昼食に誰かを待つ日は

2020年04月25日(土) ホワイトチョコが身にしみる


朝。快晴。親知らずを抜いた歯茎がチクチクと痛む。起きて、バナナヨーグルト、チャイティー。
ユーネクストで、「なまいきシャルロット」というフランス映画を見る。ルルという分厚いメガネをかけた背の小さな女の子が妹の幼い頃にそっくりで抱きしめたくなった。あの頃の妹がもし今そばにいたら、ものすごく可愛がっていただろうなあ。映画を観終わってすぐにシャワー。準備をして自転車に乗り西荻へ。アコーディオンを弾きに行く。久しぶりに外に出たという先生がまたたくさん話を聞かせてくれた。今日はラテン系のフルート奏者の方のCDを流してくれた。監修は先生の親友でもある原さん。
話は日本のずる賢さ、したたかさ、侮れさの話になる。一見目立つ行動をしていないように見えて、実は水面下であらゆる準備を整えているのが日本という国の特徴らしい。東日本大震災のときに、その姿がより浮き彫りになったそうだ。詳しいことはあまりわからないが、世界中が喉から手がでるほど欲しい、とある核は実は日本でしか製造されていないという話。
今日のアコーディオンはダメダメだった。エーデルワイスをひたすら弾くも、やはり歯を抜いたせいか頭痛が治まらずズキズキあちらこちらが痛み集中ができない。でも先生に言わせると「ものすごい集中していましたよ」ということらしい。「あなたはひとりでやりたい人だと思うので、放っときました」と颯爽に告げられる。終わって、ホワイトチョコ、ダークチョコを交互に食べながら徐々に熱を冷ます。話は『赤毛のアン』の話になった。続編の『アンの娘リラ』は読んだことがないから読んでみたい。
終わって自転車で帰る。途中職場のMさんに遭遇。Mさんは3日前に子どもが生まれたばかりだが、病院に立ち入ることができずにまだ子どもと対面できていない。こんな状況のなかで赤ちゃんが生まれるということも、あとあとになってみればよっぽどのことだったと思うのだろう。早く抱っこしたいだろうなあ。
帰って、ガーリックチーズパンを食べながらヒッチコックの『断崖』を見る。終わってからは寝てしまい、そうして今に至る。今日は外に人が多かった。私も出てしまったけれど……。
明日はとても暑いらしい。どうやらウイルスは暑さに弱いらしい。



2020年04月22日(水) 焼きそば



4月22日(水)
時が過ぎるのが早い。とにかく早い。土日に行けた場所のあらゆることを思う。27歳の4月にできたことができないまま終わること、それは私だけでなく誰もに共通すること。思い出をつくるのに限られた時間しかないというのに、こんな風にして閉じこもっているだけなんて。人生の味わいみたいなものが薄れていくような気がする。月曜日から今日までIの部屋に引きこもり別々の部屋で別々に仕事をしていた。と言ってもはかどることはなく、はまってしまった麻雀(アプリ)に手を出して時間が過ぎていった。Iは麻雀が強いので教えてもらう。ご飯はよく作るようになった。私とIで交互に飯を作っている。昨日は焼きそばを作ってくれた。なぜかカレー粉を投入していたので、味が濃かった。そのあとで近く人住んでいる友人も来た。深夜、人間との関係性について話し込む。男と女というだけで理解し合えないところが多い。

