昼食に誰かを待つ日は

2020年08月18日(火) ループ

帰宅後速攻冷房をつけて、アイスコーヒーを飲み、シャワーを浴びて、缶詰の桃を突っついて、狭い部屋の片隅によって本を読む時間のために8時間も労働をしている。そしてこれだけでいい。いま読んでいる本のページを開けばタイに行くことができる。現実は阿佐ヶ谷の木造アパート(隣人の声すらまる聞こえの)だが、ページを開けば私はもうひとつの世界に入り込んでいる。「読書のない人生は危険だ。人生だけで満足しなくてはならなくなる。」という心情を本の主人公も抱えている。主人公も本のなかに身を委ねていて、その主人公の読んでいるアガサクリスティの文章にも入り込ませてもらった。彼自身の話が物語であるのに、この本の主人公は「人生の大半の場面において、僕はほとんど真空掃除機なみに空っぽ」であるらしい。あなたの物語を読んでいるわたしもまたそんな風な境地ですが、少なくともいまはこの本のおかげでアバンチュールできている。

さいきんはレコードをかけっぱなしにしているが、違うものに取り替えるのが面倒なので、曲が終わるたびにA面をB面にし、B面をA面にするという作業を繰り返している。本を読んでいるときのためのBGMだから、邪魔にならないように無難なジャズ。レコード屋で500円くらいで買ったもので、セクシーなお姉さん(こんがり焼けた肌に白いTシャツ1枚だけをサラリと着こなし腿や胸がいい具合に露出し、伏し目がちな目で口元に微笑という姿でソファに腰掛けている姿)がジャケットに写ってついつい買っちゃったもの。2時間くらい流し続けたところで、本の1章が終わった。ということはもうタイにいることはできなくなった。そこで本を閉じ、レコードをユーミンのヒコーキ雲に変えて、この日記を書き始めたところ。でももう眠い。ひこうき雲は、夜に聴くものではないな。


明日はきっと忙しい日になるのだろうが、忙しくなりそうだからこそぼうっとしなければ。今詰めすぎるとミスをする。ミスをするといろんなことが厄介になってますます面倒なことになる。そういう風な力の抜き方というものが、この数年で身についてきたような気がする。力の抜きどころと入れどころ、その加減を自分で調整できるようになれるとだいぶ楽だ。
真空掃除機なみに空っぽ、になるとよく眠れるだろうか。よく眠りたい。


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左岸 [MAIL]