川底を流れる小石のように。  〜番外編〜  海老蔵への道!
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2007年09月25日(火) 渋谷の坂道とドラクルとシェイクスピア・ソナタ。

 あと一ヶ月くらいで、いよいよ引っ越しの予定。
 大好きな中央線沿線のこの町ともお別れと思うと、やはり寂しい。
 
 今月、海老蔵は渋谷のシアターコクーンで「ドラクル」という舞台。
 渋谷は、勤め先がかわってから、あまり行かなくなった街だけれど、
 久々に何度も通ってしまった。

 神に祈り、神を憎む、悲しい吸血鬼の物語を何度か見ていたら、
 ズンと心に重いものが落ちてきた。

 普段から私は「幸せは自分の中にある」と思っている。
 どんな状況でも、色んな悩みがあっても、他人になんと言われても、
 人間万事塞翁が馬というか、
 ああ、でもなんだかこれも幸せかもと思えたらいいな、と。
 母は、そんな私を良くも悪くも「強い」というけれど、
 そうではなくて、
 多分少し他の人よりは「孤独と仲良し」なんだろうと思う。

 慎重にささやかに幸せの積み木を少しずつ積んでいく暮らしに慣れたと思ったら、
 引っ越しが決まって、生活が変わって、そんな積み木遊びも難しくなりそう。
 驚いたのは、幸せを積み重ねていくのは、とてもゆっくりと時間がかかるのに、
 憎しみや怒りや猜疑心みたいなものは、みるみる心の中で育っていく事。
 そうして大きく膨らんだ黒い気持ちは、もう止めることも出来なくて、
 自分ではコントロールすることも不可能になって、
 加速度を増して、グングンとカタチを変える。
 まいった。
 生き物みたいに膨れあがる黒い気持ちを、自分ではどうすることもできなくて、
 苦しい。

 「ドラクル」を見ていたら、海老蔵演じるレイの憎しみや哀しみも、
 化け物みたいにムクムク成長するのを止められなかったんじゃないかなと、ふと思った。
 
 もし宗教が身近にあったら、
 私も、レイみたいに、祈ったり呪ったり、するのかも。
 幸せをひっそり積むのも、憎しみを育てるのも、なかなかしんどい事だから、
 神様とかがついていてくれたりしたら、心強いかも?
 百人力を得たような気持ちに、なっちゃうのかも?
 わからないけれど。
 神はそこにあろうが、なかろうが、
 神は神だというのに、信じて祈ったり、憎んで呪ったりしてるレイ。
 まるで「かわいさあまって、憎さ百倍」みたいだよ。
 彼にとっては、神って、そんなふうに憎んだりできる存在なんだ!
 (私には、神はどこか遠くのあるかなきかの存在に感じるから、
  憎むことすらできないと思うので)
 そんなこと考えたら、「ドラクル」の見方もちょっと変わった。

 同じ渋谷のパルコ劇場の「シェイクスピア・ソナタ」も、せっかくだから観る。
 松本幸四郎って、こんなに素敵だったっけ?
 ダメオヤジなんだけど、弱っちいくせに、なんかチャーミングな男を好演。
 
 歌舞伎ばかり観ていた時には、思ったことなかったけど、
 海老蔵と幸四郎って、こうしてみると共通点がいくつもある。
 (2人とも顔がデカイ!とかね、それだけじゃないけど)

 シェイクスピア・ソナタとドラクルの終演時間が近かったので、
 ドラクル観てきた友達と合流。
 坂を下って吾照里で、チャプチェやプルコギで、乾杯!旨い〜!
 あーだこーだと、芝居談義。
 ふとみると、あっちのテーブルのカップルも「シアターガイド」とお芝居のチラシ眺めてる。
 真っ直ぐ道も歩けない渋谷は好きじゃないと思ってたけど、
 こうしてみると、好ましい劇場がポチポチあって、なかなかいいとこかも。
 渋谷も好きかもって、はじめて思った。
 (仲良くなったら、お別れなのよね)

 もしも飲みに行くなら、私は「ドラクル」の女性チームと飲みたい!
 リリス(宮沢りえ)も、エヴァ(永作博美)も、マリー(明星真由美)も、
 強くて美しくて悲しくて、とても好き。
 色々あるけど、今日はぱーっと飲もう!とか盛り上がれそうじゃない?
 「シェイクスピア・ソナタ」の女性チームとは、全然飲みたくないなあ。
 美鈴(緒川たまき)も、夢子(伊藤蘭)も、晶(松本紀保)も、
 遠巻きに観察したら、もうお腹いっぱいって感じ。
 
 男性チームだったら、残念だけど「シェイクスピア・ソナタ」の男性チームの圧勝。
 時充(松本幸四郎)と二ツ木(豊原功補)と入り婿友彦(高橋克実)の会話を、
 ずっとニヤニヤ聞いてみたい。
 (ニヤニヤしてる私の隣で、山田(岩松了)が携帯ならすんだよ)
 いくら(含む海老蔵)でも、「ドラクル」男性チームと飲んだら、
 立ち直れない悪酔いして、二日酔いが一ヶ月くらい続くんじゃないか?

 こうして2つ並べてみると、長塚圭史の演出の、なんと若々しいこと!
 さすがコクーンの最年少演出家だけのことはある。
 大成功!とは言い難くても、
 あの若々しい透明感、瑞々しさも蒼さも、とても貴重なものに感じる。

 今回はじめて観た美介役の「長谷川博己」。
 成田屋ではお馴染みの市川升一に似てる気がして、
 そしたらもうずっと升一さんにしか見えなくて、困った。
 この人、次は「カリギュラ」に出るそうで、
 小栗旬の全裸にばかり目を奪われてたけど、よく見たらポスターにも左端に写ってた。
 なんだか観たくなってくるから困る。
 東京にいないし。

 そうして、さらに渋谷の坂を駅にむけて下ると、
 ビルとビルの間に、ネオンに負けない明るい月!
 中秋の名月だもんね。
 リリスの真似をして「あの綺麗な月を眺めましょう。
 今夜、私達だけのために輝くあの月を!」とか言ってみる。
 (友達にきょとんとされてしまったけどさ。)
 明日のドラクルの千秋楽、
 一度くらいエヴァはアダム(勝村政信)をマジでぶってもいいんじゃない?とか言いあいつつ、
 友と別れる。


 どうしても一つ希望があるのだが、
 次に海老蔵を歌舞伎以外で観られるとしたら、
 どうかコメディとか、そちら方面でお願いしたい。
 マントや怒りや睨みもいいけど、それだけじゃないだろう。
 なんかグズグズのダメダメ男とか、やって欲しいよ。
 
 

 長く居座った夏も、さすがにそろそろ終わるだろう。
 私は元気にはしてるけど、色々かわっていくんだろうな。
 久々に、むしょうに書きたくなった。
 長々と、ひっそりと書くのには、エンピツって居心地がいいね。
 じゃ!
 


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