今日は青い花を買った。それから白い花も。明日は会社に行く。もはや土日という概念がなくなって、何もかもの境目がなくオンオフの切り替えが難しい。



2020年04月18日(土) 大雨。


4月18日(土)大雨。昨晩、初めてオンライン飲み会とやらを試す。互いの部屋の様子がうかがえて面白い。だらだらと、沈黙もあり、酒を飲むのもあり、お菓子をぽりぽり食べるのもありで、外に出て飲むよりも色々効率が良いというか、いつまでも話していられるのが意外と良い。唐突に、それぞれが自分の部屋にある本を3冊選んで紹介することになった。筋トレの本や、原発の本や、映画の本など色々出てきて楽しい。私は親指がペニスに変わってしまう女の人の本を紹介した。次は、道で拾ったものを紹介することになる。
おわって、なぜか麻雀アプリを入手し、深夜ずっとそれをやっていた。相手がコンピューターだと勝てるが、オンラインの相手だとことごとく負ける。ちょっと強くなりたい。そんなこんなで十分に眠れないまま雨の音で目が覚めて、風呂に入り、ヨーグルトを食べ、そして今部屋で、くるりの新しいアルバムを聴いている。くるり。中学生の頃から聴き始めて、もううんと月日が経つというのに未だに活動し、こうして新しい曲を届けてくれることのパワーに泣きそうになります。

もはや平日も休日も境目がない今。皆何をしているのだろう。



2020年04月13日(月) 月曜日、雨。

金曜日の夜。アコーディォンを弾く。すこしレベルアップして、エーデルワイスをたどたどしく弾いた。左手を右手で動きが違うので、戸惑う。頭も体も使うので、知らぬ間にクタクタになっていた。いつも通り、弾き終えた後はチョコレートを食べてコーヒーを飲む。先生は若干鬱期間に入っているらしかったが、「ここに来てアコーディォンを弾く時間が私にとってはとても楽しい」と伝えると、喜んでくれた。細々と続けて、どうにかこうにか一曲は形にできたら嬉しい。

土日はほとんど家から出ていない。ナポリタンを作ったり、お好み焼きを作ったりした。お好み焼きは、キャベツと小麦粉と卵さえあれば簡単に焼けてしまうものらしい。夜はハワードホークスの「ハタリ」を見て過ごす。キリンやヌーの大群を見て興奮した。こういう時は、壮大な物語を求めたくなるものなのだろうか。今日も今日とて家の中で仕事。寒くて仕方がない。別に会社に行っているわけではないのに、ちゃんと仕事を始めるんだから驚く。日本人って根が真面目なのかな。それにしても、いよいよ会社もやばそうだ。もう職を失っている人だってたくさんいるのだろう。外に出れば人は結構たくさんいるし、そして何食わぬ顔をしている様子を見ると、本当に危機に面しているのかどうかがわからなくなる。でも皆共通してその不安に怯えているのは確かだ。早く終わって欲しいな。そして終わった先で、何かが変わっていないかと、かすかな期待を抱いてしまう。これで何も変わらなければ、ね。



2020年04月08日(水) 静止した時計

朝。起きると日の光を浴びているオリーブが目に入り、無性にうれしくなった。やっぱり夜よりも朝のほうが植物は生き生きとしている気がする。バナナヨーグルトを食べる。水をやる。どれくらい水をやれば良いのかがわからない。ジョウロがないのでコップに水を入れて注いだが、まんべんなく水を与えられていない気がする。小学生の頃、ペットボトルのふたに穴を開けて簡易ジョウロを作っていたのを思い出す。あれを作ってみようかな。

自転車で職場に向かう。心なしか人が少ない。この間警察に「自転車をこぎながらイヤホンをしないでください」と怒られたので、音楽を聞かないまま自転車を漕いだが、それはそれでよかった。悪いことをしていた。
今日もデザイナーと打ち合わせ。いい本に仕上がればいいけど、正直不安。まだ形にもなっていないのに、ポルトガル語と英語に翻訳しないかという話がもう持ちかけられているらしい。著者よ、あらすじを説明できるのか…。話だけが一人歩きして中身が置いてけぼり。でもこんなものなのかもしれない。無理矢理夏頃に発売するスケジュールを組んだ。何があっても形にしなきゃまずい。そしてこんな時期なのに、まったく期待をしていなかった賞与が出たらしい。逆に不安になる。本屋がバタバタ潰れているというのに大丈夫なのだろうか。でもありがたい。今日はマッチをスキャンしたら、その姿が滑稽でゲラゲラ笑った。マッチはスキャンをすると「ちょっとリアルな絵」みたいな風合いになる。

