川底を流れる小石のように。 〜番外編〜 海老蔵への道!
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28日。 大きな荷物を抱えていつもよりも早い早番時間に出社。 なにしろ京都はフェーン現象で気温があがり、日中は25度を超えるらしいし、 夜は夜で、野外の薪歌舞伎観劇は相当冷え込むとのこと。 暑さ寒さに対応すべく準備をしてみると、なんだか二泊とは思えぬ大荷物。 その荷物っぷりを見ただけで、職場の同僚には笑われてしまう。 はい、馬鹿です。馬鹿だと笑ってください。 行ってきますよ。 大阪だって名古屋だってパリだって行ったんですもん、 京都にも行かせていただきます。 留守をよろしくお願いします。 連休前のビッチリアポイントを、ここはしっかりキッチリと肝に銘じて勤め、 いくつかの引き継ぎ連絡も済ませて、 さあ、出発!
予定通りだったので、駅弁を買う時間があって助かった。 今日の昼は「東京弁当」にする。 魚久の粕漬けや、今半の牛肉や、ともかく安心懐かしい味なので、 案外気に入ってる。 新幹線に乗り込むなり遅めの昼ご飯。 そしてとにかく睡眠。 昨夜は4時間しか寝ていなかったので、途端にぐっすり。
4:33、夕方の蒸し暑い京都駅に到着。 長い一日だなあとは思うが、ここからが本番! しっかりしなくちゃ。 駅のロッカーに大きな方の荷物を預けるが、 手荷物も、防寒グッズや、夜にお訪ねする先斗町のお姐さんへのお土産があるので、 まだまだ村一番の荷物持ち状態。 京都から奈良線で15分、六地蔵へ到着。 ここからバスと思っていたが、見つけられず、タクシーにした。 気さくな運転手さんで、昨夜からの薪歌舞伎で、夜は道が混んだ話や、 地理に不案内な私に、帰りのルート対策など教えてくれた。
とうとう醍醐寺にたどり着く。 すでに大勢の人が。 パリでお世話になった添乗員さんを見かけた。 アノヒト、JTBでは成田屋担当になってるのかな。 他にも、様々なバスツアーが来てるみたいで、色々企画があったんだなあとビックリ。
列に並び、切符をもぎってもらい仁王門をくぐると、 そこから先は空気が別に感じられた。 「神聖な」というのかな。 素敵な写真を撮っていらっしゃる方のところへ、 トラックバックの真似事させていただきます。 こちら。6枚目の写真が、仁王門の先。 緑が綺麗。
金堂の前には、ずらーりと座席が設置されてる。 境内は飲食禁止とのことだったが、右手の五重塔の前に伊藤園のブースがあり、 お茶を無料で配ってくれる。 ムシムシする中、東京→京都→醍醐寺とノンストップだったので、 気が付くと喉が渇いてる。ありがたい。 今日の席は、山川アナウンサーの近くの見やすそうなところだった。 どうやら5月7日放送の「劇場への招待」の収録日だったらしく、 山川さんのところには、NHKのスタッフや、色々な人が声をかけに来る。 空はよく晴れて、夕暮れの中、金堂の上をいくすじも、ひこうき雲が横切るのが見える。 どこからか法螺貝のぼおおお〜〜〜という音。 大勢のお坊さんが法螺貝を吹き鳴らしつつ、金堂前の座席の後方をまわり、 金堂の奥の不動堂の前へ。 「柴燈護摩」(さいとうごま)といって、野外で大きな護摩を焚く儀式だそうな。 炎があがり、お香のかおりの煙りがたつなか、 不動堂の林の中から、帝に仕える廷臣姿の海老蔵が姿を現す・・・! ・・・・! 場内は声にならない声や、溜息、どよめき。 そのくらいに、なんだかこの世のものとも思えぬ美しさで、 そこだけぽっかり、平安の昔に飛んでいってしまったかのようだ。 ゆっくりしずしずと舞台に上がる廷臣。 舞踊「由縁の春醍醐桜」だ。 廷臣の詠んだ歌に誘われ、下手花道に登場したのは桜の精の時蔵さん。 銀糸でびっしり桜の刺繍がほどこされた衣装で美しかったが、 これは花を咲かせず、弱り苦しんでいる桜の精だ。 廷臣や僧侶の祈りが通じ、桜の精がよみがえる。 衣装を引き抜くと、ぱあ〜と鴇色の華やかな桜の衣装に早変わり。 下手の大きなしだれ桜の木(今はもう、新緑で花はつけていなかったが)に 桃色のライトがあてられて、不思議な花が咲いたかのようだ。 桜吹雪も散らされ、 うっとりと踊りは終了。
