KALEIDOSCOPE

Written by Sumiha
 
  OLD CONTENTS NEW




  心の鍵溶かして


2004年01月23日(金)
 



◆円舞曲(仮)・1

 月が中天をやや過ぎたころ。
 薔薇園はしんと静まり返っている。
 誰もいない訳ではないようだった。人影が奥まった場所にふたつ――――。
「……すこし冷えるわね」
 ひとつは小柄な影だ。髪が短ければ少年か少女か見分けられない。この薔薇園の現持ち主だ。
 少女は寒そうに両腕で自分を抱いた。ネグリジェの上にガウンを羽織ったずいぶん無防備な姿だ。
「時間が時間ですからね。なんでしたら僕のジャケットをお貸ししましょうか?」
 もうひとつは中肉中背の男だった。宵闇に溶けこみそうな漆黒の髪、同色の瞳。服も黒い為に肌が異様に白く引き立っている。
 かんばせには笑みが浮かべられている。一見して人の良さそうな、だが底を隠している表情だ。
「結構よ。すぐ戻るつもりだから」
 言葉をきっかけとして足もとのトートバッグから紙を数枚、取り出した。迷いなく、すっと男に差し出す。つっけんどんとも言える仕草だった。
 男は少女の態度を意に介さず紙を受け取る。さっと目を通すと満足そうに頷いた。
「それにしても良かったんですか、本当にここで」
「今更なに言ってんのよ。はじめに時間を指定してきたのはあなたでしょ。真夜中にあたしが遠出するほうが不自然だわ」
 会話は囁きに近い。草木も寝静まる時間とはいえ、誰も来ない保障は無い。深夜はただでさえ音がよく通る。小声になるのも当たり前だ。両者ともに親しげに会話できる間柄にないのだ、本来ならば。
 最初に接触を試みたのは少女の方だったか。日々の雑多な記憶に埋もれ、二人ともが思い出せない。
 時間を指定したのは男、場所を指定したのは少女。この場合は共犯になるのだろうか。
「じゃ、次は新月の夜にね」
 見渡す限りの薔薇の花、夜空の満月、次の約束。しかしそこに甘い感情は入らない。
 少し残念だ。男は表情に出さず思った。
 なにしろ彼女は彼女に薔薇園を与えた恋人に心奪われているのだから。
 大した皮肉だ。皮肉でなければ面白い冗談だ。
「――――ええ、また新月の夜に」
 応じて少女の背を見送った。
 満月と新月の深夜にこうして何度会っただろう。会う度ひとことふたこと話し別れる。渡されるのはつれない言葉と態度と、……機密書類だ。
 少女が恋人と暮らす屋敷に隣接した薔薇園で一人物思いにふける。
 今度会うときには戯れに手を取ってみようか。抱き寄せ腕の中に閉じ込めてみようか。
 彼女は恐らく接吻にさえ抵抗を示さない。戯れだと理解しているから。行為に意味が無いと知っているから。暇潰しでしかないこちらの意図を承知しているから。
 きっとタイムリミットはもうすぐだ。彼女は期待通りの何かをやらかしてくれる。予感が強まる。月が形を変えていくごとに。
 やられたと舌打ちしたくなるくらいに楽しませてください。せっかく手出しをせずに大人しく暇潰しと称して付き合っているのですから。
 男は一方的な要求を見えなくなった少女に投げかけた。
 少女は男がどんな思惑を持っているか知っている。その上で男を利用している。どんな危険も顧みずに。例えば今日のように彼女の恋人の敷地内で別の男と逢瀬を重ねたり。
 ――――とは言え。
 彼女もいなくなった今、長居は無用。
 不法侵入で捕まったら主に何を言われるか。
 笑みを苦笑に変える。
 主に怒られる前に――もとい、誰かに見つかる前に退散するとしましょう。
 男は靴音を立てず、その場にいた痕跡も一切残さず立ち去った。咲き誇る薔薇に見向きもしないで。