帰宅。スーパーで買い物。シナモンを買う。かぼちゃサラダを作ってシナモンを投入。クリームチーズがないことに気がついて、2度目のスーパーへ。無事にかぼちゃ潰し、クリームチーズをちぎって入れて冷蔵庫で冷やす。明日食べるのが楽しみ。夕飯は昨日の残りのスープ。ジャガイモの量が多すぎて、スープというよりクリームシチューみたいにドロドロになっていて胃がもたれた。咳をしたらゲロみたいにそれが気管まで上がってくる。でもまだまだ残りがあるので、明日も食べなきゃなんない。その後、オリーブを観察。無性に愛おしく思えてくるのはなぜなのだろう。育てておおきく成長してくれたらいいな。『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』を再読。1日に一度は止まる時計が今日も止まっていた。電池を入れ直したりしたら再び動き出したが、明日にはまた止まっているんだろう。止まっている時計が部屋にあるのがすごく気持ち悪い。同じ時間でずっと静止しているのは妙な気分だ。取り外すほうがマシ。電池は新しいのにどうして止まってしまうんだろう。この時計、気に入っているのに壊れちゃったんだろうか。

在宅で仕事をしたいところだけど、明日も職場へ向かう。今日、タバコを吸っているときKさんから「私今月で辞めるんだ」という話を聞く。やはり春は別れの季節であるらしい。



2020年04月07日(火) ウグイスの声

朝、遅めの起床。いつも通りバナナヨーグルトを食べて準備。デザイナーとの打ち合わせに向かう。春日駅に向かうも、大江戸線で逆方向の電車に乗り間違えて遅刻。Aさんの事務所は空気にまったく濁りが無い。こんな状況であれ「なんだか、大丈夫な気がするのは私だけかしら」とつぶやいていた。最近家の前によくウグイスがくるそうだ。震災のときもウグイスが来て「ホーホケキョ」と鳴いたという。その声を聞いて「ああ、大丈夫なのかもしれない」と思ったのだそう。もちろん、状況は何も大丈夫では無いのだけど。おそらく気持ちの問題。Aさんには仕事を受けてもらえることになった。部屋には波の音が響いて、12時になった瞬間に時計から鳥の模型が飛びだして「ピヨピヨ」と鳴いていた。

昼食は近くの中華料理屋へ。"ラッキー"という縁起の良い名前のお店で冷やし中華を食べた。テレビでは安部さんが映っていた。緊急事態宣言が出される数時間前の話だ。後ろのおじさんは「学童用マスクなんて配られてもどうしようもないよ」と嘆いていて、麺を食べながら吹きだそしそうになった。
午後は在宅での仕事。家に帰る前に花屋に寄ってオリーブを買った。鉢に入っていて、育てればグングン伸びるらしい。それから本屋に行って5冊くらい買う。壮大な物語を求めているのか、カズオ・イシグロと村上春樹、埴谷雄高、チェーホフ、トルストイなどを買ってしまった。部屋に戻り、ちょっと休憩してから作業。意外と家でも仕事ははかどる。もはや会社はいらなくなってくる時代に変わるのかもしれない。でもひとりで仕事をしているとすこし寂しい。鉢植えを窓辺に置いて、水をやった。


それからいつも通りスープを作り、翌日のサンドイッチを仕込む。アボカドを切ってペースト状にし、ツナと一緒にかき混ぜている時間が安らかだった。その後Iと電話。神田伯山の「中村仲蔵」を見て号泣したという。それを私も見たが、彼は天才だ。あの声はなんだ。役者が憑依している。鳥肌が立った。いろいろが収束したら生で見に行きたいな。


緊急事態宣言が出されたらしいが、今日はそんなことにちっとも興味がわかなかった。なんというか、Aさんと会ったことでいろんな不安が吹き飛んでしまったのかもしれない。でも出されたのかあ。明日から一体どうなるのやら。



2020年04月05日(日) 想像力と数字

4月5日(日)

やや曇り。昼過ぎに雨。夕方、一瞬日差しが入り込む。日がだいぶ伸びた。朝ごはんにバナナヨーグルト。昼過ぎに卵サンドイッチ。その後スープを仕込む。買い物。野菜をどっさり手に入れる。