15分の休憩。 せっかくなので、不動堂にお参りしてきた。 少し冷え込んできて、座席にしつらえてあったカイロと膝掛け、持参したストール着用。
金堂に30人以上の僧侶達が居並ぶ中、 團十郎さん登場。 口上とにらみだ。 山川さんも「成田屋っ」と大向こう。 團パパは口上で、この度の醍醐寺さんとのご縁で、このような催しが出来る事への喜び、 病気が回復した事への喜びとお礼、 休演した勧進帳が、この場で出来る嬉しさ、などのべ、 寒いので、膝掛けはお一人様何枚でもお貸し致しますのでとも。うはは。 パパのにらみは、海老蔵よりも祝祭っぽい雰囲気と思った。 続いて「声明」(しょうみょう)。 仏前で節をつけて唱えるお経のことらしく、 大勢の僧侶が朗々とした声でお経をとなえる。 厳かで迫力があり、見入ってしまった。 (しかし、かなり寒い〜) この後の幕間(20分)で、近くの席のおじさま方が、 いやあ素晴らしい声明だった。心が洗われるようだったね。身が引き締まるね。 などと、口々に感動していた。うんうん。 いよいよ「勧進帳」 今日はちょうどセンターに近くて、富樫がよく見える席なので、 海老蔵富樫中心に観劇するつもり。 (明日はもう少し上手よりなので、富樫は横顔か、へたすると後ろ姿になりそうだったので) 富樫左衛門にて候〜の出を見るなり、 ちょうど一年前の富樫を思いだし、お、富樫っぷりがちょっとあがったなと思う。 あの若々しくひたむきな富樫と比べると、 重みや渋み、骨太さなどが、加わった気がする。 多分私は、男性像として弁慶と富樫をみると、富樫の方が好きなのだ。 ああいう切ない生き方、たまらん。 今は疑い晴れ申した〜からの泣きあげ、そして引っ込み、 舞台中央の階段から金堂の仏前へ横顔を見せてひっこむのが、眼福であった。 弁慶の飛び六方は、花道から揚げ幕がないため、 勢いよく飛んでいくというわけにはいかなかったが、 近くの席の女性達が、京都の言葉で 「弁慶はん、森の中へ消えて行かはったなあ〜」と溜息をついていて、 そんな感じだったなあと思う。
ああ、薪歌舞伎、来られて幸せだった。 さて、今日はこの後も予定があるのだ。 臨時バスで地下鉄醍醐駅へ出て、先斗町へ直行。 お世話になりっぱなしのお姐さんに、ご挨拶したかったのだ。 12月に一度来て以来だったが、迷わず辿り着くことができて、ホッとする。 お姐さんは藤の綺麗な帯をしめていらして、ああ京都〜とうっとり。 今日の薪歌舞伎の事やら、 こないだの4月のカンザブ祭りのこと、 5月の船弁慶や7月の比叡山歌舞伎まで、 色々楽しい話をうかがう。
ああ、長い一日だった。 っていうか、私まだホテルにチェックインしてないよ。 遅くなるとは連絡いれておいたものの、京都駅に荷物をとりに戻り、 日付がかわる直前にチェックイン。 ああ、もうフラフラだ。
翌日の京都めぐりやお土産買い物や、美味しかったものは、また別の機会に。 暑かったので、夜に備えて午後三時にはホテルにもどり、 シャワーと、仮眠。 さあて今日も醍醐寺へ、行くよ。
慣れた道のりを、迷うことなくさっくり移動。 祝日のためか、昨日以上に熱気が凄い。
普段歌舞伎座などでも思うのだけれど、 平日観劇は、なんとなく空気がまったりしてるのに比べて、 土日の観劇は、熱気が濃いように思っているのは私だけだろうか? 客席も、土日しか来られないのよ!みたいな熱い気持ちが満ちていて、 その分チケットだってとりにくかろうし、 必死だったのよ、みたいな、楽しみだったのよ!みたいな空気があって、 舞台も、それに応えてなのか、熱いように感じることが多い。
