KALEIDOSCOPE

Written by Sumiha
 
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  1/ボスが来た!!


2003年06月13日(金)
 



返却所にも書きました通り、明後日の十五日日曜日午前五時〜六時にサーバーメンテナンスがあります。三分程度で終わるそうです。アクセスできない時は少し時間を置いてからアクセスしてみて下さい。

さて以下、本日もジェイドリナ100をアップしない理由です。明日は100質やります。



01) 古宿

 窓がガタガタと鳴っている。
 心なしか、宿自体も軋んだ音を立て揺れているような。
 バラバラとやかましい雨音、亡者の怨嗟の声を思わせる風の音。
 思えば旅に出てから初めてだ。天候がここまで悪化したのは。リナたちは宿についてから降り出した雨にラッキーだと笑っていた。そのときはわたしも同じ気持ちだった。否、いまでもそうだ。嵐の中での野宿よりよほどマシだ。雨風しのげるという意味では。
 夕食までは平気だった。一人ではなかったから。平気と言うよりも気にならなかった。気付きもしなかった。いざ寝る段になってからだ。恐怖を覚えた。
 自分以外の誰もいない部屋。真っ暗闇の中、聞こえるのは自分の呼吸と外の音。
 暴風雨とは良く言ったものだ。雨が宿の屋根や窓を殴る。風が地上にある生物、無機物をいっしょくたに吹き飛ばそうと荒れ狂う。――まるで自分の居場所さえ吹き飛ばされそうな。朝になったら自分一人だけが荒野にぽつんと立っているのではと、突飛な考えさえ出てくる。
 セイルーンにいた頃、旅に出る前。雨が降っても風が吹いても恐くなんかなかった。逆にわくわくしたものだ。いつもと違う外の景色を見せてくれたから。絶対の安全圏にいたから。建物の造りもしっかりしていた。雨音も風の音も気にしないで眠れるほどに。王宮の造りと比較しても無意味だとわかっている。それでもどうしても慣れ親しんだ自室との違いを考えずにいられない。
 雨や風の音をうるさく感じるなんて初めて。滞在している建物が壊れるのではと危惧するのも初めて。月明かりも星明かりも無い、真っ暗の部屋を怖いと思うのも。一人が孤独だと思うのも。初めてだ。
 目は冴えるばかり。瞼を閉ざし寝返りを打っても一向に眠くならない。
 ――――リナはどうしてるかな。ガウリイさんは?
 ついてない。リナと一緒の部屋なら何も考えずに寝られたのに。部屋にいるのが自分ひとりでなければ。
 よっぽど隣――リナの部屋――に行こうかと思った。行こうと思ってやめた。寝てしまっているかもしれない。起こしたくない。嵐が恐いと泣きつき子供っぽいと笑われるのも遠慮したい。だが現実問題として眠れない。
 暗くて何も見えない。被害妄想だ。リナもガウリイさんも同じ宿に泊まっている。孤独ではない筈だ。何より自分の意思でリナ達にくっついてきたのに。ひとりだと感じてしまうのは、どこかで卑屈に思っているのか。
 望まれて王宮を出た訳ではない。強引に同行を了承させたのだ。本当は迷惑だったのでは? リナ達がなにも言わないのはただ遠慮しているだけで。
 ……なさけない。わたしは何を疑っているのだろう。
 全部、暗いのが悪い。月や星が見えていたら疑心暗鬼にもならなかった。
 むくりと身を起こす。
 ぶつぶつ呪文を唱える。両手の中に淡い光を生み出した。
「明かり(ライティング)」
 光量を絞った魔法の光を天井に貼り付かせる。暗闇が怖いなら明かりを作ればいい。ランプだと寝入ってしまったら消せない。明かり(ライティング)なら効果が切れたら自然に消える。もし朝になって消えなくても微弱な光であれば目立たない。
 部屋の中をぼんやり見渡せる明るさに漸く安堵した。
 風雨と宿の軋む音は止まらない。恐怖は未だに消えないが朝までには眠れるだろう。……たぶん。



最後まで書ききる自信がないので一旦切ります。日付かわって書き上げても小説だけは今日の日記に書き足すという形を取らせてください。(^^;)



