★フュージョン盗難車詐欺事件簿 CASE:5最終回★
深夜2時前ッ!友人が呼び鈴を押し、オレはドアの開く反対側に待機!! そして無造作にドアが開いたッ!! ガチャンッ!! ドアの反対側にいたオレは誰が出たのかわからない。友人の顔を見ると、ニヤッ!と微笑んだ。 「お久しぶりです」居たーッ!友人も前回、現車確認時に付き添ったため斉藤の顔は憶えていた。 そしてオレがドアの向こう側へ回ると...やはりヤツだった。
軽く会釈をしたあと「どうしたんですか?」これが彼の第一声だ。 一瞬、ハトが豆鉄砲くらったような表情に見えたがいつものポーカーフェイスに戻り、口を開いた。 「なぜオレらがココへ来たかは解りますよね?」「...わかりません」ケッ!すっとぼけやがる! 事のなりゆきを説明して(説明しなくても本人が一番よくわかってるのだが)すぐに観念した。 思ったよりつっかかってこず、素直に車へと乗りこんだ。こちらも流ちょうな敬語で怒りの感情を押さえて取引へと臨んだ。何よりここが一番重要なのだ。いかに法をくぐり抜けて金+慰謝料を取り返すか。 恐喝になる発言は一切言わず、且つ後先差し障りのないように事を済ます。 深夜2時過ぎ、アイ○ルやプロ○スなどの町金融へと車を急がせたがこんな時間に開いてるはずもなく、 しょうがないのでアパートの前へと戻り、明朝8時45分AMに出てくるよう約束し家へ帰した。 車内での会話でこの件の全貌が明らかになった。もっとも、ヤツが嘘をついてなければの話だが。
この件の黒幕は斉藤がはじめに名乗っていた「夏川」だった。警察に見せられた写真も恐らく「夏川」だろう。 この人物は警察もチェックしていたらしく、他にも被害者がいるようだ。 あのフュージョンは夏川が斉藤に売るよう頼まれた物だったらしい。 まー、金さえ戻ってくりゃどーでもいいことなんだが。朝まで車内で寝ることにした。フロントガラスから見える学校から咲いている夜桜がキレイだった。使う必要のなくなったインスタントカメラで一枚撮った。な〜んてコジャレた事をいっている余裕ではない。ヤツの言動は何事も信じてはならない。 こうしている間にもヤツは仲間と連絡をとって何か策を練っているのかもしれない。部屋に帰したのは誤算だったか!?警戒が必要だと対策を練るかと思ったその時、友人を見ると...爆睡中だった。
早朝8時45分AM。10分遅れで斉藤がでてきた。これまた素直にでてきた。これまでに想像していたようなもめ事もなく、9時05分AM、購入代金15万と慰謝料を受け取った。斉藤をアパートまで送り友人が示談書を作成し、事なく終えた。最後の一言や挨拶もなく、俺らは東京へと帰った。計画は完璧に遂行された。 斉藤が持つオレに関するデータは全て抹消させ、後先つっかかってくるような事があれば、ヤツの手元に数百万の借用書が届くようになっている。
斉藤もある意味、夏川の被害者なのかもしれない。ヤツがオレに払った金は恐らく自腹を切る事になり、やがて警察も直に本人の前に現れるのだろう。結果としてオレには被害金より多額の金が入ったわけなのだが、正直メンドクサイのはもーイヤだ。吉良吉影のような平穏な人生で十分だ。いや、むしろそれを望む。 だが再びこのような事があれば徹底的に取り返しに行くのだろう。
その後、1カ月も過ぎた頃... 「ドゥービ〜ドゥービ〜ダダドゥ〜〜♪」今日も鼻歌交じりで1台のフュージョンが国道17号線を走っている。 そんな彼の口ずさむ曲は くるり「ワールズ・エンド・スーパーノヴァ」。 その男のフュージョンの年式は2002年登録の新車であったとか なかったとか...。
お わ り
※この話は事実を基に再構成されたフィクションです。 登場する人物・建物等の名称はすべて架空の物です。
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