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| 2001年06月13日(水) |
「小説家を見つけたら」 |
「グッドウィル・ハンティング」では数学の天才少年(白人)が、
本作では文芸の天才少年(黒人)が主人公。
みごとな対である。
どちらも、ある相手に出会って、天賦の才能を外に向ける。
ある相手──この場合は、ブロンクスで隠遁生活を送る
カリスマ老作家、ショーン・コネリー演じるウィリアム。
人生、上から下は見えても、下から上は見えない。
頂上にいる者は、ふもとでアルプスの道を目指す日々を知っている。
いつか、どんなに短い期間であれ、ふもとの道をたどった
ことがあるからこそ、頂上にいるのだ。
いやきっと、ほんの少し標高が上がってさえ、
見上げる目には霧がかかってしまうのかもしれない。
だから、前を歩く才能を理解できずに否定する。
だとすれば、お互いに理解できる存在というのは、
ほんとうに同じ標高に立つ者だけということになる。
しかも、頂上をめざす欲求は生まれつきである。
ただそう生まれついているのだ。
頂上を望まず、野で平和に、ある意味では聖なる生活を
送る欲求と同じに、それは誰にも止められない。
老人にとっての若者。
時間の頂上に老人はおり、若者は登り口にいる。
立っている標高(視線)が仮に等しくても、若者には経験がない。
かつて来た道は、そこに見えている。
見えているからといって、足元の大石小石を
踏み越えるには、若者の足で歩くしかない。
足をすべらせたときに、手を差し出すべきかどうか。
かつて選んだ分かれ道の、もう一方が見えないように
老人にとって、死の意味だけはわからない。
そして、出会いはフィフティ・フィフティである。
もしどちらかが道を登りすぎたら、
すぐに分かれ道がやってくる──心の旅でも、時間の旅でも。(マーズ)
原題:Finding Forrester
監督:ガス・ヴァン・サント
出演:ショーン・コネリー / ロブ・ブラウン / F・マーリー・エイブラハム