BGM
鬼束ちひろ
infection
LITTLE BEAT RIFLE


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 揺れる――揺れている。
 風がまた強く吹きはじめているのか。
「アメリア!」
 はっと目を開けた。まぶしくて目が痛い。暗闇の中は当然なにも見えないが、白すぎる光の中でも何も見えない。
「……り、な?」
 声でなんとか判断した。くっ付きたがる瞼をこすり身を起こす。
 リナがやっと起きた、と手を腰に当てた。
「もー、あんまり遅いから心配したわよ」
 どうやら宿が揺れていたのではなく、リナが私の体を揺すって起こしていたようだ。
 目を開けるのは諦める。擦っても痛いだけだった。
「ん〜……」
 動かない頭でリナのセリフの意味を考えた。
 遅いから心配になった。――遅い? なにが?
「どうしたの? 夜更かし?」
 夜更かし? だれが?
 部屋にはリナとわたししかいない。となればリナは当然わたしに問いかけているのだろう。
 わたしが夜更かし?
 ――――ああ、そうか。結局、夜明け間近に漸く眠れたのだった。
「うん――ちょっと、ねむれなくて」
 眠気が居座り続けている。夢の中に逆戻りしそうだ。無理やりにでも目を開ける。朝陽が目に沁みる。
 どうしてこんなに眩しいのか。部屋をぐるりと見まわし気付いた。カーテンが開いている。リナが開けたのだろう。わたしはしっかり閉めてベッドに入ったから。
「ああ、今朝まで雨も風もすごかったから。ビックリしたでしょ」
 うんと頷く。正直、驚きよりも恐怖の方が大きかったが。
「あたしは懐かしかったけど」
 笑みを含んだ声に首を傾げる。リナは以前に同じ状況でこの宿に泊まったのだろうか。
 疑問がそのまま顔に出ていたらしい。リナは違う違うと片手を左右に振った。
「そうじゃなくて。実家を思い出したのよ。嵐が一年に二回か三回くらい来るの」
 リナが窓の外に目を向ける。つられてわたしも外を見た。
 ところどころ雲が残っているもののキレイに晴れている。今日は昨日と違い、いい天気に恵まれそうだ。外を散歩したらさぞや気持ちいいだろう。
 リナも同じ感想を抱いたようで。
「今日は天気良く……あっ」
 ところがセリフ半ばで急に窓に駆け寄る。何事か問う間も無かった。
 リナが枕元に戻り私の腕を掴む。
「ほら起きて起きて!」
「え、なに」
 満面の笑みしか返してくれない。ベッドから引きずり出される。
「はやく!」
 もつれる足で必死に歩く。連れて行かれた先は窓だった。リナが指差す方向へ顔を向ける。
「いきなりなに……」
 文句を言えたのはそこまでだった。
 リナの指の先、空の一点。淡い七色の色彩が静かに佇んでいる。
「さっきまで雨降ってたのよね。だから見られると思ったら案の定だったわ」
 満足そうな声の半分も耳に入らなかった。
 端は既に消えかけていた。残っている部分も徐々に薄れていく。空に溶ける色。言葉ひとつ出てこない。呆けたようにただ見入る。
 完全に見えなくなっても身動きできなかった。
「あたし嵐は嫌いじゃないわよ」
 唐突なセリフにリナへ視線を向ける。彼女は空を、消えた虹を見つめていた。
「嵐だけじゃなくて雨全般も。雨はいつかやむわ。虹も見せてくれる」
 ――だから恐くないわよ。そう言われたような気がした。
 なんだ。風はわたしの居場所を奪ってなんかいかなかった。月や星を隠した雨雲は虹を連れて来た。
 何を不安に思っていたのだろう。なにが恐かったのだろう。わたしの居場所はちゃんとここにあるのに。
 心配したわよ――。
 ふと寝起きに聞いた言葉を思い出した。
 眠れなかった間の不安も恐怖も欠片残さず無くなっている。嵐が去ると同時にわたしからも去って行った。けれど決して嵐が消した訳ではない。
「さぁって、ごはん食べに行きましょ。ガウリイ待ちくたびれてるわよきっと」
 リナが笑って窓から離れる。
 虹を一番に見せてくれたリナ。起きてこないわたしを心配して、起こしに来てくれた。
 たたっと小走りに走り寄る。嬉しさのあまり抱き付いた。
「わわっ」
 もう疑心暗鬼に陥る日は来ない。嵐を恐いとも思わない。部屋に一人でいても不安にならない。
「ちょっとアメリアー、重いんだけど」
 乙女に失礼ねっとじゃれあいながら部屋を出る。
 ありがとう。
 聞こえないようにちいさく呟いた。面と向かって言うのは照れ臭いから。
 ――――リナが微笑った気がした。



――終。

稿了 平成十五年六月十四日土曜日



えー、らぶらぶですね(笑)。以上。<おい

えとこれは姫が眠れぬ夜を過ごしている間、リナは「こんな天気じゃ盗賊いぢめできないじゃないの」と舌打ちして早々に寝てしまったというお話です。(待たんかい)

またしてもタイトル(テーマ)から離れているような気がしますが、これはこれで満足してます。書きたかったのは姫が起きるまで、なので(笑)。私にとってはタイトルから外れてません。あとおまけがありますが、あとで書きます。ジェイドリナ100を終えたら載せようかなあと。

小説の後半、食後に書いたので文章が荒れていたらすみません。いろいろ言い訳はあるんですが黙秘させて下さい(苦笑)。

全然関係ありませんが原作6巻126頁の姫のセリフ、「わたし、遺品をあさる」はどういう解釈をすれば良いのでしょーか(笑)。シリアスに考えれば小説一本書けますが(笑)。

午前十二時一分に書き終えました。惜しい!(笑)
 



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 廻れ廻れ独楽のように  
 止まった時が命尽きる時  
 廻れ舞えよ自動人形 
 踊り疲れて止まるその日まで