「いつもにこにこ・みけんにしわなし」
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「ただいまー!あー!もうモックンちょっと来てっ」 帰るなりミーが兄を呼びつけて注文をつけた。
「ジャージのズボン、あげすぎやねん!」
なにがありましたか。
「おかあちゃん聞いてー! 今日は全校集会があったわけよ! それで、ミーの友達が、”ミーのお兄ちゃんて、どれ?”っていうからさ、 探して、あれ、って言ったわけよ! そしたら! モックン、ジャージ上げすぎて、パッツンでさぁ!足首見えてるわけ! ”えー!あれがー!”って言われたわけよミーはっ!」
「え~、見えてないよぉ~。フツーやんかぁ~。」と兄が反論するも 「あかんっその位置ではあかんのっ、もうちょっと、ここ!」と 兄のジャージをつかんでビミョーな位置までずり下げて指導。
「だってぇ。ボク、腰パンは気持ち悪いからいややねん。」 「腰パンで、パンツ見えてるのは、あかんねん!けど、パッツンはもっとあかんねん!」 「ええやんかぁ、こんなことくらい~」 「あっっかーーーーんっっ」ミーは一呼吸置いて言い放った。
「ミーが恥ずかしいねんっ!」
のほほんとして他人ごとの兄だが、妹にとっては我が身に降りかかる災難らしい。
「それからほれ!髪!」 「何よお、フツーやん。」 「立てて!」
あぁ。なるほど。寝グセは直すものの、ヘルメットをかぶったままの素直な髪形ですね。
「あかんの?」 「あかん!立てる!友だちに”な、なんか、あれね。”って言われんねんでっミーがっ」 「あれってなんやねん。」 「ほら、だからあれ、・・・えー、そうっ地味! このままではミーのにーちゃん、ジミーズに仲間入りやっ」
おとなしくて目立たない地味な男の子は、ジミーズと呼ばれて女の子に避けて通られてるらしい。
「別にええのにぃ、地味が好きやのにぃ。」 そういうあなたの滋味が母も好きなのにぃ。
「あかんっ!あとはなぁ、そのソックスもだっさい!」 「へ???靴下の何が?」 「そういうスポーツソックスは、あかんことはないけどモテへんの! モテるのはな、チェックとか、細かい柄のやつ!おかあちゃん!!」 「ハイっ」 ここでミーの指差し確認は私にも向けられた。 「明日、ちゃんとしたソックス買ってきて!」
うう。
「いいやんかぁ~」と妹の迫力に押されっぱなしの兄。
「んー、そうねぇ。おかあちゃんの希望としてはさ、 ”ミーちゃんのお兄ちゃんて、どれ?” ”あれ” ”わぁ~結構イケテルぅ” っていうほうがいいねぇ~。」
「やろっ?今のままやったら ”わぁ~なんであれなん?”やでっ!」
「あれ、ってやめろあれって。」
「でもってさ、 ”モックンの妹って可愛いよなぁ” ってモックンの友だちに言われるのがおかあちゃんの夢。」
「あ。それは、言われるよ。」
あ。言われてんのか。 あー、だからかー。 ミーちゃんは同学年の友だちからも、先輩からもかわいがられて こんなかわいいミーちゃんのおにいちゃんて、きっとどんなに! という期待の目で兄を紹介させられてるわけか。
で、この兄か。
・・・・・・・なるほど。そう思えば地味ですな。 だってよ。モックン。
「うぇ~、めんどくさいやんかぁ~。」 「あっかーん!」
さっそく、ズボンの位置の微調整を厳しくたたきこまれたあと ドライヤーで髪を立てる量と位置決めの指導が入りました。
「うん。これなら、まぁまぁイケてる。 わかった??あしたから、それやで? おかあちゃん、靴下、絶対買うてくるねんで!」
ハイ。
さて、地味から脱出なりますかどうか。
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