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  2001年07月21日(土)   「GODZILLA」  

昨夜TVで「GODZILLA」(ローランド・エメリッヒ監督)を見ました。
実はロードショーでも見てまして、
大くの人は日本のゴジラと違う、と文句を言いますが
日本のゴジラと同じだったらハリウッドで作る意味が無い、
映画の内容という点は別にしても
ゴジラのポジションが全然違ってて私は好きですね。

日本の「ゴジラ」(特に第一作)の来襲はモンスターというより
台風や地震といった自然災害に近いものがあります。
雰囲気の一番似ているパニック映画といえば
私は「ボルケーノ」(ミック・ジャクソン監督)じゃないかと思います。
ロサンゼルスの街中で噴火がおこり、
流れ出る溶岩流と噴出の恐れのあるマグマの流れから
なんとか住民を救おうとトミー・リー・ジョーンズ演ずる
危機管理局局長と地元消防団や地域住民が奮闘する。
圧倒的な大自然の脅威に対する恐れ、無力感、
人知を尽しその進路を遮る努力をする人間。
来るぞ来るぞ、ゴジラが来るぞ、というまさにあの感じ。

日本では強い力を持った異質なものは
ひっくるめてみんな神様です。
ゴジラも破壊的で強大な神様です。
モスラに至っては最初から守神だと言い切っていますね。
途中正義の味方になっていた時期はヒーローの時代に
乗っていただけなので別としても、
最近の作でも特殊能力を持つ娘がゴジラと
コミュニケーションを取ろうとしたりする荒唐無稽な話になったりして、
怪獣とお話して帰ってもらうという日本人の発想も相変わらず凄いですが
巫女が荒ら振る神様を鎮めるという手が
平成の時代になっても有効とされるのでしょう。
「GODZILLA」の映画中でも日本人はこの怪物を
「GOD」だとしている事になってますね。
「ゴジラ」の映画を見た外国人は怪獣が神様扱いされているのを
面白く思ったのでしょう。
GODZILLAがゴジラと違っている事を怒る人は
ゴジラ様を奉る敬虔な信者なのです。

GODZILLAのほうは徹底的に人類と利害の対立する
生物として描かれています。
おびきよせるために生の魚を積み上げるシーンはちょっと感動。
(日本のゴジラのほうは放射性物質を求めて原子力発電所を襲います)
食欲と繁殖欲を満足させるためにニューヨークに現れた爬虫類と
アメリカ人(フランス人・笑 もいたな)は
コミュニケーションを取ろうなどとは考えません。
習性を研究しあらゆる手段を用いて壊滅するのみ。
日本だと絶対、孵化した仔ゴジラを「可愛い」と言って
女の子が抱いていって仲良しになる話になりますよね。
スピルバーグもそうかな。
でもそうはいかない。
モンスターは神に逆らう邪悪な存在なので見逃す訳にはいかないのです。
(ジュラシック・パークの恐竜達は、直接人間を喰う個体以外は
基本的に人類と利害が対立しない普通の爬虫類で、モンスターではありません)

などと言いながら巨大な怪獣を畏敬の念で見ようが嫌悪の念で見ようが
それとは無関係に、ゴジラ映画の醍醐味は
実際に見慣れた巨大建築が軽々と塵芥と化してゆく
あの現実世界の破壊感覚ですよね。
新宿の地下でゴジラ映画を見た時は、地上に出たとたん
さっき破壊されたばっかりの高層ビル群が無傷で見えて
一瞬自分の現実が歪む感覚が味わえました。
エンパイヤ・ステートビルディングはキングコングの縄張りだし
ワールド・トレード・センターは現実に爆破テロを受けたし、
じゃあ何を壊す?わくわく、ってな感じです。

かっての大震災を私はCNNニュースで知りました。
30分毎に流れるCNN HEAD LINEでは
現地レポーター達も段々悲惨さの表現のしようがなくなっきて
「まるでGODZILLAに襲われた町のようです!」
と叫ぶ人もいました。
不謹慎なようでいてこれは的確な表現です。
ただし、逆です。
日本はこれまでに何度も抗い難い災害に見舞われ、
その度に以前に倍する復興を遂げてきました。
台風、噴火、地震、津波、空襲。
それらに対する予兆、不安、恐怖、逃亡、諦念。
そして対面、対抗、対決、対処、
既成物の破壊による爽快感、復興への意欲。
それらの気分が具現化したものがゴジラです。
諸行無常、色即是空、
となるとゴジラは仏様でもあるのか? (ナルシア)


「GODZILLA」(1998年・米) 
監督:ローランド・エメリッヒ
出演:マシュー・ブロデリック / ジャン・レノ / ハンク・アザリア