◆KALEIDOSCOPE◆ |
◆Written by Sumiha◆ | |
OLD | CONTENTS | NEW |
君が 君が 奪って行く | 2004年10月16日(土) |
アルファベット26のお題 C. cacophony(不協和音) どくん、どくん、どくん。 途切れない音だ。力強く己が存在を訴えている。持ち主と同じだ。自己主張が激しい。聞き苦しく騒ぎ立て、他人の迷惑も考えない。 ――――この上なく不快だ。 「なんのつもり」 目が合った。視線を上げたら見られていた。否、見られていた、と言うよりも睨まれていた。理由もなしに睨まれて黙っていられる性分ではない。睨み返して「なによ。あたしに文句でもあるの」詰問しようと口を開けたのが先か、腕を取られたのが先だったか。 瞬時に知覚できたのは掴まれた手首の痛みのみだった。 視覚はあてにならなかった。目に入る景色がマーブル模様を描き風が耳元で切れあっという間に真暗に。脳が幾多の情報を処理しきれずめまいを起こす。 急激に縮まる距離。それは体の距離であったはずだ。 「さーな」 引っ張られてぶつかって拘束された。そうと理解できたのは、めまいが治まり身体が正常に機能しはじめてからだった。 さーなって何。あんた自分の行動を理解できてないの。 嫌がらせと即答されなかっただけマシなのかもしれない。ことあるごとにひとの神経を逆なでばかりしている男だ。あたしを苛立たせる、または怒らせる天才。ある意味でとてもわかりやすい性格だ。 ならば何故こんなふざけた真似を? 前言撤回。まだ嫌がらせと答えてくれたほうがマシだった。納得できる。この男らしくて疑問を挟む余地も無い。あいまいな返答は気持ち悪い。考えを読めない。理解できない。 体温が額に、頬に、手のひらに。直に伝わってくる。あたたかい。 冷たければ良かった。やはり人間ではなかったのだと鼻で笑えた。現実は血が通っている人間なのだと思い知らされただけだった。 グローブを外すべきではなかった。外出の予定が無くてもきちんと装備を整えていたならこんな事態にも陥らずに済んだ。ショート・ソードもマントも放りっぱなし。武器も防具も手元に無い。頼りは自分の体のみ。 渾身の力で押し返してもそれ以上の力で返ってくる。少しも揺らがない。遠慮も何も無い。まるで鎖だ。絡み付かれて身動きを封じられる。 鼓膜に伝わる自分以外の鼓動。他人の証。自分の鼓動と永遠に重ならない。ずれたリズムを繰り返し繰り返し。いっそ滑稽だ。一回として心地良く聞こえない。耳障りなだけの音の羅列。 くだらない。くだらない、くだらない、くだらない。 世にも稀な、なんて高望みはしない。ただせめて。ひとときでも重なり合い響き合う音を聞けたなら。救いがあったものを。 雑音を聞かされてどうすればいいと言うのか。価値も存在理由も無い、何の観念にも当てはまらない。うるさいだけの音を聞かされているこんな状況に。 一体何の意味が? 「痛いじゃないっ、いい加減に放しなさいよ!」 噛み付く勢いで怒鳴った。あざになったらどうしてくれる。 力いっぱい接近を阻止する。痛いという言葉に反応してか。腕の力はやや緩まったものの開放まで許してくれなかった。 放せっつったでしょーが。 心の中で突っ込みを入れつつ顔を上げる。今までは顔を上げられるスペースさえなかったのだ。 顔なんて上げなきゃ良かった。 氷漬けにされた気分だ。指一本、まつげ一本すらも満足に動かせない。鋭い光に全身串刺しにされる。体のコントロールも奪われ呼吸できない。くるしい。 一人の男の顔のみが視界を占めている。ほかに何も見えない。微動だにできず男しか目に入っていないから、当然見つめ続けるしかない。 「うるせえな少し黙ってろよ」 不機嫌さを前面に押し出して、睨みつけるなんてレベルの可愛い顔ではない。目に破壊力があるなら八つ裂きにされても足りない。塵屑となって消えてしまいそうな。 消えてしまえたほうが楽だった。 鼓動が速度を増す。それでもやっぱり重ならない。べつべつの音を刻み思考もバラバラに弾け飛ぶ。 耳元でがなり立てる二つの心音に泣きたくなった。涙は決して目の外へ出てくれなかったけれど。 ――終。 稿了 平成十六年九月十九日日曜日 改稿 平成十六年十月十六日土曜日 お題を見て(カップリングとして書くなら)これはルークリナしかあるまいと。思い込んだら結果がこんなことに。なんか違うー! シリアスで暗めだったんです当初の予定では。これ甘いよ? な・ん・で・だあぁぁぁっ!(頭抱え) ×リナ前提の魔剣士さんとお姫様の会話(つまり魔剣士リナと姫リナの魔剣士VS姫の話)でも良かったかもと今になって思ってみる。あ、もちろんその場合はカップリングじゃなくて単なる二人の会話。コンビにすらなりませんハイ。寒いだけの会話になりそう。低レベルなケンカじゃなくて底冷えした感じの殺気が見え隠れするような。う、想像しただけで薄ら寒く。会話にしたら「その口、縫い付けてやりたいわ」「料理も裁縫も満足にできんお姫様には無理だと思うが?(せせら笑い)」「は、岩に何を言われても痛くも痒くもないわね」「随分と甘やかされて育ったらしいな。口の利き方を知らんと見える」な感じ。えーと私真面目にキャラクターを愛してるんですが作品から読み取れますか?(汗) 勢いがあり且つ短いせいもあり、すらすら書けました。所要時間約二時間(修正にかかった時間を除く)。驚異的なスピードだ(私にしては)。遅筆には変わりないですが。ああ楽しかった! 大好きだ。えと↑で予定と違ったと叫んでますが書いてる間は楽しかったです。たとえ不本意な結果に終わっても読み手視点で見るなら好きです。自己満足ナルシスト万歳。自分がまず楽しめなきゃエンターテイメントなんて作れないのさっ。苦しみの部分のほうが多くてもな。良さってのはそういう部分から生まれるのだと信じたいって何の話だ。 抽象的な表現はわざとです。いろいろ想像して楽しんでください(笑)。理想とはかけ離れた話になってしまったのが残念でなりませぬ。Bもあまり満足のいく出来ではなかったがCは更に。がんばろー。 これでストック尽きました。もうあとは書かねば増えない。閑話休題、書き終えた日のおかしさには突っ込み入れないで下さい(笑)。なかなか日記にアップする勇気が無かったんです。書き直せばいいのかもしれませんが現時点ではこれで精一杯。ほかにいじりようが無いし他のネタを思いつかないしでアップ。あっぷあっぷ。ぎぶあっぷ! 書かないと錆びつくよ腕が! つかどうやって錆び取りすればいいのー!!(いや書くしかないんだけどさ) 集中力ぷりーづ……。 ところで後書きが一番楽しいです。小説で力尽きて書ききった満足感と言うか達成感があるから。やれるだけやったと思えるから。やっぱり書く事が好きです。何度けつまずいても落とし穴に落ちて底でべそべそ泣いても。多分それだけは一生変わることの無い真実だと思います。 | ||
OLD | NEW | CONTENTS | HOME |