今日の醍醐寺も、まさにそんな感じ。 昨日もそうだったけれど、それ以上に綺麗に着飾った人が多い。 歌舞伎座でも着物姿はよく見かけるけれど、 今日は、さらにびしっと粋に着てる人が多いぞ。 スキがないというか。 うなじあたりまでが美しいのだ。 着物ブームは良いことだと思うのだけど、 「こんな風に着こなせるようになりたい」みたいなはっきりしたイメージが、 頭の中にないのかな?というような、 グズグズな着方の人も東京の街だと多く見かける。 慣れも大事なのだろうし、 誰でも最初からビシッと着られるわけではないんだろうけど。
そういう意味では、どの人もびしーっと美しく極まってて、見とれてしまうよ。 別に着物だけではなくて、 この日は、スーツやドレスやアクセサリや靴が、きちっとしていて、 美しいマダムを多く見かけた。 (カンザブ姉の波野久里子さんも、スーツ姿がきれいだった さすが團パパの大ファンなだけのことはある) このままパーティーにも行けそうな、ハレ!な空気を身にまとった 大人なマダムや紳士を見てると、こちらまで晴れがましい気持ちになる。 私も少しは綺麗にしてと思ってはいても、 旅先の事とて、省略バージョンだ。 成田屋さんの行事に一年にわたって参加して思うのは、 パーティーなどは勿論だったけど、 成田山のお練りだろうが、パリだろうが、醍醐寺だろうが、 案内に「お足元が悪いので、歩きやすい履き物で」とあろうが、 雨の心配があろうが、 いつもびしーっとオシャレして、綺麗にしてらっしゃるマダムが大勢いて これは凄いことだなと思う。 母に「あなたも、もう若くないんだから、 ちゃんとしたいいものをちゃんと身につけるように、そろそろ気をつけなさい」などと、 注意されてる私としては、 そうか、ちゃんとするって、こんな風にビシッとすることも出来るって事なのかと思う。 遠い道のりだわ、これは。
醍醐寺のお天気は曇りだったが、昨日より風がない。 野外の事とて、マイクを使っていたけれど、 昨日はマイクが風のゴーゴーいう音を沢山拾ってしまって、聞きづらい場面もあった。 今日は、それがないので、とても舞台がクリアに感じられた。 それ以外に、熱気が濃いし、冷え込みも昨日ほどひどくなかったので、 今日は数段、舞台がよく感じた。 寒さも集中力を奪うんだなあと実感。
ただ声明は、昨日の方が一糸乱れぬ感じがよかったか。 今日は声がばらつく場面が残念。
勧進帳は、今日は弁慶中心に観劇。 そうすると團パパの弁慶は、厚みや深みが増しているようで、 じーんと感じてしまう。 パパに「もう病気したらあきませんよ」と関西弁で声がかかったり、 成田屋さん贔屓の熱さも、じんわり。 結局、昨日も今日も、勧進帳では泣けてしまう。
帰り道、現地で会った友達とははぐれてしまったが、 明日の始発の新幹線を考えると、このまま大人しくホテルに帰ることに。
1人部屋でビールでカンパイ! 醍醐寺遠征お疲れさま。 5時に目覚ましをセットして、就寝。 寝たと思ったら、朝だった。 無事に新幹線に乗り、途端にまた眠る。 起きると東京。 定刻通りでホッとする。 このまま職場へ直行。 最初のアポイントを一枠ずらして9:30からにしてもらってる。 間に合ってよかった〜。 連休前とて、仕事は忙しかったが、気力は充分。 これが終わると、GWに突入だし。
家に帰ると、6月の博多座のチケットが届いてた。 行くのかオレ。行くともオレ。 襲名もこれで一区切りだしなあ。 申し込んではみたものの、こうして切符を手にすると、 なんか凄いなあ、行くのか?と我ながら思ってしまう。 疲れてはいるものの、興奮冷めやらぬまま、 ネットで福岡2泊3日のツアーを探す。 すると、ちょうどおあつらえ向きの、仕事は休まず行けるお手頃パックを発見! 早速申し込む。
博多のウマイ物ガイド眺めつつ、おやすみなさい。 明日から五連休! 5月歌舞伎座の初日と、 御殿場アウトレットお買い物ツアーに行く予定。うひひ。
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