくわかった。
そう、親分。 吉野屋について本を読んでお勉強をしていったのだけれど、 吉野家はとても体育会気質な会社なのだと感じた。 まさに目の前にいるのは、男気のある、ステキな親分だった。
全国の各店で働くキャストや、そこに通う客が、惚れるだけの親分だった。
初めての吉野家。 初めての牛丼。
とってもおいしゅうございました。
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