昨晩再びKとの電話。正しい情報がもはやわからない今、テレビだけは見るなと念を押される。そもそもテレビなど家にないのだが。あくまでも「専門家」で「権威」のある人の話が今のところは一番信憑性があるという。なぜなら一番情報収集にお金を費やしているから。SNS含めてあらゆる情報で錯綜しているが、今のところは肩書きに頼り、データに基づいた情報を収集するのが得策なのだろう。今起きていることは先例がないから、「今は誰も何もわかっていない」という前提があくまでも大事だということだった。彼との電話ではいつもメモが必要で、書き込んでいる。そして彼は繰り返すように「状況は変わってきている。フェーズが移行しているこの時がチャンスなんだ」という。自分に言い聞かせるようにして。今この時に、Kという存在がいて本当に良かったと思う。普通であれば出会わない類の人間で、まったく私の周りにはいない分野の人だった。それが今や、こうして情報を教えてくれ、また気にかけてくれる。彼にとっての武器は数学で、数であらゆる実験をし、アプローチをし、それが何度打ち砕かれても、とにかくまた別の方法でやり続けるしかない。彼の言う言葉は、時々冷酷に思えることがある。あまりに想像力に欠けているのではないかと。私の周りには文系の人間しかおらず、だからこそ想像力を駆使してあらゆる話ができる。でも彼は、あくまでも、一つのことから他の物事を派生して考えるのではなく、その一つのために他を排除してまでも100の力を注ぐ。そして、そのことだけに関わることをあらゆる角度から検分し、実験し、何度も打ち砕かれ、でも登って行こうとする。私とは真逆の人間だ。ただ、今私が信じることのできるのはKの与えてくれる情報なのだと思う。
もしかすると本当に大変なことが起こりうる可能性は十分にあるが、これまでの歴史もそうだった。実は何も変わっていないのかもしれない。

せっかく中で過ごす時間を与えられてしまったのだから、私も試してみよう。
「靴」というのが今の私のキーワード。象徴。

明日は仕事で、一応出社予定。自転車通勤というのがありがたい。



2020年04月04日(土) 歴史の中

4月4日(土)

晴れ。春の匂い。ベランダに出ると蝶々がひらひらと飛んでいた。午前中スーパーへ。まだ食べ物はある。昨晩Kと電話。一週間前までは「そんなに心配することはない」と言っていたが、昨日は「ちょっとまずいことになってきた。あまり外には出ない方がいい」という。その代わり、ストレスをうまく逃がしながら家でできることを探そう、と。いよいよ大変なことになってきたのか。歴史の中に身を置いていると強く実感している。事態の収束は、もしかすると1〜2年かかるかもしれないとのことだった。その間にどれだけのことが変化していくのだろう。ロックダウンの宣言が近いうちに出るのではないか。家にいることを強いられること自体がストレスで、家から逃れたいがために外に居場所を見つけていた人は今地獄につき落とされているに違いない。何をしていても元気が出ない。でもこんな状況だからこそ、些細なことを記録しておこう。もし事が収束し、無能な政府が手柄を握るような言動をした際には、いよいよもうこの国にいることはできないと決意すると思う。今苦しんでいる人たちの声をなかったことにされ、死んでしまった人のことは忘れられる。今さえよければいいという状態にはもうなれず、どうにかなるだろうと楽観的になったところで全ては自己責任。


今日は晴れている。先ほどスーパーでアボカドや卵を買った。部屋でサンドイッチを作ろう。そして何か本を読もう。今、カフカのペストがよく売れているらしい。



2020年04月01日(水) 無題


苦しい。修道院にでも行って、ひたすら祈りに時間を捧げていたい気持ち。何をしていてもたのしくない。息の詰まる思い。個人の精一杯のことを考えるだけには限界がある。私の世界は自分一人で成り立っていない。こんな風に世界が灰色になっている今、できることは自分を救うことではない。祈りに徹したい。私はどこにも貢献できないから。深い深いところまで潜って、どこまでも潜って、気でも狂ってしまえば楽なのにな。


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左岸 [MAIL]