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:::2003年07月18日(金)
:::生きることの意味と死ぬことの理由




悲しい結末へと、抗うことも許されずに、終わりも見えず、ただ、その道の先にあるものだけは知らされて、ゆるゆると現実の硬い輪郭が明らかになっていく。どうして私はなにも出来ず、人形みたいにただ涙腺だけを働かせて座っているしか出来ないんだろうと思う。どこかに劇的な解決策があるなんて甘い夢を見たくても、そんなものがないことは知っている。けどそれは知識として知っているだけで、本当のそれがどんな感覚を伴うものなのかとか、冷たいのか暖かいのか、激しいのか静かなのか、そんなこと考えていないけど考えているみたいな気がする。


絶対嘘だと思ったの。
だってあんなに軽薄な笑い声のあとで。


それでも、それでも、それは本当のことだ。どんなに偽っても、どんなに冗談みたいに誤魔化しても、本当のことなんだ。厳然と、そこにある、未来のこと。けど本物?もしかしたら奇跡が起こるかもしれない。だって今までこんなこと1度だってなかったんだもの。
誰も変わらないままに、時間は流れる。
私も変わらないよ。夜になってもお腹がすかない。眠くもならない。
何も変わらなくなったよ。時間が過ぎる事にも気付かないくらいに。


神様に祈った。


何だって差し出すからと。差し出すだけの何かなんて持っていないから、私に残された未来を差し出してもいいと願った。だってこんな。
こんなときに知らされるたくさんの物事が私には甘くてつらい。
ねえ、やっぱりさっきのは嘘だって、今にも電話がかかってきたりはしない?
どうして明日という予定を早めて彼女は電車に飛び乗ったのだろう?
今日明日明後日、何も心配することは起こらないって言ったじゃない。
それがずっと続いていったら、もしかして薄れてなくなってしまうかもしれないと思ったのに。だから私笑えていたのに。


ねえ、今年の夏は冷夏で、過ごしやすいよ。
ねえ、今度の春が来たら私卒業するんだよ。
なのになのになのに。
まだ梅雨が明けてもいないのに。


ひと月?と聞いたら、そんなに、といわれたんだ。
1週間?と聞いても、どうだろう、といわれたんだ。
しばらくは、という言葉は、数日の意味だった。私には数ヶ月だと聞こえたのにな。だから私何も考えなかった。自分のことばかりだ。彼は毎日私のために祈り、私に励ましの言葉をいつだって贈ってくれたんだ。なのに。


もうまっしろだって。
ときどきね、ほほえむんだって。
どうして?もう、どうしてだろう。どうして。


お姉ちゃんが、自分が気付かなかったことを責めて泣いていた。
お母さんが、望んでいない式典のために黒い洋服を鞄に詰めていたよ。
お父さんの淡々とした声が、ねえ、崩れたんだ。
泣いてた。泣いてた。泣いてた。
どうして、私はなんでもないような声して話して、電話を切ったんだ。
どうして素直に泣けなかったんだろう?無音になって初めて涙が出た。流れるんじゃなくて、ぼたぼた落ちて、何してても落ちて、のどの奥やまぶたの後ろがぎゅっと痛んで。


必要ないと言って行かないことも出来た。
けど行くことに決めたのは、そうなる未来を受け入れたから?
私まだ、冗談だった、とか、奇跡が起きた、とか、期待してるよ。
ふたつのことが胸にあって、どっちもあって、未来が分かれている。
望む未来では、ないことは、分かっている。
けれども、けれども、それでも、私は、わたしは。



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おじいちゃん、入院どころか、もう、肺が真っ白になっていたんだよ。
息が出来ない。ごはんを食べられない。話が出来ない。
今朝からもう意識が朦朧としていて、けど、話しかけると微かに微笑むんだ。
覚悟してくださいってどういうことかは分からないけど、みんなが病院に集まりつつある。人口生命維持装置は、年齢が年齢ですから使わずに行きましょう、とお医者様は言ったんだって。
一刻か、一週間か、だって。
夏を過ごすことは出来ないんだって。
お母さんは昨日の夜に、喪服を詰めた鞄を持って病院に向かって。
親戚のみんなが、ねえ、夜中も病院にいるんだよ?本当は帰らなきゃいけないところを許可されているっていうことは、どういうこと?


私も病院に行きます。
アルバイトがあるから、火曜日に行った時にお願いを出して、1週間くらい行くつもりです。お父さんが、生きているうちに、お別れを、お別れを言いなさいって言ったんです。そんなこと言いたくないのに。
受験のこととか、色々あるんだけど、けど、行くことにしました。
そのために夏が終わって、試験日が来てしまったとしても、それは嬉しいことだと思う。そしてそれを待たずに、「そう」なるだろうことは分かっています。
けど「そう」ならないことを祈って、行ってきます。


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