2001年05月19日(土) |
〜Short story〜 |
『マーズ』
砂丘に続く彼の足跡は
蟻の行列にも似てどこまでも果てしない。。。
天界の観察者は、絶望の眼差しを向ける。
地平線の墓標は、かつての高層ビル郡。
傾(かし)いだその姿は、哲学者の風格を漂わす。
六本足の彼が、歩みを止めたのは
何も発見できなかったから・・・
この世界に、命あるものは残っていなかった。
観察者の予測どおりとはいえ
虚しいものがあった。
彼は、全ての足を切り捨て、ブースターに点火した。
天界へと上昇しながら見下ろす。
嘗(かつ)ての蒼い惑星、
火星と呼ばれる赤い球体が、小さくなってゆく。
全ては、彼の歪んだ瞳に映って美しかった。
〜END〜
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