やんの読書日記
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2007年01月01日(月) レパントの海戦 


塩野七生作
新潮文庫

大国オスマントルコと
海洋国ヴェネチアの戦争は
ギリシア・ローマ時代から続いた
地中海世界の終わりを告げる戦いだったらしい
奴隷を使って地中海をこぎ渡るガレー船が
この機を境に帆船へ、大航海時代へ
スペイン、ポルトガル、イギリスの時代へと移っていく

商業国ヴェネチアがどうやって大国トルコに勝ったか
人海戦術で数の理論をとったトルコに対し
ヴェネチアは大砲を供えた大型船を用意した
それにも増して
異教徒イスラムに対するキリスト教信者の
信念がものを言ったのだと思う

キリスト者としての信念は
前作の「ロードス島攻防記」で
それとなく理解できていたが
博愛平等を重んじる人々の心意気が
この作品でも感じることができた

海戦はたったの5時間
その後のヴェネチアはトルコとの単独講和をした
地中海の平和と領土に住む人々の利益を重んじる国
その後に国力が衰えることになったとしても
それはその時代には先進的なことだったのだと思う


2006年12月31日(日) 新編 日本の面影

 
ラフカディオ・ハーン著
池田雅之訳
角川ソフィア文庫

怪談をかいた小泉八雲
彼が日本人よりも
日本人の内面をよく知っていて
日本の情緒や、感性を感じ取っていたことが
よくわかる

初めに彼が住んだ松江の風景
八雲立つ出雲の風景
その風景は今ではどこを探しても
見当たらないかつての日本の日常なのだが
ああ、わたしたちのいた場所はここなのだ
私たちが喜び、考え、悩み、疑う気持ちは
こんな風景から自然にかもし出されていたのだ
と、日本の昔を懐かしむ気持ちが湧き上がってくる

外国人教師のハーンが
なぜここまでに日本を美化しているのか
日本びいきを超えたものが
あるような気がする

それは彼自身の中に流れる
ケルトの血がそうさせるのかも知れないし
幼くして父母と別れた
哀しみからくるのかもしれない


2006年03月12日(日) おまけのこ

畠中恵作
新潮社

しゃばけ、ぬしさまへ、ねこのばば
に続く若旦那シリーズの4作目

体の弱い大店の若旦那があやかしの手を借りて
事件を解決するものがたり
4作目になると、またか同じかなと言う感覚はあるものの
なんだか懐かしい江戸のまちに帰って来たような
安心感もある。体が弱くて大事に大事にされている若旦那
このひとがなぜ?というような賢い働きをするのが
このお話の面白さ
それに加えて、
江戸の人々の人情がにじみ出ているのがいい。
今回は「ありんすこく」にそれがよく出ていた。
花魁つきのかむろを足抜けさせる話
かむろと言えばまだ少女。花魁候補生だけれど
主人がその病気を案じて、若旦那に頼んで
足抜けさせるというもの。
人間の悲しい性を感じてしまう


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