KALEIDOSCOPE

Written by Sumiha
 
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  笑えるかすら微妙な


2005年06月14日(火)
 



 時刻は四時過ぎ。日は暮れていた。秋だからだろう。
 自動ドアが目の前で開く。足を踏み入れると白の洪水だった。床も壁も天井も照明も、そこにいる人間の服まで真っ白。無機質な印象は場所を考えれば当然か。潔癖ささえ感じる清潔な空間。人間がまるでロボットに見える。意思を持たず与えられた命令にのみ忠実に従い動く物体だ。
 ドアが背後で閉じる。押されたように重い足を一歩一歩進める。正面にはエレベーター、左右にはカウンターがあった。人間が一人ずつ配置されている。入ってきた人間に見向きもしない。
 無関心さに気後れしながら「あの、」とりあえず向かって左にいる人間に声をかけた。そこではじめて気がついたように動きを止める。表情から驚きを読み取れない。ガラス玉の眼だ。声をかけられたからこちらに意識を向けた、ただそれだけ。訂正、ロボットではなく人形だ。ロボットはたぶんもっと愛想が良いはずだ。
「初めて来たんですが」
 次の言葉を言うには勇気が必要だった。ここまで来て。ここがそういう場所だとわかっているにも拘らず。
「二重顎の整形をしに来たんですけど」
 行けと無情にも言った家族を恨む。言うだけなら何の苦労もない。ましてや当事者でもない。
 いいわよね気楽でこっちの気持ちも知らないで!
「受付は九階、手術室は十二階になります」
「いえそうではなく」
 淡々と答えた彼女に半眼を向ける。
 初めて来たのだから当然、診察券など持っていない。必要な書類をここでもらえると聞いたから声をかけた――のだが、何だこの対応は。厄介払いという言葉がぴったり当てはまる。
 もういいから帰りたい。だいたい来たくて来たわけじゃない。整形もごめんならこんな人形(人間とは認めない)相手に会話するのもごめんだ。帰りたい帰りたい帰りたい。
 うんざりしながら再び口を開く。既に目が据わっている。剣呑な視線も口調も取り繕う気になれない。
「こちらで書類を頂けると伺ったのですが」
「受付は九階、手術室は十二階になります」
「……だから」
 先程と全く変わらないセリフと調子に全てを諦めたくなった。他人への期待とか未来への希望といったもの全てを。仙人や仏になるとはそういう意味ではないか。期待しない、望まない、信じない。そうすれば誰も恨まず憎まず嫌わずにいられる。どんな相手と話してどんな反応が返ろうとも、こんなものか、で済ませられる。
 俗世に縁を切り仙人を目指してみようか。霞だけ食べていれば太らない。二重顎にもならない。こんな場所に来る必要もない。
 溜息が逃避していた頭を現実に引き戻した。余計な真似を。じゃなくて、溜息つきたいのはこっちなんですけど何そのわざとらしさ満点の溜息は。ケンカ売ってんのかコラ。こっちは初めて来て何もわからないってのに客に対する礼儀も心得てないっつーか言葉のキャッチボールが出来てない。日本語理解できますかそこの宇宙人。いかにも作ってますよー、という疲れた顔すんのもやめてもらえませんでしょうかねえ。あんたの相手したこっちが疲れたっつーの。
 宇宙人は(最早人形とも認めない)カウンターの中をごそごそ探ると二枚の紙を差し出した。勢いで受け取る。
「こちらが後日持ってきていただく書類です」
 最初から出せ。
 二枚あるうちの一枚は記入欄がたくさんあった。書き込んで日を改めて持って来ればいいらしい。もう一枚は文字がびっしり敷き詰められている。後で読めって事か。
「こちらの八枚は」
 まだあんのか。一度にまとめて渡せばいいだろうに、いちいち面倒臭い。早く済ませてさっさと帰りたい。
「受付に出してください。書き漏らしの無いように。すべて書き終えるまでに大体五十分くらいかかります。受付終了が五時ですからギリギリ間に合いますね」
 学校のテストじゃあるまいし何の拷問ですか。勘弁してくれ。目の前が真っ白になった気がする。
 暗雲背負いながらエレベーターに向かう。
 っていうかさ、九階が受付、十二階が手術室って何。一階から八階までと十階、十一階に何が入ってるの。個人経営の病院じゃなかったのか。このビル丸ごとたった一人が所有してるって何の道楽だよ。理解できないしたくない。ああもう本当なんでもいいしどうでもいいから早く帰りたい帰らせて。

という夢を見ました。(夢オチ……)突拍子も無い夢に起きて暫く呆然としてました。どんな夢だ一体。まだ辛うじて二重顎じゃないのにひどいっ!(突っ込むところ違う) 夢判断してもらうとどんな結果が出るのか非常に気になります。どんな夢だ一体。(二回目)中途半端なところで終わってるのはそこで夢が終わって目が覚めたからです。夢とはいえ手術なんぞ受けたくもないので好都合でした。あー変な夢だった。こんなん日記のネタくらいにしかならないよー。(小説のネタにするな)あ、それで夢の中でずっとスピッツの「春の歌」が流れていたのは何故。寝る前も寝てる最中も聴いてなかったのに。



BGM
木村カエラ
リルラ リルハ
スピッツ
春の歌
ケツメイシ
さくら
(だからお前に季節感というものは以下略)
 



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 廻れ廻れ独楽のように  
 止まった時が命尽きる時  
 廻れ舞えよ自動人形 
 踊り疲れて止まるその日まで