なべて世はこともなし
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|アイルランド真実紀行へ
2006年01月04日(水) |
日本国デュッセルドルフ村 |
デュッセルドルフというのは実にフシギな町です。ちょっとした理由で、ヒコーキに乗るまで4時間ほどの自由時間ができたので、デュッセルドルフの町に行ってきたのです。
デュッセルドルフの町に行くのは2回目。やはりヒコーキに乗るまでの数時間の隙間ができた前回は、ガイドブックや地図はおろか、文字通りに何の予備知識もなくデュッセルドルフに行き、テキトーに地下鉄に乗ったら旧市街に着き、それから路面電車に乗っていたら突然日本語で「本」と書かれた看板があったので飛び降りたりなどしているうちに時間となってしまいました。
で、この「本」の看板、果たして日本語の書籍を扱っていた本屋さんでした。前回この本屋さんの界隈でミョーなことに気がついたのです。
というのも、その本屋さんの隣は日本のDVDばかりを集めたレンタルビデオ屋さんに日本人向け旅行代理店、反対隣は日本食レストラン、さらにホテル日航、丸紅・三越あげくに在日本総領事館が入ったでかいビル、さらにちょっと進むと、日本食材を扱った店、果てはお惣菜屋さんに至るまで。そう、「デュッセルドルフ日本人村」ができているのです。他にもあちこちにこういうところはあるのかもしれませんが、少なくとも、ダブリン村に住む私にはこういうところに行った経験がない。こりゃ行ってみようというわけ。
この日本人村、中央駅から表口を右に出て、最初の角を左に曲がると嫌でも見えてきます。距離にして500メートルあるかないか。ここに入ると、ドイツ語より日本語のほうが聞こえてきます。かなり冗談ではなく自分がどこにいるのかわからなくなります。
まずは、駅からいちばん近い日本語の本屋さんに入る。あれ、前回もここに来たはずなのに前と店の様子が違う。まるで別の店のよう…って、あれ、別の店だ。ってことは本屋さんだけで少なくとも二軒はあるわけね。で、日本語で「営業中」と書かれたドアを開けると店員の女性が「いらっしゃいませー」。そういえば、アイルランドの店員は、こっちから声をかけない限り何も言ってこないよなあ。どっちがいいかはにわかには断じかねますが。
残念ながら前回行った本屋さんのほうが売り場面積も広かったのでここは早々に退散。この退散した本屋さんの売り場面積は、感覚としてはコンビニの2倍程度…と言えば大体の感覚をつかんで頂けるでしょうか。
じゃあ前回行った本屋さんはといえば、間口は狭いものの奥に広いので結構広大な売り場面積があります。日本のイナカの個人経営の小さな本屋さんより大きいのではないだろうかという感じ。日本語の本屋があるという事実だけでびっくりの私にはこの売り場面積は素朴に驚きです。
その二軒の本屋さんは同じ通りに100メートルくらいの距離を隔てて建ってます。その広いほうの本屋さんはこともあろうに正月休み。昔から、自分の人生に何もいばれることはないけど、本だけは読んできたと思う私にとってはちょっとがっかり。何せ、ちょっとくらい値段が高くても本を何冊か買って帰ろうと思っていたのだ。
がっかりした気分のまま、そのままその通りを進むと、交差点の向こうにはニ軒の日本食材の店がある。「アジア食材」ではなく「日本食材」なとこがポイント。で、その入口になにげに日本語で書いてあったこと。
「古本」
へっ?ふ・る・ほ・ん?
大学生の頃はあちこちのブックオフをはしごして古書を買いあさっていた私にとって、この「古本」という言葉はアムステルダムの飾り窓より魅力的(ちゅうか、チラリズムのない飾り窓などには個人的にはこれっぽっちも魅力を感じないのですが)。吸い込まれるように日本食材の店に入ると一番奥におおお、広さにして8畳くらいと大して広くないものの、私の背丈以上の高さの棚にびっしり詰まった古本(そのほとんどが文庫本かマンガ)が並んでるよ。
で、試しに文庫本を手にとって見ると、一冊3ユーロ程度と日本だったらぼったくりだけど、ここでは良心的といえる値段で売っている。…このあと私がここでしばらく文庫本を1冊1冊吟味したことは想像に難くないかと。結局15冊くらいの本を買ってしまいました。
ちなみに、アイルランドの古本屋は好きではありません。何はともあれ、本が焼けていたりとかで本当の「古本」になりすぎているのだ。私がブックオフを魅力的に思ったのは、あそこは古本を実に見事に古本とはいえないくらいの美しさに再生すること。その点、アイルランドの古本は本当に古本であまり触る気がしないのだ。無論、なんだかんだ言っても英語の本より日本語の本のほうがはるかに読みやすい…というのも大きな理由なのですが。
で、その15冊の古本を腕の中に積み上げて食品コーナーのレジへ。店の中は結構混んでいる。7割くらいの日本人に3割くらいの日本マニアのドイツ人…といった感じか。会計を済ませて外に出る。そこでふっと考えてしまった。この日本国デュッセルドルフ村の意味を。
私が語学留学をしていた頃、よくある話と言えばその通りなのだが、必要以上に日本人を避けていた。ほら、語学学校にいると、日本人同士でも英語で話そうとしたりするでしょ。その努力は確かに必要なんだけど、なんだかそれも不自然な気が今ではする。
じゃあかといって、この日本国デュッセルドルフ村にずぶずぶで住むというのもいかがなものかと。それで楽しいという人もいるだろうし居心地がいいという人も多いだろう。でもその点、アイランドに住んでいる日本人は日本人同士のつながりということに比較的淡白なのではないかという気がする。私としては、このつかず離れずの距離が一番楽だという気がするが果たして本当のところはどーなんだろう。
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