――終。

稿了 平成十六年一月二十二日木曜日


なんですかこれは(書いたのはあなたです)。いやリナ総受け話パラレルネタをちょいと温めていたら書きたくなってしまって。かなりな長編なので書く予定はありません。こうしてたまーに日記に書き散らすかもしれませんが。バラしてしまいますが恋人はゼルさんです(その呼称はやめい)。次はガーヴとの絡みを書きたいな〜♪ 大男(笑)と小娘のカップリングは萌えですのん。体格はさて置くにしてもガーヴリナは萌えです。懐の深さは剣士とタメを張れると見た。当人はガラじゃねえと言うかな(笑)。

あ、それで登場人物の女性の方(笑)はおわかりかと思いますが、男性のほうは……名前出てませんが……わかりますよね……? 口調の書き分けができなくても心情表現と行動で書き分けられるなら(それができるのであれば!)いーんです。しくしく。

それにしても似非だ。エセ三人称。難しい。一人称に慣れるとダメダメです。がふっ。

気が向けばこれの直後のリナの話も書きたいですな。するってぇとガーヴより先になるのか。うにゅう。ガーヴリナ書きたいつーか読みたい(のに無い)(泣)。

タイトルはワルツと読んで下さい。消去済みの去年の大晦日に載せたあれを輪舞曲(こっちはロンドと読んでください)にしたので(笑)。つってもまだ仮決定。ちなみに回旋曲もロンドですが手もとの辞書によると輪舞曲とは別物だそうです。ネットでざっと調べてみたところどっちも同じって書いてありましたが。一応辞書を信じるということで(笑)。詳しくメモ帳代わりに書いておこう。

ロンド
ronde(フランス語)
輪になって踊る踊り(の曲)。輪舞曲。
rondeau(フランス語)
〔器楽曲の形式で〕同じ主題の旋律が何度も繰り返される間に異なる旋律がいろいろはさまれるもの。回旋曲。

新明解国語辞典第五版(三省堂)より。……意味で取ると輪舞曲より回旋曲のほうが合ってる。変えるか。字面は輪舞曲のほうが断然良いのだが(主観)。どうすべ。

んで曲関連ってことでちょうど思い付いたのが、アメリナ中心リナ総受けの女子校ネタ。あれのシリーズ名を狂詩曲(ラプソディ)にしようかと。どたばた感がそれっぽいかなと思いまして(笑)。どたばたつってもコメディじゃないんですけどね。一応シリアス。書いている私はギャグのつもりで大笑いしながら書いてますが(……)。どうでもいいが↑の小説について語ってないぞ。



◇雑感

文中リンクで申し訳ないのですけれども。猫を飼ってる皆様はご注意を。全く知らなかったので度肝抜かれました。人道に反するっつーか……理解できん。なんでこんなことできるんだろう。
http://www.felis-catus.com/animal/nekotori.htm

続いて猫関連をもうひとつ。写真サイトさまで猫の写真付き日記を公開されてらしたので、お邪魔してみました。ねーこー!(悶) かかかかかわいすぎるっ! いーなーねこ……。いま冬だしあったかそう(そっちかい)。いえそれだけではありません。本当に可愛い。猫かわいがりという言葉がありますが、意味がわかった気がします。カワイイ可愛い。もし飼うとしたら(飼えませんが例えばの話で)猫より犬だと思っていたんです。(犬は人につき猫は場所につくとも言うし、猫は三才児並の知能、犬は五歳児並の知能があるとか諸々聞いて)考えがころっと変わりました。猫かわいい(あんたなあ)。

タイトルは本日も歌詞から。好きなんですこの曲。一回聴くと何度でも聴きたくなってしまう危険な曲(笑)。Mixtureに入れてほしかった。

某がやらかしてくれました。
某「えーと今日は、三月の」
今月は一月です。勝手に二ヶ月も先に時間を進めないよーに(笑)。
私「え? 三月?」
某「あ違った。四月の」
一月です!(笑) あまりにナチュラルに言うので未来の予定でも書いていたのかと思いました。何故そんな大胆な勘違いをしたのだ。

昨日の昼間からずっと風が強いです。……春一番?(違います)



BGM
B'z
OFF THE LOCK
 



 OLDNEWCONTENTS MAILHOME




 廻れ廻れ独楽のように  
 止まった時が命尽きる時  
 廻れ舞えよ自動人形 
 踊り疲れて止まるその日まで