◆KALEIDOSCOPE◆ |
◆Written by Sumiha◆ | |
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それもいつかは終わるのさえ信じられない | 2004年10月03日(日) |
アルファベット26のお題 B. birthday(誕生日) あまりにも短かった。生れ落ちて現在に至るまでの時間を振り返れば一瞬と言える。閃光のように消え去った自由だった時間。束縛を知らず、束縛と気づかぬうちに束縛されていた。 この身が絶えず流れつづける時間を感じられないせいなのか。どうしても思いは時間に逆行する。懐かしくもあり嫌悪している過去へと。苛立ちと奇妙な快さを与えてくれるあの頃へ。 理由など疾うに忘れてしまった。嬉しいという感情を抱いた理由も。残っている記憶は記憶などと到底呼べない。歴史書と同じ。そこから感情を抜き出せない。 一年に一度、巡り来る生まれた日。おめでとうと言われありがとうと返す。笑顔と目で見て触れられる祝福の形。惜しみなく与えてくれる人々と溢れ出る感謝の気持ち。 大切でかけがえのない日々だと思っていたそれら。いまでは何が嬉しかったのか、何がそんなに大切だったのかも思い出せない。 生まれ落ちた。ただそれだけの日だ。祝う理由がどこにある。生を受けても瞬く間に死んでいく。矛盾を平然と受け止め尊ぶ生き物たち。円を描いているだけだ。決して前進はしていない。前に進んでいるようで、その実、同じ道を延延とぐるぐる歩んでいるに過ぎない。死を受け入れられない生き物らしいとも言える。理解はできないが。 愚行に気づけぬ者どもの感傷だ。生まれた日を祝い、祝われて喜ぶ理由は生に執着する生き物にしかわからないのだろう。結論は常にここで止まる。 数えるのも飽きるほど生きればわかる。生きる無意味さに。滅亡への憧れに。 生まれた日など特別でも何でもない。変わらない日常に埋没する普通の一日だ。何も特別ではない。祝う必要も理由も何一つ無い。 時間には何者も逆らえない。断ち切れない流れだ。その中にどうして意義や意味を見出せようか。 すべてを創造されたあのお方以外に価値などあろう筈もない。 だから還元するのだ。例外なく。自分も世界も等しく。あのお方の御許へ。生まれた意味ならそれで充分だ。それ以上でも以下でもない。滅びるための生。 光が存在しない暗闇の中で、身動きの取れない氷の中で、ひたすら待っている。夢見た日がいつか来るようにと。ひとりきりで。いつ終わるとも知れぬときを眺めながら。 ハッピー・バースデー。 くだらない戯言だ。ひそやかに嗤った。 ――終。 稿了 平成十六年九月十九日日曜日 改稿 平成十六年九月二十二日水曜日 | ||
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