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  2001年10月01日(月)   「天使のくれた時間」  

ニコラス・ケイジの涙をためたような瞳に会いたくて、
 映画「天使のくれた時間」を観にいきました。

 ニューヨークの「リッチな白人」になった彼が、
 クリスマスの夜、帰り道で魔法をかけられてしまう─誰に?
 きっと、天使かなにか、そんな存在に。

 出会ったのは、コンビニのような店。
 黒人のチンピラの姿をしてあらわれる天使は、彼を、
 もうひとつの人生へ、選ばなかった人生へ─まばたきのあいだに─
 ほんのひとねむりの間に─放り込むのです。

 そこで経験した、別れた彼女との幸福で平凡な結婚生活。
 魔法がとけるとき、彼の望んだ人生は?彼女の答えは?
 人生でほんとうに大切なものは何でしょう?

 というお話なのですが、
 わたしがとてもひかれたのは、
 コンビニでの恐喝事件を仲裁した
 主人公が魔法をかけられる前に、天使がひとりごとのように
 つぶやく、いくつかの言葉です。

 「天界でもなかなか見ない裁き方だ」とか、
 「今、お前の輝きが見えた」
 「めったに見ないくらいだ」
 というようなことを、ブツブツと。

 そして、主人公はチャンスを与えられます。

 わたしは、そういう「裏の世界」とでもいうのか、
 それを天使といってもいいし、別の呼び方でもいいのですが、
 そうした世界の存在たちが、上下関係入り乱れて、
 複雑きわまる人間たちの運命を後押ししたり、
 気付かれないままに、世界をあるべき姿に保とうとして
 いまこの瞬間も、さまざまな働きかけをしている──というような
 映画を、生きているあいだに観たいと切に願っています。

 わたしたちが偶然としてかたづけることの
 裏側に、何があるのか、
 特定の宗教にかたよらず、非難することもなく、
 いかにもこれが「世界」なのだと納得してしまうような、
 それでいて娯楽としての映画が、観たいのです。
 その映画にも、ニコラス・ケイジには、涙っぽい瞳で、
 出ていてほしいかな。(マーズ)

「天使のくれた時間」
主演:ニコラス・ケイジ ティア・レオーニ
監督:ブレット・ラトナー 
2000年/アメリカ