セクサロイドは眠らない

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2013年08月14日(水) そんな僕がふとした拍子に彼女のことを思い出したのは、僕があの頃の彼女の年齢を超えた頃だった。

僕はまだその時は大学生であまりにも世の中のことを知らなくて、彼女は40歳を少し過ぎたぐらいで離婚して小学生の娘さんを一人で育てていた。バイト先で知り合って、おしゃべりしていたら楽しくて、いつの間にか僕たちは頻繁に会って抱き合うようになった。それはあまりにも自然な流れで、だから僕は年齢のこととか彼女の置かれている状況なんていうものが僕らの関係において障害になるなんて思ってもみなかった。

ただ、彼女には年の近い恋人がいて、だから彼女が僕のものにならないことだけは知っていた。それでもかまわなかった。

彼女は、僕と抱き合った後、時々泣くことがあった。30分ぐらい泣いて、それから急に涙を拭いて笑顔になる。
「排泄行為みたいなものなの。汗をかいたり、おしっこしたり。私ぐらいの年齢になると、泣くことも必要になるのよ」
と言う。
僕は彼女が泣いている間、どうしたらいいか分からなくて、彼女の髪を撫でたり、彼女を抱きしめたり、キスをしたり、もう一度彼女の服を脱がせたりして、彼女が泣き止むのを待った。

本当に何も分かっていなかったのだ。

彼女が泣いている理由とは無関係に、僕は欲望のままに彼女に寄り添った。

そんな彼女との関係が終わったきっかけは、もう思い出せない。僕が就職して間がないくらいに、僕らは自然消滅のような形で会わなくなった。

それから僕は、年相応の恋をして、しかるべき年齢になった時点で結婚をした。子供が二人とマイホーム。平凡なサラリーマンだ。彼女のことなんかすっかり忘れていた。

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そんな僕がふとした拍子に彼女のことを思い出したのは、僕があの頃の彼女の年齢を超えた頃だった。

僕が40過ぎの冴えない中年になった頃に会社に入ってきた新入社員の女の子と、いつしか二人で会うようになった。

最初は女の子があんまり不器用で仕事の飲み込みが悪いものだから、指導係として手伝ってやっていた。周囲から怒られても腐ったりせずに、ただひたむきに仕事に取り組む姿勢に好感を持った。

なんとなく、なのだ。

なんとなく、仕事帰りに誘い、最初は焼き鳥とビールを挟んで女の子の愚痴を聞いていただけだった。いつの間にか彼女のアパートに寄るようになった。

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「どうして泣いてるの?」
そう訊かれるまで、僕は女の子の前で泣いていることに自分でも気付いてなかった。

「ああ。どうしてかな。疲れてるのかもね」
僕は女の子を不安にさせないように手を握った。

それから、あの人のことを思い出した。若かった僕の前でいつも泣いていたあの人のことを。

あの人の泣いていた理由が少し分かった気がした。
中年である自分の前に無邪気に差し出された若さに、なぜか泣けてくるのだ。

物事には終わりがあるということを知っている僕に無邪気に差し出されたその若さに泣けてくるのだ。


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